労災保険は職場や通勤途中の事故やケガの治療費を補償してくれるだけでなく、仕事が出来ない期間の『休業補償給付』、『休業給付』も支給してくれる制度です。この機会に、休業(補償)給付についてしっかり確認しておきましょう。

 

休業補償給付と休業給付

休業補償給付と、休業給付の違いは業務中に起きた事故やケガがもとで、療養が必要となった場合にもらえる給付金が休業補償給付。それに対して、通勤中に起きた事故やケガがもとで、療養が必要となった場合にもらえる給付金が休業給付です。

 

・休業(補償)給付を受け取る要件

業務中、通勤中の事故やケガがもとで、働くことができなくなったとき。そしてさらに会社から賃金等をもらっていない場合に、4日目から給付金が支給されます。

 

・気を付けよう! こんな時は支給が受けられない

<労災の認定が受けられない>

申請書を受け付けた労働基準監督署が事実関係を調べた結果、業務外の事故やケガであると判断されると、労災保険が受けられないときは、休業(補償)給付は支給されません。

<会社から賃金等を受け取っている場合>

休業(補償)給付を受けながら、有給、賃金等をもらっている場合も、休業(補償)給付は受けられません。

<時効が成立している場合>

休業(補償)給付には時効があります。療養のため労働することができない翌日から2年を経過すると請求権が消滅します。時効が成立した場合は、給付が受けられません。

 

申請するための手順と申請書記入の注意点

申請書するための手続きは、申請書を記入して労働基準監督署へそれを提出します。申請書の項目も煩雑で、各箇所も多いので注意が必要です。ここでは申請するときの注意点をあげてみました。

 

・申請書は休業補償給付と休業給付では違う

申請書は休業補償給付と休業給付では違うので気を付けましょう。業務中の災害で給付を受ける場合は『休業補償給付支給申請書 様式第8号 業務災害用』の用紙です。また通勤中の災害で給付を受ける場合は『休業給付支給申請書 様式第16号の6 通勤災害用』の用紙となります。用紙の左上に記載があるため、しっかり確認しましょう。

・申請書を記入する上での注意点

申請書には災害の原因や発生状況をこまかく記載する欄があります。この項目は労災かどうかを判断する上で、とても重要となるとこです。特に状況は順序を追って、詳細に、そしてわかりやすく書きましょう。そして忘れてはいけないのが、どのような場所で起こったのかです。また事故が起こった日と、病院の初診日が違うときは、なぜ異なるのかの理由もしっかり明記しておきましょう。

・会社で証明をもらう

申請書には事業主の証明が必要になってきます。事業主の代理として選任を受けていれば、支店長などの証明でも大丈夫です。また離職した場合は、2回目からは会社の証明は必要ないです。ただし離職と、療養の期間によっては証明が必要になる場合があるので気を付けましょう。

・医療機関で証明をもらう

診療担当者の証明が必要です。ここは医師だけでなく、歯科医師、柔道整復師などの証明でも大丈夫です。

・申請書を提出

請求書を所轄の労働基準監督署に提出すると、調査結果を待って支払決定通知が届きます。

 

休業(補償)の支給金額と支給期間について

仕事を休んでいる1日~3日目までは待期期間として、補償が受けられません。またもらえる金額、そして休業(補償)給付以外に受け取ることができる給付について、紹介します。

 

・休業(補償)支給額の計算方法

休業(補償)支給額は、3か月分の給料をもとに『給付基礎日額』を算定。その額のおおよそ6割が支給されます。

給付基礎日額の計算方法はこちらを参照(2月記事へリンク先不明)

・休業特別給付につてい

休業(補償)給付とは別に、特別支給金が支給されます。これは『給付基礎日額』のおおよそ2割です。したがって支給額は休業(補償)給付と休業特別給付をあわせて、『給付基礎日額』のおおよそ8割が1日分です。また休業特別給付は、『休業(補償)給付支給申請書』を提出すると、あわせて申請されるため特に申請書などを提出する必要はありません。

・支給期間について

休業補償給付と休業給付はどちらも支給期間は最長が1年6カ月です。その期間を過ぎてもまだ負傷や疾病が完治せず、障害の程度が傷病等級に該当する場合は『傷病(補償)年金』を受けることができます。

 

休業補償給付と併用してもらえる報酬はあるの?

休業(補償)給付とあわせてもらえる給付金は休業特別給付です。それ以外の給料や有休などが会社側から支払われていると、給付がもらえなくなってしまう可能性もあるので気をつけてください。

最後に休業(補償)給付と傷病補償年金は、いずれも「怪我や病気が治った時点」で給付が終了します。ただしこの『完治』とは、元通りになったということではなく、「これ以上治療しても回復が難しい」という状態を言うので気を付けましょう。

 

まとめ

休業補償給付と休業給付は、業務災害または通勤災害で働くことができなくなった時に、受給できるお金です。またそれと同時に、休業特別給付が受けられます。ただし受け取るためには、申請書の記載など煩雑な手続きが必要です。

 

<参照先>

厚生労働省「休業(補償)給付 傷病(補償)年金の請求手続」