2018年は例年にない猛暑に今まで以上、熱中症や熱射病という言葉を耳にする機会が増えています。総務省消防庁は2018年7月31日、7月23日〜29日の1週間で搬送された熱中症患者が全国で1万3,721人(速報値)と発表しています。このような被害の深刻さも後押しとなり、各所で熱環境でのあり方、過ごし方などが見直されており、各人の熱中症への対策も少しずつ進んでいるといえます。一方で、気温にばかり目が行きがちですが、熱中症予防には湿度対策も重要であることをご存知でしたか? 今回は湿度対策の重要性についてご説明します。

総務省 緊急搬送状況 熱中症情報

 

熱中症予防を目的に提案された指標WBGTにも湿度の項目があり

 

WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)という言葉をご存知でしょうか。1954年、アメリカで熱中症を予防することを目的として提案された指標で、人体の熱収支に影響の大きい(1)湿度(2)日射・輻射など周辺の熱環境(3)気温の3つを取り入れたものです。ちなみに熱収支とは物体などが外部から受け取る熱や内部で発生する熱と、外部へ放出する熱、内部に蓄積される熱のバランスで、定常はバランスがつり合っているとされます。

 

湿度がなぜ、熱中症と関係しているのか。それは、人間が気温や水温など周囲の温度に左右されることなく、自らの体温を一定に保とうとする恒温動物だからです。体温を一定に保とうとする人間の行動の例として、寒くなった場合は震えて体温を上げようとし、暑くなると汗をかいて熱を逃そうとすることなどが挙げられます。実際にWBGTのなかでも湿度が重要な指標となっており、算出式のなかでも湿度が最も高い数値となっています。

 

<屋外でのWBGTの算出式>

WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度

 

参考

環境省 熱中症予防情報サイト 暑さ指標(WBGT)の詳しい説明

 

 

本来人間は、人間には体表面温度が上がり過ぎないよう発汗し、汗の気化熱によりた表面温度を下げ、最適温度に保とうとする為の機能が備わっています。より具体的に言えば、皮膚温が上昇した場合に、発汗量を増加させ、汗が蒸発する際の気化熱により目標温度に近づけます。しかし、湿度が高い場合、対応調節のため汗をかいたにもかかわらず、汗が蒸発できず冷却効果が得られなくなってしまうのです。

 

湿度をどれくらいにするのが適正なのか、その目的に応じて適正湿度は異なりますので断定はできませんが、屋外、屋内を問わず熱中症対策を講じる際は、気温だけでなく、湿度にも気をつけたいところです。

 

 

すぐに実施できる 多湿のときに気をつけておきたいこと

 

現場の温度、気温だけでなく湿度に注意するにはどうすれば良いのでしょうか。すぐに実施できる対策として下記の2点が挙げられます。

 

1 屋内なら 窓を開けて換気する エアコンも除湿を使用する

多湿で熱中症となるケースの大半は屋内での出来事。湿度が高いな、と感じたらまずは窓を開けて換気してみてください。窓を開けられない環境であればエアコンの除湿を使うことも効果的です。

 

2特に屋外の場合 こまめな水分補給

大量に発汗しながらも、汗が蒸発せず、うまく体温を下げられなくなると身体のなかの水分や塩分のバランスが崩れて、対応調整ができなくなる可能性もあります。そのため喉が渇いていなくても0.1〜0.2%の食塩水やイオン飲料、経口補水駅などを摂ることをおすすめします。なお、お茶やアルコールには利尿作用があり、身体のなかの水分を外に出してしまうため水分補給には適していないので注意しましょう。

 

 

まとめ 湿度が高いな、と感じたら除湿や水分補給を心がける

 

熱中症と聞くと気温にばかり意識がいきがちですが、実は湿度の高さも重要な指標となるのです。例えば屋内ならば先に挙げた通り、窓を開けて換気したり、エアコンの除湿を使うなどの対策をたてましょう。また、湿度計を皆が目にできる場所に置き、常に意識付けすることも重要かもしれません。

 

一方屋外での作業の場合、「いつもより気温が低い」などと油断せず、湿度にも意識しながら、こまめな水分補給を心がけてください。また、少しでも熱中症の疑いがあった際は、お近くの医療機関に連絡を入れましょう。

 

<参照>

生産性を上げたければ「温度」と「湿度」に気を配れ!? 最適な作業環境を徹底的に考察してみた

 

環境温度の違いが作業パフォーマンスに及ぼす影響

 

低湿度環境が在室者の快適性・知的生産性に与える影響に関する研究

 

神奈川県 快適さの条件は湿度、空気の流れ、温度