工場で何かを造るにしても、建物や施設を造るにしても、新しい機器の設置や定期メンテナンスにしても、現場での作業において、その過程ではその良し悪しに関わらず周りの環境にさまざまな影響がでます。悪い影響を出さないために、私たちはどんなことに気をつければならないのか。ここでは、現場で守るべき環境について見ていきましょう。

環境対策のポイント、現場で守るべき3つの環境とは?

環境対策を実施するにあたって、まずは現場において事前に気をつけなければならない3つのポイントがあります。一つは「自然環境」。次に「周辺環境」。そして「職場環境」です。

人や機器を動かせば、ある程度の騒音が出してしまうことからは逃れられませんし、ときには大気や土壌などといった、その場所自体に悪い影響を残してしまうことも考えられます。また、現場で働く人たちが安全に、そして快適に作業できるかどうかは効率や士気に大きく関わります。現場ではこれら3つの環境を上手にマネジメントしていくことが重要です。

では、気をつけなければならない3つの環境、「自然環境」「周辺環境」「職場環境」を、それぞれ、もう少し詳しく見ていきましょう。


自然環境

自然環境への影響を考える上で気をつけなければならないのは、空気、水、そして土壌をきれいに保つことです。大気汚染や水質汚染、土壌汚染といった自然汚染は、非常に大きな影響を残し、きれいだった状態に戻すために数十年単位の時間が必要になることは珍しくありません。

これまでの国内の大きな例を見るだけでも、「光化学スモッグ」「水俣病」「築地移転の土壌汚染」「原発事故」などは大きな影響を及ぼしてきました。その被害の大きさからも分かるとおり、一度起こしてしまうと取り返しのつかないことにもなります。

また、昨今でより求められるようになっている温暖化対策を考えるならば、エアコンの室外機によるヒートアイランド現象なども配慮すべき環境の範疇に入ってくるでしょう。働く現場における省エネやCO2の削減などの取り組みは、今後大きな課題となっていくと考えられます。


周辺環境

周辺への影響を考える上で気をつけるべきなのは、まず騒音などの「音」の問題が挙げられます。周辺で暮らす人たちにとって騒音の問題は大きなストレスになります。特に法規上問題がなかったとしても、イレギュラーな夜間作業などは、より配慮したいところです。

粉塵や悪臭など「大気」の問題も大切です。洗濯物が干せなかったり、悪臭によって窓も開けられなかったりするような状態を強いることになるならば、大きな問題に発展していくことも考えられます。

現場での作業は、自分たちが考えるよりも多くの影響を周辺に及ぼしています。大きな機器を動かせば騒音もでますし、振動もあるのでその影響は分かりやすいですが、ちょっとした作業であっても、見知らぬ人が出入りしているだけで周辺の人たちには気になるものです。そのため、現場では周辺の人たちへの配慮は欠かせません。しっかり対策したいですね。


職場環境

まずは安全管理が基本です。現場における人身事故の原因はさまざまです。整備不良・点検整備が不十分であるためだったり、作業従事者の不注意のためだったり、そもそもの安全配慮が不十分であることもあるでしょう。

事故を起こさないためには、作業開始前の安全確認の習慣づけや危険要因に対する責任者の指示を徹底するなどの、事前対策が必要になることは言うまでもありません。しっかりとしたマニュアルを作り、これを常々検証し、常況にあわせて更新していくことが重要です。

また、安全管理のみならず作業従事者の体調管理だったり、適切な仕事量を割り振れているか、コミュニケーションが取りやすい環境があるかなどの視点も重要です。

どのような環境でも一度悪い影響が出ると、それを戻すのには大きな苦労がともないます。事前の準備を怠ること無く、対策していきたいものです。


現場で働く者として最低限知っておきたい、環境を守るための労働法規

環境に関する法律は問題が発生するたびに頻繁に改正されています。そのため、つねに最新の法令をチェックしておく必要があります。また、地域によって条例などで定められた基準が異なってきます。違反を犯してしまえば、たとえ法律の内容を知らなかったとしても許されるものではありません。

ここでは、最低限これだけは知っておきたい環境法規について挙げておきます。


「廃棄物処理」「リサイクル」関連法令

①廃棄物処理法

汚でい、廃油、廃プラ、建設木くず、建設紙くず、建設繊維くず、金属くず、ガラスくず及び陶磁器くず、がれき類、ゴムくず、コンクリート破片などを「産業廃棄物」と呼び、次の事項が求められている。

  • 処理許可業者を確認すること(不良、不適格業者の排除)
  • 排出時にマニフェストを交付し、廃棄物処理後に、マニュフェストを回収し照合すること(不法投棄の防止)
  • 前年度廃棄実績を毎年6月30日までに報告すること

②労働安全衛生法

  • 解体・改修工事に伴う「石綿」撤去作業時にこれを吸い込むと病気になるおそれがある。作業開始前に労働基準監督署に建築工事計画届を提出すること
  • 作業環境測定(6ケ月以内ごとに 1回)健康診断(6ケ月以内ごとに1回)を実施すること

③リサイクル法

  • 再資源利用計画書、再資源利用促進計画書の作成し減量を目指すこと。

④建設リサイクル法

大規模工事(解体工事-80㎡以上、新築・増築工事-500m3以上、修繕・模様替工事-1億円以上、その他の工作物に関する工事(土木工事等)-500万円以上)の場合には、リサイクルの状況についての届け出をすること


「大気汚染」関連法令

①大気汚染防止法

  • 廃棄物焼却炉を設置して建設廃棄物の焼却する場合、ばい煙発生施設の設置届、ばい煙量の測定をする
  • 土砂の堆積場及び右記の施設を設置する場合(密閉型は除く)一般粉塵発生施設の設置届を提出する
  • 解体・改修工事に伴う「特定建築材料(石綿等)」の除去作業を実施する場合、作業開始14日前に計画書を提出する

②オゾン層保護法

解体工事、改修工事においてオゾン層に影響がある空調設備、消火設備等は専門業者により回収・破壊する

③フロン回収破壊法

エアコン、冷蔵・冷凍機器(ショーケース、自販機、冷水器等々含む)の機器の廃棄を委託された場合「委託確認書」の受理と写しの保存、及びフロン回収業者の「引取証明書」の受理と写しを保存(3年間)する。

④建築基準法

内装仕上げ・換気設備及び天井裏等の工事において、以下の規制がある

  • 石綿含有建材の使用禁止
  • クロスピリホス添加建材の使用禁止
  • ホルムアルデヒドに関する規制(①内装仕上げの規制、②換気設備の義務付、③天井裏等の制限)

「騒音」「振動」「悪臭」関連法令

建設工事に伴い騒音、振動、悪臭があると近隣住民に悪影響を及ぼす。

なお地域やその地域の用途によって条例にてさらに厳しく規制されていることが多いため、工事開始前に確認することが必要である。

①騒音規制法

杭打ち機、びょう打機、削岩機、空気圧縮機等を使用する作業において、知事(市町村長)へ7日前までに届け出し、作業敷地境界にて85デシベル以下とする

②振動規制法

杭打ち機、くい抜き機、ブレーカー 、舗装版破砕機を使用する作業において知事(市町村長)へ7日前までに届け出し、作業敷地境界にて75デシベル以下とする

③悪臭防止法

悪臭発生の可能性のある作業(塗装工事・アスファルト防水工事・汚泥乾燥等)では、以下が求められている

  1. 特定悪臭物質又は臭気指数の規制基準遵守する
  2. ゴム等悪臭発生原因物を焼却しな
  3. 悪臭発生の恐れの有る汚泥は現場処理しない
  4. アスファルト防水材加熱時の悪臭削減剤を使用する
  5. 臭気の著しい溶剤、塗料等を使用する場合の1回での作業量や時間帯を検討する

「水質汚濁」関連法令

①水質汚濁防止法

公共用水域へ排水する施設(生コンクリートのバッチャープラント、砕石の水洗破砕施設、水洗式分別施設、砂利採取の水洗分別施設(特定施設))設置の際は以下の必要がある

  • 知事に60日前までに届け出
  • 排水基準(排水基準を定める総理府令)測定を実施

②下水道法

公共下水道への排水(一日50m3以上の汚水を公共下水道に排水する場合)は以下の必要がある

  • 公共下水道管理者にあらかじめ届け出
  • 排水基準 (有害物質は排水基準を定める総理府令)、生活環境項目については、条例による。

③河川法

河川への排水(一日50m3以上の汚水を河川に排水する場合)は以下の必要がある

  • 河川管理者にあらかじめ届出

④浄化槽法

浄化槽(合併処理浄化槽)を設置する場合は設置の届出、および使用廃止後30日以内の届出を実施する。


「土壌汚染」関連法令

  • 壌汚染対策法
    土壌汚染のおそれがある土地(3,000㎡以上)の土地形質の変更の際は、工事着手日の30日前までに都道府県知事に届出し、土砂排出の際はマニュフェストを発行する

出典)建設・設備求人データベース『環境法規を理解せよ』


まとめ

ここまで見てきたように、現場における環境への影響は多岐にわたります。そして、及ぼした影響と企業のブランドイメージには因果関係があると言っていいでしょう。悪影響を及ぼしている企業であれば、その悪影響は最終的に悪い評判となって自らに返ってきます。そうならないためにも、常日頃から環境への配慮は欠かせないのです。

ただ、この因果関係を逆に考えるならば、良い影響を及ぼす企業であれば、最終的に良い評判になって自らに返ってくるということでもあります。環境への配慮は、プラスのブランドイメージになり、結果的には業績の向上など良い成果を生み出してくれるのです。

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*本内容は記述時点で入手している情報をもとに執筆された原稿であるため、その内容の実現や確約、正当性をお約束する趣旨のものではありません。あらかじめご了承ください。

参照元
環境省 「環境影響評価情報支援ネットワーク」
建設・設備求人データベース 「今すぐできる環境対策」