最悪の場合、命を奪う恐れもある熱中症。深刻な事態を招かないようにするためには、熱中症の初期症状のサインを見逃さずに、的確にケアすることが重要です。そこで今回は、“こんな症状が出たら熱中症のサイン”という要注意トピックスを挙げ、あわせて応急処置や予防、対策について説明したいと思います。


<熱中症の事前知識> 知っておきたい熱中症のサインと4つのタイプ

熱中症に限ったことではありませんが、日々を快適に過ごすための体調管理においては、変調を見逃さず、早めにケアすることが大切です。

そこでまずは、高温や高湿度の環境下にいる場合や、真夏日に以下のような症状が出始めたら熱中症を疑いたいというお話をしたいと思います。

違和感・倦怠感

  • 喉の強い乾き/口中の強い乾き
  • 生あくびの頻発
  • 足がつる/身体のだるさ/筋肉痛・けいれん
  • 吐き気
  • 顔のほてり

体調不良(兆候となる症状)

  • めまい/立ちくらみ
  • 頭痛
  • 嘔吐
  • 直進歩行できない
  • 大量の汗/(高温の環境下にも関わらず)汗がでない

体調不良(明白な症状)

  • 意識の混濁/失神
  • 手足のけいれん

熱中症と思われる「体調不良」において、先に述べた兆候となる症状、明白な症状があらわれた段階ともなれば、最寄り、あるいはかかりつけの病院などへ行く方が大半だと思われます。しかし、今回の記事で注目したいのはそれよりも違和感・倦怠感の段階での対応が重要になるということです。

特に屋外作業をしている方の場合、「筋肉痛」や「全身のだるさ」を重労働によるものだと判断し、熱中症によるものなのだと判断しないことは珍しくはありません。また、屋外で水分摂取が難しい環境下ほど「顔のほてり」や「喉・口中の乾き」についての申告、症状が軽視されることも少なくありません。違和感・倦怠感での適切な処置の有無によって、その後の展開が大きく異なることを理解していただくためにも、次に熱中症の4つのタイプについて説明したいと思います。

1 熱失神

(症状)めまい/冷や汗/一過性の意識障害など

(発生の主な原因)熱を体外に逃すために皮膚の血管が広がる。その一方で、脳への血流が減るため

2 熱けいれん

(症状)手足のけいれん/筋肉痛/足がつるなど

(発生の主な原因)汗をかいた時に水分だけ取り、塩分補給を怠ることで血中の塩分濃度が低下するため

3 熱疲労

(症状)倦怠感/吐き気・嘔吐/頭痛など

(発生の主な原因)汗の量に対して十分な水分補給がなされていないため

4 熱射病

(症状)40度以上の体温上昇/発汗停止/意識障害など

(発生の主な原因)脱水症状の悪化や体温調節機能の不全のため

目に見える、あるいは実感できる症状とは別に、身体のなかではこのような症状が起きているのです。ちなみに数字は深刻度を表しており、数字が大きくなるほど深刻度は増します。熱射病は最悪のケースでは死を招き、熱疲労は熱射病の一歩手前とされています。つまり、まだ深刻となる前の熱失神、熱けいれんの時点で涼しく、風通しの良い場所へ避難し、適切な処置を施せるかどうかでその後が変わってくるのです。

なお補足で説明すれば、現在は「熱中症診断ガイドライン」(日本救急医学会)にて、病名を「熱中症」に統一し、その重症度はI〜III段階に分けています。こちちらの内容について詳しくは、

下記関連サイトをご参照ください。

▽  関連サイト

日本救急医学会 「熱中症 診断ガイドライン 2015」

快適現場プラス 「それぞれで異なる対処法 熱射病と熱中症はそもそもどこが違うの?」


<熱中症対策> 万が一熱中症になったら。応急処置の方法

次に自分の周りの同僚や友人、知人らの熱中症を疑った際の応急処置について説明したいと思います。ただし、こちらの処置は救急車が到着するまで、もしくは医療機関への相談、往診までのあくまで応急処置であるということを忘れないでください。まずは速やかに医療機関へ相談をしていただき、ケースに応じて適切なケアの方法を仰ぐことに努めてください。

1 涼しい場所へ移動させる

クーラーなどがある冷房の効いた屋内、車の中などへ移動・避難させてください。もし、屋外などでこういった場所が遠かった場合は、風通しの良い日陰へ移動し、安静にしましょう。

2  医療機関への相談

繰り返しますが、医療機関への連絡が最重要です。熱中症の疑いのある方を涼しい場所へ避難させたら、速やかに最寄り、あるいはかかりつけの病院へコンタクトを取り、指示を仰いでください。

3 衣服を脱がし、身体を冷やす

脱衣のほか、ネクタイやベルトをゆるめて身体の熱を放出してください。もし保冷剤やそれに準じたものが手元にある場合は、「首筋」や「脇」、「足の付け根」など皮膚の近くに太い血管がある部分を冷やしてあげましょう。また、団扇や扇子、厚紙、タオルなどをあおいで身体に風を当てることも効果的です。

4 水分と塩分を摂取する

*嘔吐や意識障害がある場合は無理に飲ませない

意識がはっきりしていること、吐き気や嘔吐がないことを確認した後に、水分と塩分を摂取させます。最適なものは水分と塩分を含んだスポーツ飲料水や経口補水液などです。一方で、お茶やアルコールなどは利尿作用があるため水分補給とはなり得ないので、摂取するものには注意が必要です。


<熱中症予防> 今からでも間に合う熱中症の予防法

最後に熱中症にならないための習慣づくり、暑さ対策について触れてみたいと思います。ぜひ、参考にしてみてください。

熱中症に負けないための「習慣づくり」

1 「水分」をこまめに取るクセをつける

人それぞれ、水分を摂取するタイミングや量は異なりますが、普段から“喉が渇いていなくても”水分を摂取するクセをつくりましょう。暑さからくる喉の乾きが生じた際は、清涼感のある炭酸飲料などよりも、水分と塩分を効率的に摂取できるスポーツドリンクなどが効果的であることも覚えておきましょう。

*水分の摂取量を制限されている方は医療機関の相談を仰いでください

2 普段の食事から「塩分」をほどよく取る

食事制限の有無等にもより、各人で適切な塩分量は異なりますが、暑さに勝つためには普段の食事から“ほどよい量”の塩分を摂取することを心がけましょう。なお、熱中症を予防するためのWebサイトも公開されているのでぜひ、参考にしてみてください。

熱中症ゼロへ 「熱中症を予防する食事のとり方とおいしいレシピ」

*塩分の摂取量を制限されている方は医療機関の相談を仰いでください

3 健康体を維持するために「快眠環境」を整える

体調不良のほか、二日酔いなどの状態で炎天下の作業を続けていては、普段は体力自慢の方でも熱中症にかかる可能性が高まります。特に、翌日に高温、高湿度環境下での作業が控えている方は前夜に十分な睡眠をとることをおすすめします。質の高い睡眠を確保するために睡眠中は室内にエアコンや扇風機を、我慢せずに適切に使って睡眠環境を整えましょう。

熱中症にかからないための「暑さ対策」

1 常に「気温」と「湿度」を意識する

今、自分はどのような環境、どのような条件下で過ごしているのか知ることは重要です。当然ですが、高温、高湿度の条件下であれば作業の質や量の調整も必要となってくるはずです。エアコンや扇風機などが使える状況にあれば身体のためにこれらを用いて涼しくするなど、“気づき”こそが熱中症への対策として一番重要なことと言えます。

2  我慢は大敵。日差しは可能な限り避ける

「日焼けしたい」「自分は暑さにめっぽう強い」など、暑さに対して平然と真っ向勝負をする方が決して少なくありません。これとは別に、日中の屋外でのやむを得ない作業など日差しがどうにも避けられない環境にいる方もいることでしょう。強い日差しの炎天下にいる時間を少なくすることこそが熱中症対策の基本となります。対策として帽子の着用など、極力、直射日光を避ける工夫をしてみてください。

3 冷涼を保つために衣服を工夫する

衣服の工夫でも熱中症の対策は十分にはかれます。例えば、麻や綿など通気性に優れる衣服を選んで着用したり、下着に速乾性のものを選ぶのも効果的です。最近では冷涼を維持する作業用衣服も登場していますので、こちらを着用するのも良いかもしれません。

4 冷却グッズを身につける

冷却シートから氷嚢まで、最近では自宅用から作業現場用まで様々な冷却グッズが販売されています。こちらを身につけることで暑さをしのぐことができます。ちなみに、首筋や脇など太い血管が身体の表面近くを通っている部位を冷やすと、効率よく身体を冷やすことができます。

5 飲み物を持ち歩き、こまめに休憩を取る

身近に水筒やペットボトルを用意しておくこと。そして、休憩は一度に長時間取るよりもこまめに、短時間でも数回に分けて休憩をとることをおすすめします。とくに重要なのは、我慢しないこと、無理をしないことです。

熱中症予防に効果が期待できるグッズなどについては「熱中症予防に効果が期待できるドリンク10選」「熱中症予防に効果的な飴、タブレット10選」などで紹介していますので、あわせて確認しておいてください。

 

現場では熱中症のサインを見逃さず、速やかに応急処置をとること。加えて、普段から熱中症に対する十分な対策を講じておくこと。それらによって熱中症の発症リスクを軽減させることができます。今回の記事などを参考に、これからの暑いシーズンを無理せず無事に乗り切ってください。

*本内容は記述時点で入手している情報をもとに執筆された原稿であるため、その内容の実現や確約、正当性をお約束する趣旨のものではありません。あらかじめご了承ください。