熱中症は屋外だけでなく、屋内でも発症する可能性が多くあります。特に工場や倉庫などの大きな施設の場合にはエアコンなどの空調が効きにくい可能性があり、さらに取り扱う商品によっては空調の風を嫌うためまったくエアコンなどを使えない環境があります。さらに暑さだけなく湿度が高いという環境もあり、長時間の現場作業を行う時には体内に熱がこもりやすくなるので、熱中症のリスクが高まります。そこで工場や倉庫内での作業において熱中症を防ぐ対策法について、ご紹介します。


熱中症は屋外だけでなく、屋内でも発生する

熱中症と聞くと「真夏の暑い時期、強い直射日光を長時間浴び続けながら運動や作業をすることで発症する」というイメージがあります。しかし、近年は、直射日光を浴びないはずの屋内でも、熱中症にかかる人が増えているようなのです。

厚生労働省が公表している職場での熱中症による死亡災害の発生状況データを見ると、毎年20人前後の死者が発生していることがわかります。業種別にみると「建設業」の割合が高く、続いて「製造業」「農業」という順になっています。

建設業といっても、必ずしも屋外での作業だけではありません。建設中、あるいは解体中のビル内での作業なども考えられますが、いずれも空調機器がないケースが多く、それが原因で熱中症にかかってしまうケースも。また製造業に関しては工場や倉庫内での作業が中心になりますが、屋内においても熱中症で亡くなってしまうリスクがあることがこの調査結果からもわかります。

厚生労働省が定めた労働安全衛生法内の「事務所衛生基準規則」によると、空気調和設備を設けている場合は『室温が17度以上28度以下、湿度が40パーセント以 上70パーセント以下』になるようにする努力義務を定めています。しかしながら、実際は空調設備が設置されていなかったり、設置されていても適温になっていなかったりするケースも多々あるようです。

「室温30度以上で湿度60%を超えると、熱中症発症リスクが一気に高まる」という説もあるため、特に空調が効きにくい、広い敷地を持つ工場や倉庫での長時間作業においては、私たちが考える以上に熱中症になる確率が高いと思っておいた方がいいでしょう。


工場・倉庫内の熱中症対策とは

先ほど紹介した、厚生労働省が発表している業務中の熱中症による死亡災害発生状況データによると、死亡した事例の要因について、次のように触れています。

●WBGT値(暑さ指数)の測定を行っていなかった
●計画的な熱への順化期間が設定されていなかった
●定期的な水分、塩分の摂取を行っていなかった
●健康診断を行っていなかった

最初の「WBGT値(暑さ指数)」とは、1.温度、2.湿度、3.輻射熱(ふくしゃねつ)の3つを取り入れた指標で気温と同じ「℃」で示されます。定期的に測ることによって、職場での熱中症発生リスクを減らすことができます。WBGTの数値を見て危険だと判断した場合には、労働作業内容を変えたり、休憩をとらせたりと適切な対応をすることで、ある程度熱中症を未然に防ぐことが可能になります。

ちなみにWBGT値は一般に販売されている専用機器で測定でき、また環境省のホームページ(環境省熱中症予防情報サイト)から予測値などを入手することが可能なので、職場内での導入をお勧めします。

また、その他の要因を見ても、毎日の体調管理をしっかり行っていれば防げるようなものばかりであるため、工場や倉庫における熱中症対策といっても、特に専門的な対策を行う必要はありません。


屋外だけでなく屋内作業でも役立つ涼感グッズ

このように、屋外と同様に工場や倉庫といった屋内での熱中症対策の場合も、まずは毎日の健康管理をしっかりすることが何より重要です。

1 定期的に水分や塩分を摂る
2 しっかり睡眠時間を取って休養する
3 アルコールなどを過剰に摂取しない

といった基本的なことを実践していくことが、熱中症対策の基本中の基本。これらは屋外での作業では必須ですが、屋内での長時間作業においても熱中症発症リスクを抑えるため気をつけておきたいことです。

そこで屋外でも使えますが屋内においても熱中症対策に使えるのが、体温を下げる効果のある「涼感グッズ」の数々。中でも、「冷感タオル」は料金も安く、手軽に使えるグッズです。

冷感タオル

水に濡らして軽く絞って振るだけで、吸収された水分が振動&蒸発冷却効果が発生し、生地温度を下げるという米国製タオル「クールコア」は、特に人気。空調が効かない、使えない屋内の作業現場でも役に立ちそうです。

 

ひんやりシャツシャワー

また人気テレビ番組で紹介されたのを機に注目が集まっているのは、「ひんやりシャツシャワー(ときわ商会)」。着る前のシャツにスプレーするだけで、着ている間の涼感や消臭効果を高めることができるすぐれものです。制服、ユニホームの着用が義務付けられている屋内作業においても効果を発揮するでしょう。

 

空調服

さらに今回紹介したいのが、ユニークなアプローチで本格的な冷却効果を発揮する「空調服」です。左右の腰の辺りに取り付けられた2基の小型ファンによって服の中に外気を取り込み、汗を蒸発させる気化熱で身体を冷やすことができます。

この空調服は、特に長時間の労働作業を行う現場を想定して開発されたので、工場・倉庫での作業における熱中症対策として効果を発揮します。

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他にも気化熱の仕組みを利用したウォーターミストファン「クイッククール ミスト&ファン(大作商事)」や、首に巻くだけで長時間心地よく冷やしてくれる「しろくまのきもち(ビッグウイング)」なども1000円以下の手ごろな値段で購入できます。

このように様々な「涼感グッズ」を効果的に取り入れながら、毎日の健康管理を徹底することによって屋内での熱中症対策に役立ててください。

 

また、同じ屋内でも事務仕事なので「自分には関係ない」と考えてしまうのも危険です。そんな方は、屋内での作業で気をつけておきたいことを「熱中症患者の半数は室内で発症って本当? その油断が深刻な事態を招く。室内での熱中症対策の正しい知識」にまとめていますので、ご確認ください。

*本内容は記述時点で入手している情報をもとに執筆された原稿であるため、その内容の実現や確約、正当性をお約束する趣旨のものではありません。あらかじめご了承ください。


参照、引用元

職場での熱中症による死亡災害及び労働災害の発生状況

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