中央労働災害防止協会主催で毎年開かれている緑十字展。今年はパシフィコ横浜にて10月17日~19日の日程で、安全衛生保護具や安全化する機器、職場環境や作業方法を改善するソリューションが紹介されています。また展示などに関連した講演、セミナーも開催され、現場の安全と働く人の健康を改めて考えさせられる展示会となっています。

今年の緑十字展はフルハーネス祭り!?

 

現場の安全衛生を向上させる上で、VRやIoTを活用した先進技術を取り入れた製品やサービスが目を引くことが多かった昨今の展示会。しかし今回は、2019年2月1日に施行される改正「労働安全衛生法」によって、「安全帯」が「墜落性使用器具」に変わるということもあって、特に目立つのはフルハーネスとその関連製品でした。

 

2019年2月の新ルール義務化から、現行の規格が全面禁止される2022年1月までおよそ3年間の猶予があるとはいっても、その対応が迫られます。企業側としてもその準備の仕方はさまざまで、展示会のあちこちで来場者から「いつ替えるべきなのか」、「規格が急に変更されたりしないか」などの声が聞かれます。また、フルハーネス製品自体も新規格に合わせ機能やデザイン、素材部品などを刷新しているものがほとんどで、「どのような製品がいいのか」も悩みどころ。そんなユーザーの声に答えるべく、展示側も来場者の疑問に丁寧に答える姿が印象的でした。

 

展示会ではフルハーネスの試着ができるのはもちろん、実際の現場感覚を体感してもらえるような工夫された展示が数多く見られます。藤井電工のブースでは実際に高所作業を行いながら、製品の特性や変更点などを解説しており、多くの人だかりができていました。

 

そこで来場者に話を聞くと「もちろん、実際に使ってみないとわからないけど、導入すれば安心感は高まるし現場がよくなることは間違いない」とのことでした。

デモンストレーションの様子には特に注目が集まっています。

法改正によって性能も大きく向上したフルハーネス

 

法改正によって変わったのはフルハーネスの呼称や義務化だけではありません。性能面の規制も大きく変わる点です。

 

具体的には墜落、転落中の宙づり時にベルトが身体を圧迫する衝撃荷重の規制が大きく変更されました。これまでの8kN(キロニュートン)から4kNに半減できるようにすることが求められ、性能落下試験で使用する人体模型の重さも、これまでの85kgから100kgに変更になりました。つまり数値だけみれば、フルハーネスにはこれまでの倍以上の安全性が求められるようになったということになります。

 

例えば来年2月から販売予定の『TITAN PANGAEA』(サンコー株式会社)では、上記の基準をクリアすることに加えて、従来の製品よりも15%ほどの軽量化を実現。現場における動きやすさを考えると、少しでも軽いのはありがたいところです。

 

しかも、この軽量化はこれまで樹脂製だったバックルやクリップを金属製に変更した上でのこと。安全性や耐久性も強化された上で軽くまでなっているということです。

新規格に合わせた『TITAN PANGAEA』は軽さが魅力。

人気の空調服もフルハーネス対応

 

法改正に合わせた新しいフルハーネス製品が数多く発表される中、その関連製品もその対応に余念がありません。しかし、新規格に対応するため各社がさまざまな製品を発表しており、たとえばフックを取り付ける位置の微妙な違いや、部品の大きさ、そのデザインなど違いもさまざま。一言に「どのフルハーネスにも対応しています」とはいいきれない。一方ではそんな様子見感もあるようでした。

 

2018年夏の猛暑によって、一時は入手困難にもなった『空調服』(株式会社空調服)のブース前も、多くの来場者が訪れていました。「さすがにあの猛暑は現場も厳しかったので今年は早めに注文しようと思って」というような声も聞かれましたが、やはり注目はフルハーネス対応がどうなっているかというところ。

 

フルハーネス対応型の空調服は、フルハーネスを装着した上から着るタイプのもので、背中についた穴からランヤードを装着するタイプ。穴の部分は袋状になっており、服の中の空気を逃さない設計になっています。

 

また、空調ファンの落下防止のためネットで保護したり、服の前面にフックをかけられるようするなど、高所作業において必要な気配りがされた製品になっていました。

2018年夏は現場で大活躍だった空調服もフルハーネス対応。

まとめ

 

今回の緑十字展は、労働安全衛生法改正にあわせ、特にフルハーネスに注目が集まっていましたが、他にも現場の安全、健康、働きやすさを考えられたサービス、製品が数多く展示されていました。ただ、やはり高所作業とフルハーネスの新基準といった部分は現場で働く仲間たちの命に関わる部分です。これを良いきっかけとして、さらなる働きやすい現場を実現することが望まれます。