現場の生産効率をあげるためには様々な「ムダ」を排除することが大事です。それを実践し効率をあげた代表的な改善にトヨタ自動車の「ムダ取り」があります。これを自分の現場に取り入れれば作業効率の改善に繋がるかもしれません。しかし簡単に「ムダ取り」といっても何をしたらいいものか分からないというひともいると思います。今回は「ムダ取り」のやり方や、そもそも「ムダ」とはなにか、一から考えていきましょう。

 

業務改善のための「ムダ取り」って何?

トヨタ自動車のムダ取りを例にあげ、ムダ取りについて詳しくみていきましょう。まずトヨタ自動車は、製造ラインの作業には3つで構成されていると考えました。生産をしている時間、生産を(仕事)を準備する時間、価値をうまない時間です。この「価値をうまない時間」をムダとして、価値をうまない時間や行動をなくそうというのが「ムダ取り」です。

そこでさらに効率をあげるために7つのムダがあると定義して、それを排除することに努めました。7つのムダとは、以下の7つです。

 

1)作りすぎ

必要以上に多く作ったり、必要なタイミングよりも早くやったりすることです。予備にするにしても数が多すぎればそれはムダとなります。

2)手待ち(待機)

業務のなかで次の仕事に進めず一時的にやることがない状態のことです。自分の仕事が早く終わっても前の作業が終わっておらず、自分まで回って来ず、どんどん時間が過ぎてしまう時間はムダと言えます。

3)運搬

付加価値を生まない移動やモノの運搬のことです。物資の運搬も、運ぶこと事態は価値がでないものなのでムダと判断でき、時間が短いほど良いということです。

4)加工

本来の仕事や商品の完成度とは関係のない不必要な作業のこと。シンプルでいい社内向け資料を時間をかけて凝ったデザインをしたり、使わないことまでデータ収集をしたりするムダです。

5)在庫

使う予定のない在庫のことです。商品の在庫だけでなく必要のない資料やデータなども指します。もう使わない資料はきっと誰のデスクの上やパソコンの中にも入っているムダです。

6)動作

作業に必要のない動作です。なにかを探す、調べるなど生産しない作業は価値を生まないので、なるべく工夫してこれらのムダな動作を省く必要があります。

7)不良

不良品を作ってしまうムダです。せっかくモノも時間もお金もかけて作ったのに、製品として価値がなければすべてがムダになってしまいます。作り直す時間も不良品の廃棄にかかる費用もかかってしまいます。

 

これらのムダが業務中にあるかどうか再度確認し、なくしていく、ということが「ムダ取り」の基本となります。例えば手待ちのムダをなくすには自分の割り当ての前の作業の進捗を把握しそれに合わせて行動したり、動作のムダをなくすために使用するものはいつも同じところに置いておく、など効率的に時間の短縮となることがないか確認し改善していくことが大事なのです。

 

ムダ取りのテクニック

ムダには大まかに7つの種類があることはわかりましたが、改めて自身の業務内容を考えてみたときにその作業等が「ムダであるか」どうか判断するのはなかなか難しいことがあります。それは習慣化していたり、すべてが必要でないけれど一部必要な行為だったりするのでどこを改善すると良いかがわからないなどということがあるからです。

そこでムダ取りの際に大切なのは「見える化」をすることです。目で見てわかるムダが出ればそれを排除することができますよね。例えば使わない資料や文房具などがわかりやすいでしょう。明らかに「ムダ」と見えればそれを取り除くことができます。それでは業務の作業や行動自体をどう見える化すればよいでしょうか。

 

・5S活動

ムダ取りに有効な方法として「5S活動」というものがあります。

整理、整頓、清掃、清潔、しつけの5つのSから始まる言葉を徹底し、ムダをなくしていくということです。例えば資料が整理されずただ積み重ねられているのでは必要な資料を探す時間が「ムダ」ですが、資料を整理することで必要なときにすぐに見つかれば効率が上がる、ということです。また清掃や清潔を心がけることで、ムダな在庫が場所を取っていることに気づいたり、使いやすい場所に設置しなおしたりということも見えてきます。

・なぜなぜ5回

ひとつの作業にムダがないかどうか調べるには、ひとつの作業について深く掘り下げていくことが必要になります。それが「なぜなぜ5回」です。ひとつの作業について「なぜ」上手くいかないかなど問いかけ、その答えに対し再度問いかけ…と5回繰り返すものです。

例えば、作業でしゃがんで行う動作があるとしてその「動作のムダ」をなくしたいと思った場合、

Q,なぜしゃがむのか

A,作業する箇所の高さが低いから

Q,なぜ椅子に座らないのか

A,椅子を置くスペースがないから

といったように、同じ問題について5回「なぜ」と問いかけ、深堀りし真のムダの原因を突き止めるやり方です。

・ECRS

さらに、行っている作業自体がムダかどうか測るのに有効なのが「改善の4原則(ECRS)」です。

Eliminate(排除)→Combine(結合)→Rearrenge(順序)→Simplify(簡素化)の順に検討していくことです。

その作業を排除できないか?なくすことができないなら他の作業と一緒にできないか?手順の変更は難しいか?作業をより簡単にできないか?と順番に考えていくことで、今よりも効率のいい作業方法を見つけやすくするのです。

 

ムダ取りの注意点

「ムダ取り」には生産性を向上させる素晴らしい効果がありますが、やみくもにやればいいというものでもありません。例えば運搬のムダを削るために、まとめて一度に搬送する量を増やし、運搬回数を減らしたとします。一見ムダ取りできているようですが、しかしこれは一度に届いた物量が多くなり、在庫の増加に繋がってしまいます。逆に抱えている在庫を減らそうとすれば、今度は運搬回数が多くなってしまうかもしれません。このようにひとつのムダを削っても他のムダが増えたりコストがかさんでしまうことがあるのです。そのためにはきちんと行程を管理し、すべてが最小公倍数で行えるよう計算せねばなりません。

また「ムダ取り」はまずは企業全体や大勢の関わる作業など、大きいところから始めると良いでしょう。個人や少人数だけの小さなところからはじめると効果がはっきりと確認できずムダがなくなっているのか分かりにくいのです。また大きなところのムダ取りをしたときに小さいところの内容が変わってしまうことがあります。

 

まとめ

トヨタ自動車は「ムダ取り」で生産効率を改善し成果をあげました。しかしただ真似するだけでは、自分の会社でもうまくいくとは限りません。しかしどんな企業、どんな業務にもムダが潜んでいることは確実でしょう。改めて自身の業務や作業工程を「見える化」し、自分達の企業に合ったムダ取りをしていきましょう。

 

参考資料・文献

コンサルソーシング「トヨタのムダとり改善とは~取り組みのポイントと効果を出す方法」

J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]「ビジネスQ&A」

プレジデントオンライン「『トヨタのムダとり』手待ち時間をなくす7つのステップ」

MEマネジメントサービス「目で見て見えるムダから改善する」

– MONOist – IT「工場で大人気の“ムダ取り”は本当に効果ある?」

大塚商会ERPナビ「第3回 製造業で実践している『価値を生まない動作の排除方法』とは」