身体を動かす現場作業では、季節にかかわらず汗をかいていきます。汗は体が体温を調節するための機能で、汗を発することで効率的に体から熱を排出する事ができます。もしも汗をかく機能が体になかったら、人は少し運動をしただけで風邪をひいたときのように、高熱に悩まされる事になりそうです。普段あまり意識することのない汗ですが、その役割はとても重要。そんな汗のメカニズムやその機能についてご紹介します。

 

スポーツの汗と冷や汗は違う? 汗の種類について

通常、汗と言われてイメージするのは、無色透明で腕や額に浮き出てくる透明な汗ではないでしょうか。でも実はその他にも種類があるのです。

汗は、皮膚にある汗腺という器官から出ています。この汗腺には「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があります。

無色透明な汗をかくのは「エクリン腺」のほうです。全身のほとんどの場所に存在していて、皮膚とつながっており、皮膚の上へ汗を排出します。一方「アポクリン腺」は体の限られた部分にあり、特に脇の下などに多く存在しています。独立して皮膚に汗をかくエクリン腺と違い、毛根に開口部がありますので体毛を通して汗を排出します。こちらの汗は無色ではなく乳白色です。

汗をかく要因は、温熱性、精神性、味覚性の3つあると言われています。

・温熱性
気温の上昇やスポーツ・運動などで上昇した体温を下げる為の汗です。全身から持続的に発汗します。気温が高く暑い時に激しい運動を行うと、1時間に2リットルほどの汗をかくこともあります。汗腺の種類はエクリン腺です。

・精神性
人前に出て緊張したとき、驚いたときに出る汗です。「冷や汗」はこの汗ですね。汗が出る部位は手のひら、足のうら、ワキの下など限られた部位で、短時間に発汗する特徴があります。汗腺の種類はエクリン腺とアポクリン線の両方です。

・味覚性
香辛料が効いた辛い物を食べたときにかく汗です。味覚の刺激によって体が反射的に出す汗ですので、食べ終わると汗もひいていきます。汗腺の種類はエクリン腺です。

 

汗は体温調節に必要不可欠! でも汗冷えには要注意

哺乳類の多くは汗をかきますが、暑いときや運動した時に大量に汗をかいて体温調節をするのはヒトやウマなど限られた種類だけです。なぜヒトは熱の排出のために汗をかくようになったのでしょう? それはヒトの進化に関わる理由があります。

森で暮らしていたサルが草原へ出て獲物を追いながら暮らすヒトへ変わっていくと、直射日光による熱や狩りで走り回る事によって熱が体内に溜まりやすくなりました。この熱を上手く放出するため、汗による熱の放出機能を獲得したと言われています。水の熱伝導率は、空気と比べて約25倍も高いため、汗に熱を込めて体外へ排出する形はとても理に適っており、体温調節の為の重要な機能となりました。

ヒトは汗という機能を獲得した事によって、他の生き物よりも長時間運動できるようになり、それがヒトの生物としての優位性の一つとなったのです。

このように、汗は熱を排出してくれますが、場合によっては汗をかきすぎて体が冷えてしまう、という事があります。このような汗冷えを起こすと、頭痛が起きたり風邪を引きやすくなってしまったりするため、汗をかいた後は体を冷やしすぎないように気をつけなくてはなりません。対策として次のようなことを心がけたいですね。

・汗で濡れた服は着替える
汗をかいた後は、汗で濡れた服をなるべくすぐに着替えるようにしましょう。濡れた服をそのまま着ていると、どんどん体温が奪われてしまいます。

・汗はしっかりと拭き取る
服を着替える際に脱いだ時には、しっかりと汗を拭き取りましょう。汗がそのままだと新しい服も汗で濡れてしまうため、着替える意味があまりなくなってしまいます。

・体が熱くても薄着のままでいない
汗は体温が高いときに出るものなので、体感としては体が熱く感じるものです。着替えた後も熱いからと薄着のままでいてはいけません。汗冷えは急にやってくるもので、急激に体温が低下してしまいます。

寒いからといって厚着をして逆に汗をかいたりすることや、暑いからといって汗をかきっぱなしにしたりするのは要注意です。油断せずに汗冷えを防ぎ、健康を保てるように気をつけましょう。

 

汗腺が衰えると体臭が強くなる!? 汗腺を鍛えよう

汗の成分は血液と似ていて、人体に必要な塩分を多く含んでいます。健康な汗腺は、汗を作った後に皮膚の上へ排出するまでの通り道において塩分を再吸収し、体内に塩分を戻す機能を持っています。そのため、健康な汗腺から出る汗の成分は99%が水。サラサラとしており、臭いの原因にもなりにくい汗といわれています。

汗腺が錆びついているとこの塩分の再吸収機能がうまく働かず、塩分を含んだベトベトした汗となってしまい、塩分を失ってしまったり臭いが強くなったりしてしまいます。また、塩分を失うと体力が低下し、夏バテや熱中症が起きやすくなります。これを防ぐには、衰えた汗腺の機能を回復させることが大切です。

汗腺を鍛えるには、十分に汗をかく必要があります。体力に問題がない人の場合、ジョギングなど少し息が切れるくらいの運動を習慣づけると良いでしょう。最低10分以上のジョギングで汗をかきましょう。ケガや体力不足で運動が難しい人には足湯がお勧めです。バケツに40℃前後のお湯を入れて、ふくらはぎのあたりまでつけた状態で温まってみましょう。20~30分程度の入浴でかなり汗をかくことができます。

 

まとめ

汗腺は使えば使うほど、その能力が開花していきます。その一方で、使わないとその能力を発揮することができません。日常的に汗をかいておくことで、季節が変化する時期においても生活の質を落とさず快適に過ごすことができます。寒い時期から運動やお風呂・サウナなどでしっかり汗をかいて、本格的に汗をかく季節に体調を崩すことなど無いようにしましょう。

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<参考URL>
花王「汗ケアラボ」
ArtRoot「汗冷えを防止!汗をかいた後に体を冷やさないようにする対策方法3選」