イマイチ仕事の効率があがらない、なんとなく仕事の時間が過ぎていく、という状況に直面している人も多いのではないでしょうか。また、管理職は「最近の新人たちはモチベーションがないなあ」と感じることがあるかもしれません。少し前からモチベーション・マネジメントという言葉も聞かれるようになりましたが、どういった方法を用いればモチベーションを上げることが可能なのでしょうか。

 

モチベーションとはなにか

モチベーションとは、何かの行動する際の動機づけや目的意識といったものです。それを行う理由と言ってもいいかもしれません。もちろん仕事は、やらなければならないからやる、という側面もあります。しかし、できる限りモチベーションを高めたほうが本人にとっても、精神的負担は少なく、また仕事全体もスムーズに進むことは容易に想像できます。

 

モチベーションは「外発的」動機づけと「内発的」動機づけの2つに大別できます。「外発的とは、例えば、この仕事をクリアすれば評価される(昇格する、昇給する)といった形で外からその仕事を後押しするものです。一方の内発的の方は、本人がその仕事に抱くものです。本人の興味や関心につながっている、やりがいを感じているという状態であれば、内発的動機づけがうまく言っている状態と言えるでしょう。

 

この2つに分けてみると、より本質的なモチベーションは「内発的」な方にあるように思われます。「外発的」の方は、仕事そのものとは別の部分に力点があり、本人がその仕事の内容に深く入っていくことにはならないでしょう。もちろん、この両面からの刺激が必要であることは言うまでもありませんが、部下や自分のモチベーションを上げていくには、その仕事の意味や意義、価値、面白さといったところを分かち合うことで「内発的」動機づけをより高めていくことが効果的です。ただし、「外発的」動機づけが比較的すぐにできるのに対して、「内発的」動機づけは本人に気づきを促す方法なので、時間も手間もかかります。

 

マズローの欲求5段解説

モチベーション・マネジメントや経営学に関する話ではマズローの「欲求5段解説」がよく出てきます。これは「人間は自己実現に向かって絶えず成長している」という考え方に基づいて理論化された仮説です。これによると、人間の欲求は低層から「生理的欲求(食べたい、寝たい等)」「安全欲求(安全、健康を得たい)」「社会的欲求(仲間がほしい)」「尊厳欲求(認められたい)」「自己実現欲求(創造的活動がしたい)」の5段階に別れており、それぞれ低層の欲求が満たされると上位の欲求を求めるようになる、というものです。

この仮説から考えられることは、その人間の組織での位置によって、向上させるべきモチベーションが違うということではないでしょうか。つまり、入社したての新人にとっては、より低位のモチベーションを刺激することが向上に繋がり、ある程度低位の満たされている環境にいる社員にはより高次のモチベーションが必要になるということです。

 

自分のモチベーションを上げるには?

仕事自体に意義や目的を見出し(つまり「内発的」モチベーションを高め)、興味や関心を刺激して、マズローの言うところの「社会的欲求」に基づいて志を同じくする仲間を集め、互いに「尊厳欲求」を満たしあいながら、「自己実現」を目指して仕事を進めるというのが、もっともモチベーションが高い状況といえるかもしれません。もちろん、そういう人もいますが、現実問題として眼の前にあることを片付けることが優先、という場合の方が多いです。ではこういった場合、現実的にどう考えればよいのでしょうか。ポイントは大きく4つに分けることができます。

 

  • ゴールを定める

すべての仕事には目的とゴール(目標)イメージあります。「何のためにやるのか?」「何を目指すのか?」などを意識せず、振ってくることをただこなすという作業の状況になると、先が見えなくなり、苦痛になってしまいます。まずは、仕事の目的を確認する。そして、ゴール(目標)をメージする。たとえゴールが明確にイメージでなくとも「ここまでやったらゴール」と自分の中でイメージを作り、そこまでやったら一度力を抜くという方法もあります

 

  • とりあえずやる

始める前になんだかやる気が起きないなあ、という気持ちになることは多いものです。こういうときには何も考えることなく、とりあえず手を動かしてみる、取り掛かってみる、というのも一手です。自動車でも何かしらの機械でも、スタートするときに一番エネルギーを要します。人も同様ではないでしょうか。何気なく始めてしまえばあとは慣性の法則のようにスーッと進むこともあります。

 

  • 最初の目標設定を低くする

自分はできる、と思っていると実力以上の目標を立ててしまうことがあります。「自分はできる」と思うことではじめはモチベーションが上がるかもしれませんが、ふと見上げたハードルの高さで一気に疲れてしまうことがあります。ハードルを上げるよりは確実に達成できる高さにして、日々着実にそれをこなす方が結果的にモチベーションは上がることがあります。

 

  • 「まだやれる」と思ったところでやめる

仕事がのってくると、「まだやれる」と思うことがあります。しかし、この「まだやれる」は気持ちが高ぶっているだけのことが多く、大抵は後々エネルギーが枯渇して一気にモチベーションが下がることがあります。「まだやれる」と思ったところがその日のやめ時だと思ったほうがいいかもしれません。

 

部下のモチベーションを上げるには?

自分のモチベーションはある程度自分で目標を定め、高めていくことが可能です。しかし、一緒に働く部下のモチベーションはどのように上げていけばよいのでしょうか。先に挙げた4つのポイントを上司がある程度管理することで可能になる部分もあります。

 

このためには、部下が今どういった状況にいるのか、ということの把握が不可欠です。どこまでできているのかを率直に聞いて把握した上で、クリアしていることを自覚させ、次に何をどこまで進めるのかを明確にします。これはゴールを都度、設定することに近いです。このとき「まだそんなところにいるのか」という言葉は逆効果です。どんなに遅くとも「ここは終わった」「ここはできた」とまず部下がゴールした部分を認めることで、本人も次の一歩が踏み出すモチベーションが生まれるはずです。これは相手の「尊厳欲求(認められたい)」を満たすということでもあるでしょう。

 

また、走りすぎている部下がいれば「明日でいい」ということも大事です。こういう意味で、上司の仕事は、部下に都度適切なゴールを設定してあげることかもしれません。

 

まとめ

モチベーションの上げ方について、ここでは自分自身について、また部下について、どういったアプローチが可能かということを見てきました。しかし、モチベーションを上げようということばかり考えていると、どうしてもその場限りの発破かけになってしまうこともありえます。しかし、先にも記した通り、モチベーションが最も高まるのは自分にとってそれが「意味」や「価値」があると思える場合です。つまり、その仕事に本気になれるかどうかです。このためにはその場で働いている人に、「この仕事の魅力は何?」と問うのも一つの手です。

 

たとえば、建設現場であれば、ここをどういうふうにしたい?と本人の率直な気持ちを聞くのもいいかもしれません。それに対して自分はこう思う、という言い方をすると、対等な立場で話をすることができます。少し仕事の自由度が上がった部下がいたとき、こういったことを一緒に考えてみるのも本人の「内発的」モチベーションを高める一助になるかもしれません。また、もちろんこの問いは、自分自身に向けて問うこともできます。

 

<参考URL>

BIZ HINT モチベーション理論とは?やる気を高めるための理論を徹底解説

ビジネス心理学 モチベーションの上げ方|自分や部下のやる気を引き出す方法