生産性をあげるために、何か得策はないかなと思ったら、まずは現場の「見える化」を考えてみましょう。現場の見通しをよくすることで、今、生産性の向上を阻んでいる問題が浮かびあがってきます。ここでは現場の「見える化」について説明します。
なぜ現場には見える化が必要なのか
現場を管理する者にとって生産性の向上は、頭を悩ませるところです。作業工程のどこにも無駄はないと思っていても、実は見えないところに効率の悪い作業があるかもしれません。その問題点を見つける手段として有効なのが、見える化です。だから今より成果をあげたいと思っている現場は、見える化に着手することが得策なのです。
・「見える化」することにより現場の問題が見えてくる
たとえば現場で共有して使う備品。その置き場はざっくり決まってはいるけれど、使い終わった人は自分の感覚で何気なく置いてしまう。だから定位置が決まっているようで、本当は決まっていない。そのため次に使う人は、その近辺を探さなければいけない工程が生じます。その時間こそが無駄です。もし定位置を決め、全員がそれを認識していれば、探す時間は削減できます。これも現場を見える化した結果、発見された問題です。
・共有しなければ、効率化にはならない
上の例でもわかるように、見える化して問題が見つかったとしても、生産性の向上にはつながりません。見える化してわかった事実は、備品の定位置がないということ。だからその置き場を作り、それを全員に周知しなければこのしくみは稼働しません。
「見える化」の目的
見える化をしたことによって生産性の向上に成功したのが自動車メーカーの『トヨタ』です。トヨタは見える化で無駄を徹底的に削減。在庫を極力もたないかわりに、受注から納品までのリードタイムを短縮する努力をして生産性を向上させました。ここからいえることは、見える化の目的は、快適な職場を作りと、生産性を向上させることです。
・生産性の向上につながる見える化とは
では生産性の向上につながる見える化とはどういうことでしょう。ここでは『無駄のカット』と『従業員の意識改革』について考えてみたいと思います。
・無駄のカット
無駄を徹底的にカットすることで、どこを見える化すればいいのかが見えてきます。まずは整理整頓をしみましょう。さきほど紹介した備品の置き場がなかったことも、職場を片付けた結果、見えてきた無駄です。
・従業員の意識改革
見える化は管理職だけが一生懸命になっても捗りません。一番は現場で働く人たちの意識改革です。そこで現場にパソコンやタブレットの導入をおすすめします。その端末は現場の誰もが見ることが可能。そこを覗けば材料の在庫量、仕掛品の現在の状況、納品日などが一目でわかる。現在の状況を共有することで、働く一人一人がいま、現場でなにをやるべきかがわかります。すると現場での無駄な動きも軽減することが可能になります。従業員の意識改革を促せば、さらに生産性の向上が望めます。
・現場で働く人たちの体調管理
作業する上で、一番大きな損失は熟練した従業員を失うことです。ベテランの労働者は、知らず知らずのうちにオーバーワークになることが多く、それが原因で病気になってしまうことがあります。スキルが高い労働者の不在は、生産性の向上に大きく影響します。だからこそ従業員の体調管理はとても大切です。
見える化のアプローチ方法と注意点
現場において見える化がなぜ必要なのかは説明しましたが、実際に見える化に着手する方法を紹介します。そしてそのときに注意しておくといい点もあわせてみてみましょう。
・人、モノ、管理面からアプローチしよう
現場を見える化しようと思ったら、まずは人、モノ、管理面にわけて考えるといいでしょう。そしてそれぞれのカテゴリーを、一つずつ丁寧に整理すると見える化が効率よく行えます。
・見える化と見せる化は違う
見える化を始めると、見せることにばかりに一生懸命になり、それで満足してしまう傾向があります。そして見える化を行っているつもりが、見せる化になってしまい本末転倒な結果を招く事態に陥ることもあります。見える化と見せる化は違うということを肝に銘じて作業を始めましょう。
見える化が生産性の向上につながった例
さまざまな企業や現場でも、実際に見える化に取り組んでいるところは多数あります。ここではほかの現場がどのように見える化を行っているのかを、具体的にみていきたいと思います。
・見える化を唱えたトヨタ式
トヨタでは不良品を出さないために、ラインで不良品がでたときはラインを止めて「なぜここのような不良品ができたか?」を全員で考えます。そしてその結果を、現場で働くすべての人たちと共有します。ラインを止めるのは非効率のように思えますが、問題が見つかった時点でラインを稼働し続けても、不良品を検品する手間が増えるだけです。また不良品が増えればその製品に使った材料や、労働者の時間が無駄になります。トラブルが起きたら、その時点で見える化して解決する。これがトヨタ式の理念のひとつです。
・段差を周知して安全な現場づくり
トヨタ式ほど大きな見える化ではありませんが、日常の現場で見える化をして安全に配慮している例をみてみましょう。現場にある小さな段差。そこに黄色と黒色のテープを貼り、注意喚起することにより、働く人に危険を周知することを行っている現場があります。些細なことですが、つい小さな段差を見逃してしまい、そこでケガをしたら働き手を失うわけですから大きな損出につながります。こういう工夫も見える化といえます。
火器使用中などのポスターを貼り注意を喚起する
火器を使用している現場では「火気使用中」などのポスターを目につくところに貼り、周囲に注意を喚起しています。またそれと同時に消火器が置いてある場所の地図を貼り、事故が起きたときは消火器をすぐに取りにいけるような工夫をしています。現場の事故は、大惨事になる可能性もあります。事故の被害を最小限に抑える見える化も大切です。
まとめ
現場における『見える化』は、それをすることにより生産性の向上を図る手段です。しかし見える化をしただけで終わっては、成果はあがりません。そこから浮かび上がった問題と真摯に取り組み、解決することが大切なのです。
参考文献URL
ビジネス+IT『トヨタ生産方式はまずこれだけ押さえる!2本の柱と4つの仕組み』
神奈川労働局『誰もが安心して健康に働くことができる社会を実現するために! 建設業「安全の見える化」事例集』
ビジネス+IT『「見える化」が「見せる化」になっていないか? トヨタ式が理解できる5つの活用例』
産創館『生産現場における「見える化」の具体的な取り組み手順と考え方』
最近のコメント