企業がさらなる効率化を図る上で、今まで培ってきた様々なノウハウや常識を覆すような考え方が近年生まれています。人工知能(AI)が企業の社員の動きをデータ化し、導き出した結論の中には「午前中の会議は5分を超えてはならない」「一日に開く会議は3回を超えてはならない」といったアドバイスや、「メールは150字以内」のルールを守る事で効率化ができる、といったものもあります。

実際に導入するには障害があるかもしれませんが、こういった独特なアプローチによって効率化を図る企業も出てきている現状があります。今回は、既存のアプローチから逸れるような、ちょっと斬新な効率化の方法について紹介します。

 

報連相を止めると生産性が上がる?

仕事において「報告、連絡、相談」は「報連相(ホウレンソウ)」と略され、多くの企業で重要視され、常識でありビジネスマナーですらあるとされてきました。ですが、実際に報連相が機能しているかと言うと、うまくいっていない場面も多いようです。一体なぜなのでしょうか。

報連相のそれぞれの定義としては、下記のようになっています。(Weblio辞書調べ)

 

報告:つげ知らせること。特に、研究や調査の結果、与えられた任務の結果などについて述べること。また、その内容。
連絡:関係の人に情報などを知らせること。
相談:物事を決めるために他の人の意見を聞いたり、話し合ったりすること。また、その話し合い。

 

上記のような報連相が必要と思われてきた背景には、社員同士の相互理解の必要性があると考えられてきたからであり、良いことも問題点も含めた質の高いコミュニケーションによって仕事を「より良くすること」が報連相の本来の目的です。仕事を円滑に進め、改善を進めていく上でコミュニケーションが必要になるという事は間違いありません。問題なのはその「質」です。「より良くする」という目的を念頭に置いて報連相を見つめた時に、目的が達成できているのか、という事を改めて考える必要があります。

報連相が徹底されている会社においては、部下から上司への報連相が頻繁に行われます。良いことの報告はしやすいと言えますが、悪いことの報告はどうでしょうか。本来、問題点の発見とそれについての報告は改善に向けての大きな手がかりになる部分ですが、頭ごなしに悪い報告を叱るような上司の元では、報告をする事に心理的負荷がかかってしまい、報告がしにくい状況が生まれてしまいます。改善の芽が摘まれている事になります。

 

相談の場面でも同様に、部下の判断を信頼し任せてくれる上司もいれば、否定して自分の思い通りに仕事を動かしたがる上司もいるでしょう。これでは部下の自主性を育てる事ができず、達成感を与えることもできません。

必要以上の報連相を強制してしまうと、「こんな些細なことまで報告が必要とされるのでは、自分は一人前として扱われていない」と部下のモチベーションの低下をひき起こします。過剰な「報連相」によって、やることなすこと全てを報告書と打ち合わせの対象にしてしまうと、時間ばかりがかかってしまい成果に繋がらない労力となってしまいます。上司から細かな指示を与えすぎてしまうと、成果が出たとしても自分でやったという達成感があまり感じられません。成果が出なかったときも「指示をした上司のせいであって、自分のせいではない」という無責任を生んでしまいます。

上記のような悪例を止め、報連相を強制しないことで生産性は改善されます。上司は報連相を強制せず、自主性を重んじる事が大切です。部下に対して自分から積極的にコミュニケーションを取り、情報を吸い上げることを意識しましょう。

 

週4日勤務で何が変わる?

週5日勤務という長年の常識にもメスが入っています。

週5日勤務にプラスアルファで残業など、長時間労働が積み重なる事は多いでしょう。長時間労働によって労働者は疲れてゆき、生産性は落ちていってしまいます。これを防ぐために、社員には十分な休息を与える必要があります。その方法の1つが週4日勤務に切り替えることです。

1週間に土曜日・日曜日のほかにもう1日休みを追加し、週4日労働を行った企業があります。Perpetual Guardianというニュージーランドの不動産会社です。従業員のワーク・ライフ・バランス改善と、オフィスにいる間は仕事に集中してもらうことを目的として週4日労働を導入したところ、従業員のうち78%が仕事と生活の両立がうまく管理できていると回答し、ストレスレベルも低下し、生活満足度が改善されたことが報告されています。従業員たちは週4日労働でも生産力が落ちないように工夫を凝らし、手動だった工程を自動化したり、仕事と関連しないネット利用を減らしたりなど、限りある労働時間で成果を上げられるよう工夫を凝らすようになったそうです。

多くの時間をかけて仕事をしたからと言って、必ずしもそれが質の良い仕事だとは限りません。長時間労働による疲労や集中力の低下によって生産性を著しく下げてしまうのは非効率的です。週4日勤務にすることで十分な休息とリラックスを得ることができ、健康体でオフィスにまた戻ってくることができます。心身ともにリフレッシュした状態であれば、質の部分で1日以上のリターンを生み出すことは十分に可能だということです。

週4日勤務を実施する事ができれば、優秀な人材を惹き付ける要素にもなります。ワーク・ライフ・バランスの充実は全ての労働者にとって一番の魅力です。離職率の低下にも繋がることでしょう。現段階で週4日勤務を取り入れている日本の企業は少なく、先進的な取り組みを行っている会社として注目を引く効果もあります。

実際に週4日勤務導入を考えた場合、デメリットも考えられます。労働時間が短くなるシステムなので、短くなった分の給料が減ることはもちろん考えられます。給料が減ってしまい生活が圧迫されてしまうようであれば「それはちょっと……」と考える従業員も多い事でしょう。また、週の勤務時間が変わらないシステムの場合は、1日の労働時間が増加することになります。ワーク・ライフ・バランスの実現や生産性の向上につながっているかどうかを意識した上で、週4日勤務システムを構築する必要があるでしょう。また、他部署や顧客との連携・連絡を考えると、休日にコミュニケーションの不具合が起きることが考えられます。リモートでも対応できる環境づくりなども課題の一つとなるでしょう。

週4日勤務の導入にはデメリットもありますが、ワーク・ライフ・バランスの実現や生産性の向上といった大きなメリットが期待でき、これらの拡充を検討している企業にとっては魅力的な選択肢になっているのではないでしょうか。

 

最適なミーティングの時間とは

上述の報連相のところと重なる部分もありますが、会議・ミーティングについても無駄が多く、改善ポイントが多くあると考えられています。一般的に、人間の集中力の持続時間はだいたい50分から1時間程度と言われていることからも、会議はできる限り1時間以内におさえるべきと言われていますが、さらにそこから一歩進んで、30分程度に会議を圧縮する事を試してみてはいかがでしょうか。

人間の集中力には波があり、波の周期は15分周期であると言われています。それを実証する例として、東京大学の池谷裕二教授がベネッセコーポレーションの協力のもと中学1年生に対して行った実験において、1時間続けて英語を学習する「60分学習」のグループと、休憩を挟みながら学習する「15分×3=45分学習」のグループに分けて学習成果を比較したところ、後者のほうが明らかに学習成果が上がったということです。「15分」周期で休憩を挟むことで、集中力が維持されたからと考えられます。他にも、テレビ番組も10~15分程度でCMを入れる構成になっていますし、同時通訳も基本的に15分周期で担当者が交代するサイクルを採用しているといいます。

集中力が15分周期であるという事は、会議にもそのままあてはまります。集中力の波に合わせて「15分」をワンブロックとし、それを2サイクル回す形の「30分会議」を試してみましょう。最初の15分は情報共有の「インプット」に充て、後半15分をディスカッションと結論の「アウトプット」に充てる方式です。「30分しかない」という制約があると、無駄を可能な限り削ぎ落として話を進めなければ間に合いません。会議前に各自が目を通しておくのはもちろんのこと、議論の時間においても、意見を簡潔にまとめて発言することが求められます。

進行役がテンポ良く進めていくことも会議を円滑に進めるためには重要な要素です。脱線した話が長引くケースは多いですが、そこは進行役が「興味深い話ですが、本題に戻しますと」「そちらの議論はまた別の機会に改めてさせて頂きまして」などのフレーズを活用し、上手に本題へ戻しましょう。反対に、誰も発言せず議論が進まない場合は、指名して意見を引き出すことも大切です。

どうしても30分、1時間では済ませられそうにない会議の場合は、適度な休憩をとるのが有効です。5分程度でもフリータイムを設けるだけで、頭の中がリフレッシュします。

会議のやり方には、その企業の哲学やポリシーが反映されます。有名企業における会議の手法などを学んでみると、その企業の哲学が色濃く反映されている事がわかると思います。会議のやり方には正解はありませんが、あなたの企業にあった会議の方法が必ずあるはずです。是非会議の方法について話し合い、改善を目指してみて下さい。

 

まとめ

今回は「報連相を強制しない」「週4日勤務」「30分会議」など、ダイナミックな効率化案を紹介しました。共通するのは、今までの常識を覆すようなアイデア、という事です。まずは試験的にいろいろな案を実行してみると、メリット・デメリットを実感できると思います。先進的な企業が取り入れている効率化案を、一度試して体感してみてはいかがでしょうか。

 

<参考URL>

ライブドアニュース『AIの日本経済診断、不振の原因はなんと40歳男性の非婚―中国メディア』

中小企業診断士 富田哲弥の大丈夫でいきましょう!『報連相は常識だを非常識にすると生産性が3倍になる』

東洋経済ONLINE 『「ホウレンソウ」は、人の成長の芽を摘む』

モチベーションは楽しさ創造から 『確かに一理!「報連相なんてムダ!」という外国人ビジネスマンの言い』

ダイヤモンド・オンライン『週4日制労働を成功させたソフトウエア企業の働き方革命』

Gigazine『「週4日労働」で従業員のストレスレベルと生活満足度が改善されたという報告』

lifehacker『会社を「週4日勤務」にすべき理由

u-note『ベストな会議時間は○時間!会議時間の現状と理想』

フクラシア『会議に集中できる時間はどれくらい?無駄な時間をカットして会議の質を高める方法』

ダイヤモンド・オンライン『「会議は1時間」という常識が生産性を下げる。会議は「15分×2=30分」が原則である。』

LightworksBLOG『AppleやGoogleは会議も違う! 超有名企業の効率化対策5選』