新人と一言に言っても新卒や中途採用、派遣、外国人、高齢者など、様々なパターンがあります。しかしどれも共通して言えるのは、大切な労働力だということです。新しい仕事、職場に慣れるのは入ってくる側も受け入れる側も大変なことです。人材確保が難しくなっている中で、せっかく仕事を覚えた従業員に長く働いてもらうにはどうすればいいのでしょうか? その一つの方法として「研修」の工夫があります。

今回はそれぞれの研修方法において、メリット、デメリット、そして失敗しないために、気をつけるべきことを紹介しています。

 

そもそもどうしてやる気を無くしたり、すぐやめたりするのか。

まずは若者、主に新卒についてみていきたいと思います。以下は、厚生労働省による大学卒業者の離職率についてのデータです。

 

大学卒業者の3年以内の離職率

平成15年度   35,8%

平成25年度   31,9%

 

早期離職率は平成15年をピークに少しずつ下がっていますが、それでも3割以上が退職してしまうのが現実です。また、今後少子高齢化が進むことを考えれば新卒確保がむずかしくなっていくことが予想されます。新人教育にかかるコストや新しく採用をする際のコストなどを考えると、離職率を下げるのは緊急の課題だといえるでしょう。

では、なぜ離職率は3割を超えたままなのでしょうか。若者が不満に思う代表的な理由として考えられているものをみていきましょう。

 

1、労働時間の長さが不満

労働規則に書いてあることと、現実では乖離があるのはご存知かと思います。が、今の若者にとって、明文化されているルールと暗黙の了解の乖離によるストレスの耐性が低い傾向にあります。

また、ライフワークバランスなどの言葉もあり、プライベートの時間を大事にする傾向もあるため、労働時間は職場環境の良し悪しを判断するための重要な指標になります。

2、やりがいに対する不満

「仕事が面白く無い」こう漏らす若者は多いです。

また、ベンチャー企業などのニュースで、「短期間で昇進」などが取り沙汰されることの多い中、キャリアアップまでにかかる時間の長さなど、期待していたものと違う事で不満に思う方は多いです。

3、給与に対する不満

「辛い思いをしている割には給料が安い」や、「もっと多いと思っていた」などを退職の理由とする若者は多いです。“最初の数年は勉強”と考える傾向があまりありません。さらに給与に関しては同級生などとの比較に上がることも多く、研修中の給与が低いことで、やる気を失う人もいます。

4、会社員という立場に対する不満

今まで学生の中ではトップクラスやそれに準ずる成績を出していたので、社会人になり、枠が広がったことで、その道のスペシャリストに勝てず、やる気を失う人もいます。

また、給料をもらいながら働くというプレッシャーでストレスを溜めてしまう人もいます。

5、職場の人間関係が不満

直属の上司との相性が悪かったり、相談できる上司や、同僚がいなかったりすると職場での居場所がなくなり、孤立してしまいます。

そうするとコミュニケーションが取れず、出勤することがどんどん辛くなっていき、離職に繋がるケースが増えます。

 

目的別にみる新人育成の方法

これまで見てきたような不満を溜めさせないためには、待遇はもちろんですがコミュニケーションはとても重要です。ここにいれば成長できるという気持ちは「やりがい」を生みますし、周囲に認められることも重要です。仕事の中で学び、認められていくという過程が新人教育ではとても大切になってくるのです。

では、そのためにはどのような新人研修の方法が望ましいのでしょうか。代表的な研修方法を見ていきましょう

 

1、eラーニング

インターネットを介した学習形態です。いつでも好きな時に学習ができ、若者には馴染みのある人も多いです。テキストよりも動画での学習が多い傾向にあります。

メリットとしては、個別で進捗を管理しやすいため、あまり進んでない人に個別に声をかけたりすることも出来ます。また、担当者が必ずどこかに行って何かをしないといけない訳ではなく、一度教材を作ってしまえば、後は進捗管理とサポートのみなので、コストが安く済みます。デメリットとしては、チームとしての一体感などを感じるのが難しくなります。

2、集合研修

研究施設などに合宿のような形で集まり、みんなで一緒に研修を行います。同僚や上司とのコミュニケーションが自然と生まれ、熱量も伝わります。eラーニングとは真逆のメリット、デメリットがあります。

3、OJT (オン・ザ・ジョブ・トレーニング)

実務をすることで仕事内容を学んでいく、というものです。

仕事をやりながらになるので担当者の負担は増えますが、賃金コストは低く抑えられます。また教える側も自分の仕事を再確認できるなどのメリットがあります。デメリットとしては、末端の作業の部分だけを学んでしまうことが多く、企業理念や向かうべき道などが見えないことが多いことです。また、忙しい現場に配属されてしまった場合、そもそも教えてくれる人がいなかったり、教育に関する意識が低かった場合、スキルが育たなかったりすることがあります。

 

以上の3つが主な方法となります。見てわかるように一長一短ありますので、併せて用いるなどの工夫が必要になりそうです。

 

研修で「やってはいけないこと」と対処法          

人間同士のぶつかり合いでもある「研修」わかってはいても「やってしまった。。。」なんてことはままあるものです。しかし、ポイントを抑えて、頭に入れておくことで防げることも多いのではないでしょうか?

ここではそれぞれの研修方法で、起こりがちな失敗をまとめました。

ぜひ参考にしてください。

 

1、eラーニング

一回作ればしばらく作らなくていいということは、教材を作る上でもプレッシャーです。いわゆる「やりすぎ」教育にならないように注意しなければなりません。ある程度の費用をかけて作るので、「詰め込みすぎ」や「丁寧すぎ」になる傾向があります。

研修用の教材を作る社員が、やりすぎなものを参考にして作った場合、往往にしてなりがちです。特に日本人は「大は小を兼ねる」といった考え方の人が多く、丁寧であればあるほどいいと思ってしまうので、注意が必要です。大事なことは多少繰り返してもいいのですが、足すだけでなく引くことも意識しましょう。

対処法:

eラーニングを使うのであれば、自社で作るのではなく、すでにあるものを使う、もしくは必要に応じてアレンジして使うことも考えて見ましょう。社内研修を行うことに特化した会社の中にはeラーニングに特化したところもあるので、相談すれば適切な研修用の教材を見繕ってくれるはずです。一つひとつに時間をかけて確認し、検討しましょう。

 

2、集合研修

たくさんの新人が一斉に集うと、まとめるのが大変ですので、軍隊のようにしてしまう失敗が起こりやすくなります。具体的には「そこ私語をするな!」など、学校と思ってしまいそうな現象が発生してしまうことです。こうすることで、新入社員は学生のままの気持ちで「自分ごと」として研修を捉えることができず、せっかくコストをかけて、やっていても徒労に終わる可能性があります。

対処法:

十分な人数を配置しましょう。コストがかかることを指摘しましたが、中途半端にしてしまうとそもそものところで伝えたいことがうまく伝わらなくなってしまいます。十分な人員を新入社員当てることで、細かくケアすることが可能になり、新人たちにも「必要とされている」ことがわかり、社内で居場所を作ることができます。

 

3、OJT

OJTを「見て覚えろ」というスタンスで行ってしまいがちです。日本は「技を盗む」というのが古来より後進に技術を教えるときに心得だったこともあり、こういった態度でOJTに望んでしまうかたが跡を絶ちません。行う側としても忙しい上に新人の教育まで任されたのではと、どうしても対応ががさつになってしまいがち。これでは新人もついてきません。

対処法:

まず、新人をどの方向に向かわすのか、など教育をする方の教育が必要です。もし自分たちもそうやって育てられたのであれば、その時を振り返り、足りなかったものや、よかった点などを考える時間を作るといいかと思います。またお互いの相性などもありますので、教育担当者を期を見て入れ替えるなどの工夫も有効です。担当者の変更は、知識の偏り防止にも効果があります。

新人研修は、自社のビジョンなども再確認できて一石二鳥になります。また教えることで、自分も学んでいる(復習している)という一番いいパターンになります。

 

まとめ

新人研修も様々な形があり、それぞれが一長一短なので、「eラーニング+OJT」や「集合研修+eラーニング」のように混ぜることが必要になってくると思います。その際、それぞれの失敗しがちな点などを整理してまとめておくことで、早期離職を防ぎ、会社に愛情を持って会社と付き合ってくれる社員ができると思います。

社員個人の成長が、会社に恩恵をもたらし、それが社員に還元されていき、より大きくなって帰ってくる。そんなエコシステムを目指して、まずはその第一歩である、新人研修の成功を願っております。

 

 

参考URL

図書印刷「研修担当者は必見!失敗しない新入社員研修のポイントは?」

BizHint「新入社員教育」