現場には危険があり、リスクを抱えています。だからこそ管理する事業者は現場の安心、安全を担保するために様々な方法を考えています。今回はそんな現場のリスク対策として有効な方法の一つである、民間の保険について検討していきます。現場向けの保険にはどんな種類があるのか。自分たちの現場で活かせる保険はあるのかなど、具体的にみていきましょう。

 

建設現場のリスクとその種類

建設現場には色々な危険が潜んでいます。それを回避するために、民間の保険会社は色々な保険を用意しています。ここではまず、代表的なリスクと対応する保険を挙げてみましたので順番にみていきましょう。

 

・建築物や資材に対する保険のリスク

建築中の建物に対してかける保険として、一般的なものとして「建設工事保険」があります。現場の火災、風災被害、資材の盗難などを補償してくれ、現場で起こる突発的なリスクを補完してくれる保険です。

・現場以外の人や対物を補償する保険

現場で起きたミスや事故がもとで、現場で働いていない人や、現場の管理下にない物が破損したときに、賠償金を補填してくれる保険が「請負業者賠償責任保険」です。

・労災に上乗せした保険

労働者のケガは労災でほぼ補えますが、それ以上に賠償金を支払う事態が起きたとき、労災に上乗せして補償してくれる保険が「労働災害総合保険」です。職場環境を整えるのも、管理する事業者の責任です。この保険も加入しておきたい保険のひとつです。

 

現場のリスクに備える保険の内容と補償は?

現場向けの保険は、「建設工事保険」「請負業者賠償責任保険」「労働災害総合保険」が主なものとなります。ではこの3種類の保険について、もう少し詳しくみてみましょう。

 

・現場の建築物や資材に対する保険「建設工事保険」

現場を管理する事業者は、「建設工事保険」の加入は考えたほうがいいでしょう。なぜなら溶接の作業中、建物の一部を焼損したり、資材が盗難にあったりなど、工事現場で起こりそうな事故を補償してくれる保険だからです。ただし雹(ひょう)によるガラスの損傷は補償範囲なのに、霜や雪の被害は対象外となる保険会社もあるので注意しましょう。契約する時は、どこまで保険が適応になるのかを細かく確認しておくことが肝要です。

・事故で被害を被った人や物を補償する「請負業者賠償責任保険」

「請負業者賠償責任保険」は、たとえば資材が落下したときに、そこを通っていた人にケガを負わせた。またはクレーンが風で横転し停車中の自動車を破損させてしまったなどの事故で生じた賠償金を補償してくれる保険です。保険会社によっては、訴訟費用や弁護士費用などを負担してくれる商品もあります。

・労災では補えない部分をカバーする「労働災害総合保険」

現場で働く人の事故やケガは、労災でカバーできます。しかしその補償以上の賠償金が生じたときのために加入するのが「労働災害総合保険」です。この保険には「法定外補償保険」と「使用者賠償責任保険」の2つの保険が含まれています。

<法定外補償保険>

労働者が死亡、もしくは後遺症などの事故、ケガに遭ったとき、労災にさらに上乗せした金額を補償するために備えておく保険です。

<使用者賠償責任保険>

現場の事故等で労働者に対して損害賠償責任が生じたときに、それを補償してくれる保険です。

 

労災だけでは足りない補償金や、労働者にさらに手厚い補償をするために用意された「労働災害総合保険」。労働者が安心して働ける現場環境を整備する意味でも、管理事業者はこの保険の加入を検討しましょう。

 

注意しておきたい補償範囲と補償期間

現場の保険は、保険会社ごとに補償範囲、そして補償期間が決められているのが一般的です。とくに補償期間は、工事開始日から引渡し日までの間を細かく区切り、どこからどこまでが補償期間と明確に定めています。もし工事が伸びてしまった場合は、延長の手続きをしないと、その期間にケガや事故に遭った場合は補償を受けられません。

 

・保険の補償は大きく4つに分かれている

現場向けの保険は、工事着工の日、基礎工事(材料の搬入や足場の組み立て)、工事期間、受け渡しまで大きく4つに分けられています。そして「建設工事保険」が補償してくれるのは、一般的に工事期間です。それより前の足場を組んだりする工事や、資材の搬入期間は、また別の保険が用意されていることが多いです。さらに工事を完了したあとの現場の片付けなども「建設工事保険」の補償範囲ではないことがあります。契約をするときは、保険の内容はもちろんですが、補償範囲と補償期間についても確認しておきましょう。

・すべての期間を補償してくれる総括制度

また保険会社によっては、工事の内容や期間によってそれぞれ契約を結ぶのではなく、すべてをひっくるめて補償してくれる総括契約を用意している会社もあります。これを利用すれば、申し込みや契約などの事務手続きが簡素化でき、保険の手配漏れも防げ管理する事業者も、働く人も安心です。

 

「建設工事保険」につけられる特約

現場向け保険につけられる特約も、色々とあります。特に「建設工事保険」につけられる特約は種類も豊富です。水災(洪水、豪雨による土砂崩れなど)が起こりそうな現場は、「水災危険担保特約」をつけるといいでしょう。また「請負業者賠償責任保険」が特約としてつけられる「建設工事保険」もあります。特約で「請負業者賠償責任保険」をつければ、わざわざ「請負業者賠償責任保険」の契約をすることはありません。現場の状況や工事の内容によって備えておいた方がいい特約が違います。管理する事業者は、現場を把握し、必要な保険が漏れないように特約をつけましょう。

 

まとめ

現場を管理する事業者として「建設工事保険」は加入しておいた方がいいでしょう。さらに「請負業者賠償責任保険」も備えておきたいところですが、この保険は「建設工事保険」の特約として入ることもできます。そして労働者が安心して働けるように、労災の上乗せ保険「労働災害総合保険」もプラスしておくと、現場で起こるリスクは基本的には回避できます。

 

参考サイト

損保ジャパン日本興亜「建設工事保険のご案内」

AIU保険「AIUの建設工事保険」

あいおいニッセイ同和損保保険会社「建設工事保険」