現場での安全にどのように取り組んでいくべきか、どうすれば危険を回避できるのか。2018年7月18日〜20日に東京ビックサイトで開催された労働安全衛生展では、そんなニーズに応えるべく、VRやIoTなどの最先端の技術を使った安全対策のためのソリューションや器具、グッズなどが展示されました。

危機意識を向上させるVR体験

就業形態の多様化が進んでいる現代では、いままでのやり方が通用しないケースも増えていくため、その状況に対応する危機管理の部分が疎かになりがちです。そんな中でニーズが増えているのが、VRで実際に危険を体感できるサービスです。危機感受性を高めることで、個人の危機意識を向上させることを目的とした展示が多く見られました。

 

今回、実際に体験してみたのは、『RiMMリムVR危機体感』(三徳商事株式会社)という事故体験をVRで体験できるツール。触覚を再現できるグローブとゴーグルを装着することで、より現場に近い感覚がシミュレーションできます。転落や感電、巻き込まれなど事故事象とシナリオを想定し、シーンにあわせたカスタマイズも可能です。

今回は2分ほどのシナリオで、工場の高さ10mほどの作業場からの「転落」事象を体験してみました。はじめは高さや工場の様子を眺め「リアルだな」という感想しかなかったものの、事故を体験した後は軽いパニックで、とにかく落ちるのは「怖い!」ということで頭がいっぱいになりました。知識よりも体験とはよくいいますが、これは夢にでてくるまではいかなくとも、かなりの恐怖心を植え付けられました。

 

そのほかにも、ゲーム感覚で危険を体感できるVRをはじめ、VRを使った体験型の危機意識向上プログラムはほかにも数多くありました。とにかく体験することは、危機意識を高めるためにはかなりの効果がありそうです。

 

騒音問題を見える化して解決する先端サービス

現場の環境において、何かを創ったり人や物が出入りしたりする以上、そこで発生する騒音は無視できない課題です。特に騒音問題は周辺環境に大きな影響もあり、トラブルの原因になりかねないため、特に配慮が必要になることでもあります。

 

そんな騒音自体をモニタリングして見える化するサービスが、展示場でも大きな注目を集めていました。『NoiseVision』(日本音響エンジニアリング株式会社)は、近隣や敷地境界における騒音や低周波音を数値化し、把握することで、対策を具体的に検討できるというもの。どこからその騒音が発生しているかの原因解明や、優先順位なども明らかにできるとのこと。もちろん器具の設置から調査、対策プランの策定までのサポートもしてくれます。また、リアルタイムで騒音を検知することも可能で、ホストPCで一元管理もできるとのことです。

 

何をするにせよ周辺環境への配慮は欠かせません。騒音問題を抱えているのであれば、このように見える化することで対策も打てますし、効果はたしかに期待できそうです。

 

音の見える化

これまで解決が難しかった騒音問題を、「見える化」で解決できるものにする

 

作業者の体調を管理把握するIoTソリューション

これだけの猛暑が続くと、現場で働く人たちの健康状態や健康管理も、現場の安全を守る上で大切なことになります。特に空調設備の整っていない屋内外では、熱中症や脱水症状といった体調不良への注意が必要となります。大きな事故の原因が、ちょっとした体調不良からの気のゆるみといったエラーが多いものです。

 

最後に紹介するのは、労働安全衛生展の隣で行われていた「猛暑対策展」で目を引いた、安全管理支援ソリューション(富士通株式会社)です。こちらのソリューションは、作業者がバイタルを測定する装置を装着することで、管理者が作業者の異常を即座に把握できることができるというシステム。周囲の温度や、人の移動や脈拍、位置情報などを独自のアルゴリズムで解析し、現在の作業者の状態をリアルタイムで管理者に通知します。管理者は作業者の疲労具合や体調も把握できるので、救援や休憩の指示などをいち早く出せます。体調の状態はスマホアプリでも確認できるので、管理者のみならず現場責任者、本人も行えるとのこと。つまり、作業者の状態把握、その共有といった現場全体の見える化が行えるということです。

 

猛暑対策でもあり、労働安全対策でもあるこちらのソリューションは、バイタルを測定する機器とアプリさえあればすぐ使えるため、導入も簡単。少数からでも使えるので、夏場に限らずさまざまなシーンで使えそうです。

 

富士通の高温多湿環境デモの実演風景Ph03

こちらのケースでデモ中のマネキンさん。温度は危険域なのに体調表示が平常なのは、人形ならではの反応だということ

 

まとめ

労働の現場には多くの危険がつきまといます。そのための安全対策は欠かすことのできないものですが、労働人口の減少や職場環境の変化によって、これまで培われてきた安全対策が通じなくなったり、ノウハウ伝達や教育が難しくなっていると懸念されています。そのような状況の中で、その前線ではVRやIoTといった先端技術が活躍していました。