少子高齢化による将来的な労働人口の減少が見込まれている現代社会において、ひとりひとりの労働者の生産性向上が近年における企業の重要な課題の一つとなっています。各企業が生産性向上を目的として労働環境の改善に取り組んでいる中で、睡眠の質に注目した「睡眠管理」が話題となっています。睡眠管理への関心が高い企業ではその一環として「睡眠研修」の導入が広がりを見せています。質の良い睡眠を取るには、質の良い睡眠について学び、実践する事が必要という事ですね。

睡眠は、仕事のパフォーマンスや労働災害の防止、更には生活満足度にも関わる重要な活動です。睡眠の質が悪いとどうなってしまうでしょうか。会社に遅刻してきたり、日中も眠気がとれず仕事の能率が落ちてしまったり、結果として事故やメンタルの不調が発生する悪循環に陥ってしまうかもしれません。

今回は睡眠の重要性について改めて学び、睡眠管理の効果的な実践方法、睡眠管理用のグッズ等をご紹介致します。

短すぎる? 日本人の睡眠時間

2014年に経済協力開発機構(OECD)が世界29カ国を対象に、15~64歳の国民平均睡眠時間の調査結果を発表しました。この調査によると、日本人の睡眠時間は世界29カ国の中で韓国に次いで2番目に短いことが分かりました。25カ国の平均が1日平均8時間22分のところ、日本では1日平均7時間43分ですから、世界的に見るとかなり差があることがわかります。また、厚生労働省の「過労死等防止対策白書」によると、フルタイムの正社員に対する調査で睡眠時間が「足りていない」「どちらかと言えば足りていない」と回答した人の割合は4割を超えており、理由としては「残業時間が長いため」が最も多かったそうです。残業が長引けば会社に滞在する時間が延び、帰宅の時間が遅くなるため睡眠時間はもちろん短くなります。

日本人の睡眠が短い事の原因のひとつとして考えられているのは、24時間営業のお店や、パソコン・スマートフォンの普及によって生活の夜型化が進み、それにつられて就寝時間が次第に遅くなっていること。もう一つの原因は、日本人の睡眠に対する意識の低さ、睡眠を優先しない傾向にあります。長時間労働や残業を良しとする職場の風潮があり、会社からなかなか帰れない人も多いでしょう。家に仕事を持ち帰る人や、寝る間を惜しんで趣味に時間を使いたい人、スキルアップのための「自分磨き」に時間を費やして睡眠時間を削ってしまう人も多いかもしれません。仕事も趣味も、ある程度整理して睡眠時間を確保する事を意識しなければ、睡眠はどうしても不足してしまいます。前述のように職場の風潮によって長時間労働を強いられてしまうケースもあり、睡眠時間確保は個人の努力だけでは限界があるケースも多いです。企業は、労働者の睡眠時間確保を意識し、より睡眠時間をとれるようアシストしていく必要があると言えるでしょう。

睡眠を削ることは、生産性に影響も

経済の視点で見ても、睡眠不足や不眠症は社会的に大きな影響を与えています。2006年に日本大学医学部の内山真教授が発表した試算結果によると、眠気による作業効率の低下や、睡眠が原因の遅刻・欠勤、睡眠障害や寝不足による交通事故などによって生じる日本国内の経済損失は、年間で3兆4,693億円にも及ぶとされています。また、非営利研究機関ランド・ヨーロップの調査研究によると、睡眠不足による経済損失額を国内総生産(GDP)比で見た場合、日本の損失率は2.92%となり、損失額は1380億ドル(約15兆円)にも上るそうです。

医学的にも、短時間睡眠が続けば生活習慣病やうつ病などのリスクが中長期的に高まることが分かっています。慢性的な眠気というのは、本人も気づかないうちにパフォーマンスの低下を招きます。自分では普通に働いているつもりでも、睡眠不足のせいでパフォーマンスは落ち、それにつれて社内の評価も落ち、気がつけば身も心もボロボロ、なんて事があるかも知れません。

上記のように、睡眠時間の不足が社会全体に与えている影響は決して小さいものではありませんが、その事実はあまり浸透していません。睡眠に限らず、健康については自己責任での管理が求められてきた歴史があり、改善についての具体的な取り組みはあまり行われてきませんでした。ですが、生産性の向上を考える上では、今後無視してはならない部分であると言えるでしょう。

睡眠を確保する事は健康状態に良い影響を与えるだけでなく、思考能力・判断力・集中力にも好影響があります。頭脳がフレッシュな状態であれば、仕事の効率や生産性に良い影響があるという事です。また、睡眠時間と賃金率の間には相関関係があるようです。日本経済学会で明星大学の梶谷真也准教授が、日本の家計を対象にした慶応大学の調査データをもとに「労働者の睡眠時間が増えると賃金率(時間当たりの賃金)が上昇する」という実証分析を発表しています。生産性と賃金率は必ずしも比例していくものではないかもしれませんが、生産性の高い仕事は評価されるはずです。

企業では、労働者の睡眠管理を推奨し、遅刻やミスの多い労働者とは面談を行い、事情をチェックするようにしましょう。原因の一端が睡眠不足にある事が感じられたら、睡眠時間について記録をつけるなどし、生活リズムや睡眠時間についての指導を行うと良いでしょう。また、無闇な残業を減らせるよう労働時間の長さではなく密度や内容で評価ができるように評価軸を改めるなどして、睡眠の確保をアシストする事も必要です。

スッキリ起きる目覚まし法と睡眠管理できるアプリ&グッズ

個人でできる睡眠管理の一つとして、スッキリ起きる為の目覚まし法と役立つアプリとグッズを紹介します。

睡眠についての具体的な話を書くと、それだけで一つの記事になってしまうくらいのボリュームがありますので、今回はお役立ち情報だけ簡潔にご紹介します。下記の事を頭に入れて快適な目覚めを目指しましょう。

■スッキリ起きる為の目覚まし法

  • 最低6時間以上の睡眠を確保しましょう
  • 目覚まし時計の音を小さめに設定しましょう。音量調整機能がなければ音がでる箇所にセロテープを貼るなど工夫しましょう
  • 眠りが浅いタイミングで起きる為に、起きたい時間の20分前と10分前にも小さい音量の目覚ましをセットしましょう
  • 起きたら朝日を浴び、朝食を食べることで体内時計を整えましょう

眠りが浅いタイミングを見計らって目覚ましを鳴らすことで、スッキリ起きる事ができます。ですが、もちろん眠っている本人ではなかなかそのタイミングはわかりません。アプリやグッズを有効活用して、眠りの浅いタイミングに起きられるようにすると効果的です。

■オススメアプリ

⇒いずれもスマートフォンを枕元に置いてアラームをセットすると、眠りの浅い時間を検知して起こしてくれるアプリです。毎日使う事で睡眠の質を記録してくれる機能などもあり、睡眠管理に最適です。

■オススメグッズ

⇒時間になると徐々に光を発し、朝日のような光で起こしてくれる画期的な目覚まし時計です。音で起こす従来の目覚まし時計と比べて体内時計を整える効果もあり、無理なく自然に目を覚ますことができます。

⇒「両足で踏まないと目覚ましが止まらない」というユニークな目覚まし時計です。お布団からどうしても出られず二度寝してしまう……という方にオススメです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。睡眠に悩みを持っている人はとても多いもので、現場の生産性にも影響が少なからずあります。企業と個人の両方で睡眠管理に取り組み、毎日気持ちよく仕事ができるようにしていきたいです。

 

参照元

NIKKEI STYLE『日本人の短時間睡眠 「働き方改革」で解消するのか』

NIKKEI STYLE「睡眠の短さ際立つ日本人 生産性に影響も」

眠りの専門店 市田商店「睡眠時間が世界で2番目に短い日本人 」

フミナーズ「目覚まし時計オススメ10選|朝起きれない理由と選び方」