真夏が近付いてくる7月中旬、これから本番を迎える真夏のピーク時に気をつけたいのが熱中症です。異常気象か、あるいは温暖化の影響からか、熱中症により救急搬送される方々のニュースも年々増えてきているように思えます。「私は終日社内にいるから大丈夫」と考えている方は要注意。実は室内で熱中症が発症するケースも少なくないのです。そこで今回は、万が一にも室内で熱中症にならない予防策を説明していきたいと思います。

*仮に熱中症にかからなければ良いのかというと、そうではありません。暑さそのものが仕事の効率を下げるというデータも出ていますのであわせてご確認ください。「暑さで仕事の効率は4割も下がる! 業務効率改善のためにも屋内で熱中症予防対策を


場所が特定できている患者の半数は室内で熱中症を発症したって本当?

「炎天下で作業する現場の人間と違って、クーラーの効いた室内で内勤する自分は熱中症とは無縁」

そう考えるのは危険です。一例を挙げてみます。東京都福祉保健局 東京都監察医務院が発表した「平成27年夏の熱中症死亡者の状況(東京都23区)」においては、熱中症により亡くなられた方で場所が特定できているものの半数以上は屋内での被害とのデータもあります。もちろん、屋外での作業が影響を及ぼし、屋内で悲劇に見舞われた方などの様々な可能性が否定できませんが、それにしてもその数字の多さには驚かされます。

平成27年夏の熱中症死亡者数の状況(東京都23区)

また、熱中症は主に高齢の方ばかりが発症するものと誤解されていますが、決してそうではありません。その発生原因などを考えれば、若年層だからとして決して油断できるものではないことがわかるはずです。熱中症にかかる原因のひとつとして、体温の調節機能が正常に働いているかどうかもその理由に挙げられます。乳幼児や高齢者のみならず、成人でも睡眠不足や二日酔いの場合、あるいは腎臓病や糖尿病など持病を患っている方々は注意が必要かもしれません。


まずは知っておきたい熱中症を引き起こすメカニズム

室内での発症要因の説明に入る前に、理解を深めるためにも「熱中症」に関する基礎知識についてまずは学んでおきたいと思います。

「熱中症」とは体内に熱がこもることが原因でけいれん・めまい・湿疹・頭痛・吐き気などが生じた症状を言います。

繰り返しになりますが、人間は生命活動を維持してくために体内では代謝が行われています。そして、代謝により生じる熱が体温となります。特に運動しなくても心臓や脳は休みなく働いていますし、食事をすれば消化のために胃腸が活発に働きます。つまり、生きている限り常に代謝が行われています。

そうは言うものの、当然ですが代謝によって際限なく体温が上がるかというわけではありません。活発な代謝により上がりすぎてしまった体温は、自律神経の働きで抹消神経が広がり、皮膚に多くの血流を流れ込ませるようになります。そして体外へ熱を放出しようとします。この働きを「放熱」と言います。

加えて、汗も体温を下げるシステムの一つであり、汗が蒸発する際に身体の表面から熱が奪われます。こちらは有名な「気化熱」となります。

これら2つに代表される体温調整機能は、高温の環境下や激しい運動中ではうまく機能しづらくなり、これが原因で体温が上昇し40.5度を超えたあたりから体外へ熱を放出しづらくなると言われています。このように放熱がうまくいかない場合、その代わりとして気化熱で体内の熱を放出しようと必要以上の汗を流すと、体内の水分量が減ります。その結果、ますます放熱できなくなります。症状がひどくなると発汗もなくなり臓器などに深刻な障害が起こり、意識不明や最悪死亡するケースもあります。


勘違いが深刻な事態を招く。室内で熱中症になるのはなぜか

それではいよいよ、室内で熱中症になりやすい環境について説明したいと思います。

前段でご紹介した通り、熱中症というのは主に「放熱」や「気化熱」が生じづらい環境によって引き起こされるものです。環境面では、高い気温(室温)と、湿度の数値に注意しなくてはなりません。

ここでは、環境面も含めた室内で熱中症になりやすい2つの要因を挙げたいと思います。

1 環境による要因

・室内の温度が高い
・室内の湿度が高い
・(窓際に位置した場合など)強い日差しが差し込んでいる
・室内全体の通気や換気はしっかりできていない
・水分補給が取りづらい環境

2  身体による要因

・体調が悪い/持病を持っている
・肥満/体調管理、適度な運動などを怠っている

こちらは「代謝」がうまく機能しない可能性がある、という意味で熱中症に気をつけてほしい要因となります。

いずれにせよ、上記の要因から考えれば熱中症を発症しやすいと言われている乳幼児や高齢者に限らず、だれもが熱中症にかかる可能性があることがお分かりいただけたかと思います。


汗をかきにくいのが原因?室内でできる熱中症対策はこちら

最後に室内で熱中症が発症するのを防ぐ方法をいくつか挙げてみたいと思います。

1    室温や湿度を把握できるようにする

高温の環境下は熱中症が生まれる第一の理由です。室内は何度なのか、常に把握できるよう温度計などを皆が見える場所に設置しておくことが有効といえます。これは「今、何度なのか」と理解すること以上に、自分が最適と感じる温度を把握し、その最適な温度と現状の乖離を知ることで事前準備、予防ができるという意味でも効果的です。湿度計も同じ理由で設置することが有効となります。

2    こまめに水分をとる

年配の方に熱中症の発症が多い理由として、水分を取らないことが挙げられます。これは加齢により体温の調節機能が低下し、喉が渇きづらくなるからです。しかし、身体が本来求める水分量が不足するというケースは年配の方に限ったことでありません。

特に気をつけたいのがお茶やビール(就業中に口にする方は少ないと思いますが)では水分不足を補えないということです。お茶やアルコールには利尿作用があるため、水分補給という点においては適していないのです。これを勘違いして、お茶を大量に飲んで喉を潤すことができたつもりが、実は利尿作用が働き、体内で水分不足が生じていたというケースも少なくないのです。

いかがでしたでしょうか。

ポイントは(1)放熱」と発汗による「気化熱」をうまく利用することで体温を適温に調節すること。そして(2)これらがうまく働く環境下を作り出すこと。これらが熱中症予防の第一歩といえるでしょう。

 

まとめ

猛暑を背景に、「熱中症」の危険性について耳にする機会は増えていますが、一方でそのメカニズムや対策については無知であったり、勘違いが多いのが現状です。この記事を読んでいただき、屋外作業ではないので問題なし、などと考えず正しい知識を持ち、適切な対応をとってください。

また、屋内での事務作業だけでなく、工場や倉庫内といったシチュエーションでも同様の注意が必要です。屋内作業で注意したい点を「快適に勤務するために 工場・倉庫内など屋内での熱中症予防対策」でまとめていますので、あわせてご覧になってください。

 

*本内容は記述時点で入手している情報をもとに執筆された原稿であるため、その内容の実現や確約、正当性をお約束する趣旨のものではありません。あらかじめご了承ください。


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