2019年5月29日から31日まで東京ビッグサイト展示場にて、「総務・人事・経理ワールド2019」と銘打った出展数およそ800社にのぼる大規模展示会が開催されました。展示内容は、省エネ節電からオフィスの防災、セキュリティ、業務改善に働き方改革に向けたソリューション・製品が盛りだくさん。今回はそのなかから、従業者と現場の安全をテーマに最先端的のサービス、製品を厳選して紹介します。

 

セキュリティから健康管理まで⁉ 顔認証がつくる未来とは

今回の展示会では、傾向として安全・セキュリティ方面において入退室管理や文書や情報管理のIoT化やAI活用といった先端技術を利用したサービスが数多く見られました。特に顔認証による入退管理や情報管理技術が目立っていたように思います。

そんな中で特に目を引いたのが、AGC(旧旭硝子)が開発したコンピューターとディスプレイを内蔵した電子化した鏡「ミラリア(仮称)」です。担当の方の話によると「これまでも鏡をディスプレイにした製品はありましたが、どれも暗くて鏡としての反射率はよくなかった。当製品ではそれを大幅に改善できています」とのこと。

当製品の利用シーンは、出展ブースに「※マーケティング中」との表示があったように、現状では決まったものはありませんが、健康管理における利用が提案例として展示されていました。各種内蔵センサーによって心拍数や体温、血圧を測定するとともに、表情の変化などから体調を判断することで従業員の健康管理を行うというものです。従業員の体調が生産性に直結する業務であればあるほど、その利用価値は高そうです。

またセンサーやマイク、スピーカーなどの機能は追加で取り付け可能なので、他の要素を加えることもできます。それこそ入退管理と組み合わせて、従業員の健康管理を行うことも理論上は可能でしょう。

顔認証がIoTと繋がることで、セキュリティのみならず健康管理ほかさまざまな分野でのサービスへと近い未来つながっていくのだと感じさせられる展示でした。

AGCのコンピューター内蔵ディスプレイ鏡「ミラリア(仮称)」

 

ドライバー&車両をクラウド管理して業務負担を減らす

日々の業務で自動車を使うこと時間が多い業界ならば、車両管理を明確にすることで業務の効率化から従業者の体調管理まで把握していくことが理論上はできます。一方で、管理者が従業員のドライブレコーダーを全てチェックすることは難しく、日報などの報告によって状況を把握しているのが実情でしょう。そんな車両管理の悩みを解決するためのサービスが展示されていました。

(株)スマートドライブの法人向けクラウド車両管理サービス『SmartDrive Fleet』は、GPSによってリアルタイムで車両状況が把握できることをはじめ、走行距離や走行状況、事故対策につながる走行データを集積管理できるサービスです。導入は専用デバイスを車のソケットに差し込むだけでよく、以降データが自動送信され、蓄積されていきます。スマホアプリやPCからリアルタイムで情報を確認できます。

安全対策という点で驚いたのは、G-Force安全運転診断でドライバーごとの運転結果を「ハンドリング」、「加速」、「減速」といった項目ごとにスコア化して表示し、運転の癖や危険度をデータで明確にできる点です。はっきりした危険度という数値を示すことで業務リスクの回避に加えて、運転者の安全を守ることにもつながります。スコアが下がったポイントを瞬時に表示し、グーグルマップとリンクさせることで、「急カーブがある」「道幅が狭くなる」など、より具体的なデータをもとに危険度が上がった原因を把握できるのも素晴らしい点です。

また、日報の自動記録、乗務記録のペーパーレス化、車検や保険などの一元管理なども行えるため、管理者、従業者ともに業務軽減が見込めるサービスになっているのではないでしょうか。

(株)スマートドライブの法人向けクラウド車両管理サービス『SmartDrive Fleet』

 

「いざ」というとき役立つグッズ

ここまではIoTおよびクラウドを使った安全確保、事故予防といったサービスを取り上げましたが、事故や災害が実際にあった場合には、より直接的なグッズや製品といったものが求められます。

防災用品を企画・製造しているファシル(株)が販売する、12点の緊急用グッズが詰まった『ボウサイブロック』は、昨年、グッドデザイン賞や防災製品大賞2018 日刊工業新聞賞といった賞を受賞した人気製品です。水や非常食をはじめ、簡易トイレ、雨具にマスク、照明にカイロと緊急時に必須となるアイテムが詰まっています。特にグッドデザイン賞受賞しただけあってデザインが洗練されています。自分で使うのみならず、誰かに使ってもらえるよう贈るのもいいかもしれません。

また、同社の『マイ防災セット』はポイントを購入して、中身のアイテムを選べるタイプの製品です。想定される利用シーンが多岐にわたる場合、従業者ひとり一人が中身をカスタマイズできるのは受け取る側としても嬉しいですし、贈る側も予算に合わせられるメリットがあります。

最後に会場でひときわ異彩を放っていたグッズ、ミドリ安全(株)が販売する折りたたみヘルメット『Flat met』を紹介。こちらは文字通り、折りたためるヘルメットでたたむと幅3.3㎝にまで薄くなり、カバンや引き出しなどに簡単に収納できます。強度に関しても、飛来・落下物用として国家検定に合格しています。実際にかぶってみると、一般的なヘルメットと比べればさすがにフィット感や装着感は劣るものの、かといって悪くないそんな付け心地。急にヘルメットを使う必要があるような緊急時には便利に使えそうです。

ミドリ安全(株)の『Flat met』

 

まとめ

今回の展示会を訪れて感じたことは、IoTやAIの活用によって、これまでのような「効率化だけ」だったり、「管理だけ」だったりを目的とするサービスではなく、一つのことで色々な物事が改善されていくようなサービスやソリューションが増えているのだということでした。今後、どのような方向に現場が変化していくのかは予測がつきませんが、より快適な現場を実現するために、そのようなサービスは今後増えていくのだろうと感じさせられる、そんな展示会でした。

取材・文 テルイコウスケ