近年は、毎年のように「猛暑」となっています。あまりに暑いと集中力や注意力が低下し、仕事のパフォーマンスにも大きな影響を及ぼします。ある調査では、暑さによって仕事の効率が約4割低下するというデータもあります。また、熱中症にでもなれば、生命に関わることもあります。今回は、暑さ&熱中症対策の具体的な事例について、探ってみたいと思います。


1日7326円分の業務が、暑さのためにムダになっている

暑さの中では、誰もが体力的・精神的に何らかのダメージを受けていると思います。

ノルド社会環境研究所が2013年に行った、300人のサラリーマンを対象にした「暑さ」に対する意識調査の結果によると、「屋内で暑さにより身体の不調を感じた人は35.3%」という、驚きの数値が出ています。つまりサラリーマンの約3人の1人の割合で、職場で暑さによる体調不良を経験していることになります。

さらに同調査では「8.7%が熱中症にかかったことがある」という数値も出ています。「熱中症」と聞くと子どもや高齢者がかかるものというイメージがありますが、この調査結果によると、現役世代であっても10人の1人は「熱中症」発症のリスクを抱えているということになります。

そして暑さによる作業効率の低下の度合いについて、10%刻みで仕事の効率がどれくらい下がるかと調査したところ、平均値として39.1%低下したという結果が出ています。この調査結果をもとに計算すると、今回の対象者の1日の平均勤務時間は9.4時間、平均月収から換算した時給が1928円。この数値を時間に換算した場合、1日あたり3.8時間となり、さらに給与換算すると「1日7326円が、暑さのためにムダになっている」ということなります。


暑さ対策に先進的な企業、団体

暑さ対策は仕事の効率低下や熱中症発症リスクを抑えるなど、どの職場においてもとても重要なテーマとなっていて、近年ではさまざまな暑さ対策を行っている企業や団体が増えています。その中から3つほどの事例をご紹介します。

【革新的な『高層ビル向け打ち水システム』でビルとその周辺の温度を下げる】

株式会社日建建設によって設計された『バイオスキン』は、雨と風と太陽という自然エネルギーを使うことによって、高層ビルおよびその周辺の温度を下げる革新的なシステム。たとえば、東京都大崎に建設された地上24階のオフィスビルに『バイオスキン』が採用されたケースでは、ビル東側の壁面に各階を縫うように手すり状のパイプがすだれのように設置されています。

【サマータイム設置で、熱中症予防】

永井機械鋳造株式会社では、7~9月中旬までの期間に「サマータイム」を導入しています。

この期間、土日休みではなく、水曜と日曜を休みとすることによって週の半ばに休日を設定。その結果、一定のリズムで身体を調整することができ、無理なく仕事ができる体制をとっているそうです。

また、水分や塩分補給のためにスポーツドリンク、塩飴、カリカリ梅、冷却シートなどを常備して、自由に使えるようにしたそうです。さらに、工場内の通路確保を徹底することによって風通しを良くし、熱がこもるのを軽減して熱中症予防や快適な労働環境整備に注力しています。

このパイプには多孔質の陶器製の管が使用されていて、日射によって熱せられたパイプ内部に水を流すことで陶器に水が浸透し、保持されて表面から蒸発します。その際の気化冷却現象によって周辺の空気を冷やすという仕組みとなっています。つまり、高層ビル向けに作られた打ち水システムとなっており、実際にはパイプの表面温度を最大約10℃下げる効果が期待できる上、吹き込む風がバイオスキンを通過する際に空気が冷やされ、周辺温度も約2℃低下させる効果が期待できるそうです。

【日本一暑い街・熊谷での暑さ対策】

夏になると注目を集める街の一つが、埼玉県熊谷市。日本一暑い街をアピールするほど、連日のように猛暑が街を襲います。そこで、市民の熱中症予防を徹底するため、下記のような施策に取り組んでいるようです。

「暑さにまけるな中学生事業」

(1) 熱中症の正しい知識と予防・対処方法を学ぶことにより、熱中症の発生を予防し、適切な対処ができる中学生を育成します
(2)中学生が命の尊さや大切さについて学びます

「涼しさ体感アート事業(階段アート)」

熊谷駅正面口・南口、籠原駅北口・南口の階段の全6箇所に、「涼」「水」「青」をテーマに涼感を演出するアート作品を展示

「熱中症予防グッズ配布事業」

暑さ対策事業の一環として、熱中症にかかりやすい市民に対し、「クールスカーフ」を無償配布し、熱中症予防・救急搬送等の重症者の減少を図っています

「まちなかオアシス事業」

市内公共施設22か所を、暑さにより屋外等で気分が悪くなった方のための一時的な休息場所として開設
その他、日本一暑い市区町村を謳う熊谷市ならではのユニークな取り組みを実施しているようです。

参照 熊谷市 暑さ対策プロジェクトシーム提案事項


屋内で熱中症にかからないようにするには

オフィスビル内や工場、倉庫といった屋内であっても、暑さによる仕事の効率低下や熱中症リスクからは逃れられません。手軽に熱中症対策できる方法について、最後にご紹介します。

1 定期的に水分や塩分を摂る

特にのどが渇いていなくても、汗をかけば水分・塩分を失ってしまうため、経口補水液やスポーツドリンクなどの水分、塩飴などの塩分を定期的に摂るようにしましょう。

2 しっかり睡眠時間を取って休養する

夏は特に体力や気力が低下してしまうため、毎日しっかり睡眠をとることによる疲労回復は、熱中症対策としても重要です。

3 涼感グッズを効果的に使用

水にぬらして首などに巻くだけで、一定時間冷却効果が期待できる「冷感タオル」や、シャツなどにスプレーするだけで身体を冷やす効果がある「シャツシャワー」などの涼感グッズなら、低価格で手軽に涼しさを得られます。

こうした取り組みはどれも手軽に実践できることなので、ぜひ日ごろの熱中症予防対策として、また暑さによる仕事効率の低下を防ぐために、意識的に実践してください。

 

何よりも、「屋内だから大丈夫!」と油断しないこと。実は「熱中症患者の半数は室内で発症? 油断禁物、室内での熱中症対策」や「快適に勤務するために 工場・倉庫内など屋内での熱中症予防対策」にあるように、熱中症の多くが屋内で発生しているというデータもありますので、十分に気をつけて猛暑をしのいでください。

*本内容は記述時点で入手している情報をもとに執筆された原稿であるため、その内容の実現や確約、正当性をお約束する趣旨のものではありません。あらかじめご了承ください。


▽ 参照、引用元

給与換算すると1日7326円の損失!! 暑さでの仕事効率低下は約4割と判明(マイナビウーマン)

日建ソリューション バイオスキン

職場における熱中症対策(PDF)

熊谷市の「暑さ対策」は日本一(トップランナー)