いわゆる“男社会”の筆頭であった現場の仕事に進出する女性が増えています。背景には日本全体における労働力不足や、担い手の確保、多様な働き方を許容する社会機運などが挙げられます。今から先立つこと2014年8月には国土交通省と建設業5団体が「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を発表しています。官民をあげて女性の入職および活躍を加速化させるべき取り組みは、今どこまで進んでいるのか。事例から現状を探りたいと思います。

 

 

全国的に広がる現場への女性入職。建設現場では全国的な取り組みも

 

2014年8月より国土交通省と建設業5団体で掲げたもっと女性が活躍できる建設業行動計画」。その効果をはかるべく2016年8月に「女性活躍支援に取り組む地域ネットワーク事例集」を発表しました。まずはこの中から、いくつかの事例をピックアップ。この間、どんな施策が実施されていたのかを確認していきましょう。

 

  • 女性が憧れる建設業の目指す取り組み

 

島根県 しまね建設女子魅力向上委員会

 

建設業における女性従業員数12%、女性技術者3%と全国と比較してもその割合が低い島根県では、「3K」「男性が働く現場」という建設業のイメージを払拭すべく女性が現場で働いている姿をメインビジュアルに据えたカレンダーを全中学校や公民館などに配布。さらに建設業で働く女性同士の相互交流を図り、業界のイメージアップのためのアイディアなどを出し合い、就職フェアへの参加、専門的知識を学んでいる学生を対象に、出前講座なども実施しているそうです。

 

2  女性が長く活躍できるたけの取り組む

 

愛知県 中部圏けんせつ小町

 

男性と女性の体格差、体力差を補う形で、負担の少ない重機の運転資格の取得を推奨し、体格差などを気にせず、女性が長く働ける形を提案しています。

さらに、女性技術者が活躍する名古屋市内の建設工事現場に学生を招待。建設業界の現状を正しく理解してもらい、現場で働くモチベーションを高める取り組みを実施しています。

 

3  建設業における女性進出を妨げる常識を取り払う取り組み

 

東京都 建設設備六団体協議会 設備女子支援ネットワーク

 

こちらでは女性交流ネットワークを支部や県の関係協会等地域レベルで構築。タテ・ヨコの連携を通じて、建設設備関連企業で独立しがちな女性を支援する仕組みをつくっています。こちらの協議会で声を集め、個人ではなく団体の意思として企業に伝達し、女性入職の環境整備を行っています。

 

 

4  建設業の実態をしってもらうための取り組み

 

山口県 やまぐち建設産業女性の活躍支援ネットワーク

 

16団体が加入する協議会をベースに「やまぐち建設産業女性の活躍支援ネットワーク」を設置。ロールモデルと女性が活躍している事例を紹介し、建設現場における女性の実態を広く広報しています。

また、建設業界の様々な職種で働く女性の1日のスケジュールなどをまとめたPR冊子を発行。県債の工業高校に通う生徒や求職者に“実態”をつぶさにしってもらう取り組みを行っています。

 

 

女性の雇用に積極的な企業が増える中、環境整備は急務となる

 

少しずつではあるものの、全国的に女性に入職してもらい“現場”で活躍してもらおうという企業は増えてきているといえます。一方で女性が気持ち良く、持てるポテンシャルをフルに発揮してもらうには、職場環境の面で、まだまだ改善は必要といえます。

 

<改善すべき環境対策>

  • 出産や育児と両立できる仕組みは構築されているか
  • トイレ、待機室などに女性専用のものがすべての場所に常設されているか
  • 材料、工具の大きさや重量が女性用にカスタマイズされていない
  • 現場の男性が女性の扱いを理解していない。セクハラ、パワハラの横行

 

例えば3においては作業着や安全靴などで身体にあったサイズが見つからないという声も少なくなく、安全に作業する環境すら整っていないという問題もあるようです。

 

また、住宅の現場など狭小地での作業の場合、トイレを2台接するスペースが確保できず、作業中はトイレを我慢したという女性も少なくないようです。

 

このような問題を解決すべく、国と交通省は男女ともに働きやすい環境にするための施策のひとつとして「快適トイレ(女性も活用しやすいトイレ)」を標準仕様として決定。2016年9月には国土交通省 大臣官房 技術調査課が全国の自治体への広まりを受けてその事例集を発表しています。

 

国土交通省 建設現場における「快適トイレ」の事例集

 

 

こう書いてしまうと、女性を特別視すべきという内容に誤解されそうですが、重要なのは男性と女性の違いを理解すること。双方の違いを理解し、お互いの良い部分で補い合うことが重要だと理解すべきでしょう。

 

 

まとめ これからの現場には“女性”の力が必ず必要となる

 

事例からもわかるとおり、現場は一部の先進的な企業や団体が少しずつ環境を整備しているにとどまり、まだまだ浸透しているとは言い難いといえます。

 

労働人口の不足が各業界で叫ばれる中にあって、“現場”にあっても優秀な人材の獲得は今後、より厳しい時代を迎えます。そんななかにあって閉鎖的かつ男性的なスタンスのままでは、同業他社との競合だけでなく、自社の経営そのものに暗い影を落としかねません。今後は性別の違いだけでなく、国籍なども越えて個人個人を尊重した働き方を推奨する企業が生き残っていけるといえるでしょう。

 

なお、厚生労働省では「女性の活躍推進企業データベース」を公開しており、男女別の競争倍率や情勢労働者の割合、役員に占める女性の割合などを閲覧できます。女性の雇用、採用に積極的な企業の確認などはこちらも参考にしてみてください。

 

厚生労働省 女性の活躍す私信企業データベース

 

<参照>

国土交通省 『女性活躍支援に取り組む地域ネットワーク事例集』

 

国土交通省、建設5団体 もっと女性が活躍できる建設業行動計画

 

NHK NEWS WEB WEB特集“ガテン系女子”働き続けるには?