激しい運動の後はもちろん、外出して汗をかいた時など習慣的にスポーツドリンクを飲んでいる方も多いのではないでしょうか。また、最近ではドラッグストアなどで売られている経口補水液も人気です。どちらも熱中症予防に効果があると言われていますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか? スポーツドリンクと経口補水液、それぞれの特徴を探りながら熱中症予防にオススメのドリンクも紹介します。


熱中症予防で気を付けたい水分の取り方

熱中症予防として、水分を取ることが大事であることは以前から言われていますが、単純に水道水やミネラルウォーターをガブガブ飲めばいいという訳ではありません。

汗には水分だけでなくナトリウムという塩分が含まれています。汗をかいて体内から水とナトリウムが失われた時に水道水やミネラルウォーターなど、いわゆる普通の水だけを大量に飲んでしまうと体液のナトリウム濃度がさらに低下してしまい、人間の身体は「これ以上、ナトリウム濃度を下げないぞ!」という命令を脳から出し、水を飲みたいという気持ちがなくなるといいます。

人間の身体には常に約0.9%のナトリウムを含んだ血液が循環しており、この濃度が下がってしまうと、体液濃度を維持しようとする身体本来の機能が「自発的脱水」という状態を引き起こしてしまうのです。水が飲みたくなくなると同時に、尿からも余分な水を排泄させようとします。

こうなると汗をかく前の体液量を回復できなくなり、運動能力が低下し、体温も上昇して熱中症の危険度は高まります。したがって熱中症予防に水分摂取は重要ですが、水だけを大量に取ると逆にリスクを高めてしまうことになるのです。

最近は「汗をかいたら水分と同時に塩分を摂取した方がよい」ということも熱中症予防の常識として広く知られるようになりましたが、この塩分とは主にナトリウムのことを指しています。とはいえ、水を飲みながら塩を舐めたりナトリウムの錠剤を飲んだりするのは面倒ですよね?


スポーツドリンクと経口補水液はなぜ良いのか?

そこで便利なのがスポーツドリンクや経口補水液です。スポーツドリンクと経口補水液は、どちらも効率良く水分+塩分(ナトリウム)を身体に吸収できるような成分でできています。大量に汗をかいた時に水だけを摂取することで発生する「自発的脱水」を引き起こすことがないため、熱中症予防として広く飲まれるようになりました。

ところでスポーツドリンクと経口補水液には、どのような違いがあるのでしょうか?

スポーツドリンクと経口補水液はどちらも熱中症予防として有益な成分であるナトリウム、さらにはカリウム、マグネシウムなどが含まれていますが作られた経緯や目的が異なるため、下記のような違いがあります。

■スポーツドリンク

【開発経緯】
スポーツ選手の熱中症や脱水症状を防止する目的で開発された。

【成分特徴】
経口補水液と比べると、塩分が少なくナトリウムの含有量は経口補水液の半分程度。アミノ酸、クエン酸などの糖分が多め。

■経口補水液

【開発経緯】
発展途上国の感染症などによる下痢・嘔吐での脱水症状を改善する目的で開発された。

【成分特徴】
スポーツドリンクと比べると糖分が少なくナトリウムなどの塩分が多い。ナトリウムの含有量はスポーツドリンクの2倍程度。

経口補水液は医療用として開発された経緯から「飲む点滴」とも言われ、水と塩分と糖分を一定割合で配合した飲料であり、体内への吸収率が高く、吸収速度が早いという特徴があります。

ただし塩分が多く、健康な状態で飲むと「しょっぱい」と感じてしまうかもしれません。

経口補水液に比べると含有量は少ないですが、スポーツドリンクにもナトリウムなどの塩分は十分な量が入っています。スポーツ選手向けに開発された経緯から、運動時のエネルギー補給にもなるようにクエン酸やアミノ酸などの糖分が多めに含まれており、経口補水液よりは飲みやすいと感じる方が多いはずです。

飲み分けについてですが、日常の水分補給やスポーツの前後など、「ちょっとのどが乾いたな」「汗をかく前に水分を補給しておこう」という程度であればスポーツドリンクが適しています。

一方、経口補水液は激しい運動で大量に汗をかいてしまった時や熱中症・脱水症状の自覚症状がある時や、下痢や嘔吐、発熱などの発汗時に飲むと良いでしょう。商品にもよりますが、経口補水液はスポーツドリンクの倍以上の塩分を含んでいるため、飲みすぎると塩分過多になってしまうこともあります。摂取上の注意をお読みになって飲んでください。


熱中症予防に効くドリンク10選

ここまでスポーツドリンクと経口補水液の機能についてご紹介してきましたが、現在は味や成分内容などに特徴を持った様々な商品が販売されています。熱中症予防に有効なドリンクを10種ご紹介します。

アクエリアス経口補水液(コカ・コーラ)

アクエリアスブランド初の経口補水液。アクエリアスらしいすっきりした柑橘系フレーバーが特徴。競合商品と比べるとカリウムの含有量がやや高くなっています。

OS-1(大塚製薬)

タレントの所ジョージさんのTVCMもあり、数ある経口補水液の中でおそらく最もメジャーな存在。ゼリータイプも発売されています。

ポカリスエット イオンウォーター(大塚製薬)

ポカリスエットの約半分のカロリー量。甘さも控えめでスッキリしています。熱中症も予防したいけれど、カロリー摂取はなるべく控えたいという方にピッタリです。

ソルティライチ(KIRIN)

スポーツドリンクという売り出し方はされていないものの、含まれているナトリウムやカリウムの量はスポーツドリンクとほぼ同等。沖縄海塩で引き出したライチの繊細な甘みが人気です。

ヴァームウォーター グレープフルーツ(明治)

ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど、一般的なスポーツドリンクに含まれている成分に加え、スズメバチアミノ酸「V.A.A.M.」が配合されており、運動中の水分補給に向いています。

GREEN DA・KA・RA(サントリー)

一般的なスポーツドリンク同様、ナトリウムやカリウムといった成分のほかにグレープフルーツやレモン、シークワーサーなどの果汁も入っており、優しい口当たりが魅力です。

アクアソリタ(味の素)

OS-1などの経口補水液と比べるとナトリウム含有量が少なめ。独自の甘味料配合技術・風味調整が行われており、りんごの風味が効いているので経口補水液にしてはかなり飲みやすいです。

アクエリアス 1日分のマルチビタミン(コカ・コーラ)

爽やかなレモン味。アクエリアスの成分に加えてビタミンCやナイアシン、ビオチンなどが含まれており、熱中症予防と同時にビタミンも取りたいという方にオススメです。

アクエリアス(コカ・コーラ)

1983年に販売を開始したポカリスエットと並ぶ有名ブランド。数あるスポーツドリンクの中でもスッキリと飲みやすい後味に個性があります。

ポカリスエット(大塚製薬)

1980年の発売以来、スポーツドリンクの代名詞的な人気を誇ってきた商品です。他のスポーツドリンクと比べるとナトリウムやカリウムが多く含まれています。

<補足 ポカリスエットとアクエリアスの違い>

日本におけるスポーツドリンクの代名詞的な役割を担ってきた「ポカリスエット」と「アクエリアス」ですが、実は両方に含まれる栄養素や効果は異なるのをご存知ですか?

熱中症対策に関して論じれば、発汗した際に失われるのは「ナトリウム」「カリウム」「マグネシウム」が不足すると言われていますが、ナトリウムやカリウムを比較すると、ポカリスエット、マグネシウムはアクエリアスの方が高い数値となっています。もちろん、両者とも必要な成分は含まれているので熱中症対策には効果的ですが、万が一熱中症で身体が疲弊してしまった際には体液に近い分、合理的に身体に吸収されやすいポカリスエットが有効かもしれません。一方でアクエリアスには、疲労回復の効果が見込めるクエン酸や、血流改善、免疫力アップなどが期待できるアルギニンが含まれているため”屋外作業などで身体が疲れているとき”には有効と考えられます。

 

暑さで弱ってきているときは、ポカリスエット

激しい運動のあとなどは、アクエリアス

を摂取するのが効果的かもしれません。

参考

違いはねっと 「ポカリスエットとアクエリアスの違い!熱中症対策にはどちらがよい?」

大塚製薬 ポカリスエット基本情報

日本コカ・コーラ 製品情報 アクエリアス

 

まとめ

長い歴史のあるスポーツドリンクはカロリーオフをアピールしたものやビタミン、クエン酸を多めに含んでいるものなどバリエーションが豊富です。いずれも熱中症予防効果を期待できますが、いろいろと試すことで自分に合ったものを見つけてみましょう。また、経口補水液に関しては1日の摂取量目安が設けられている商品もあるので、必ず摂取上の注意を確認して適量をお飲みください。

また、ドリンク以外にも「熱中症予防に効果的な飴、タブレット10選」などの記事も紹介しているので、ぜひ、あわせて読んでいただき、熱中症予防に役立ててみてください。

夏バテにかからないよう、毎日の生活から改善したい方、万が一、夏の猛暑に身体が疲弊してしまったため夏バテから回復したい方には「残暑対策は食事で改善 夏バテ予防、夏バテ回復に効果的な料理」という記事もおすすめです。

 

*本内容は記述時点で入手している情報をもとに執筆された原稿であるため、その内容の実現や確約、正当性をお約束する趣旨のものではありません。あらかじめご了承ください。


参照、引用元

大塚製薬「効果的な水分補給」

フィットネス大学「運動時のスポーツドリンクと経口補水液の飲み分け方」

管理薬剤師.com「OS-1とポカリスエットの違い」

価格.com「スポーツドリンク 人気売れ筋ランキング」