現場にマネジメントは関係ないと思っていませんか。実は大勢の人が働く現場こそ、マネジメントが求められます。しかし間違ったマネジメントは、現場の機能は停止します。そこでドラッカーの「マネジメント」を参考に、現場に有効なマネジメントを紹介します。

 

ピーター・F・ドラッカーとは

「マネジメントの父」と言われているピーター・F・ドラッカー。1973年に出版された『マネジメント』が大ヒットし、世界中の人に愛読されました。日本では2001年にダイヤモンド社より『マネジメント(エッセンシャル版)』が発刊。10年間で100万部を超えるベストセラーとなりました。マネジメントといわればドラッカーと多くの人に認識されたのは、この本が始まりです。

 

・ドラッカーが定義しているマネジメントとは

ドラッカーが定義している『マネジメント』は大きく分けて3つの要素で構成されています。“マネジメントの使命”“マネジメントの方法”“マネジメントの戦略”です。ドラッカーはマネジメントの手法だけでなく、なぜマネジメントを行うのか? をきちんと明記しているので、多くの人から共感を呼んでいます。

 

マネジメントの役割

そもそもマネジメントの意味は “組織が成果をあげるための、仕組みやツール”です。そしてマネジメントに対して、責任を持って行う人をマネージャーと呼びます。そして組織を機能させるためにマネジメントが存在します。そんなマネジメントの役割について、紹介します。

 

<マネジメントの役割>

  • 組織が果たすべきミッションを達成する
  • 組織で働く人たちを活かす
  • 社会に貢献する

 

言葉にすると難しそうですが、ドラッカーのマネジメントに対する考え方はとてもシンプルです。では3つの役割、1つ1つを具体的にみてみましょう。

 

・組織が果たすべきミッションを達成する

たとえば生産性の向上を目標に掲げた現場があったとします。そのとき、そこで働く人たちそれぞれが自分流のやり方で仕事を行ったら、思うような成果がでないことは容易に予測がつきます。そこにマネージャーや管理者が現場を統率し“今月のライン稼働率120%を目指しましょう”などの目標を示していきます。この目標がマネジメントなのです。ミッションをクリアするための仕組みを作ります。

 

・組織で働く人たちを活かす

組織の目標をいくら掲げても、そこで働く人たちが動いてくれないとミッションのクリアは難しいでしょう。労働者のモチベーションを上げることも、マネジメントには必要です。仕事を通じて労働者が求めるものは賃金なのか地位の向上なのかを把握し、それをリターンできる仕組みを考えることもマネジメントです。

 

・社会に貢献する

そして最後に生産性を向上させた結果、その製品が社会に貢献したり、収益をあげた企業が社会問題を解決したりする仕組みが作れればマネジメントは成功です。組織が動くことにより企業、労働者、社会それぞれが幸せになるような仕組みを作る、それがマネジメントの使命です。

 

・現場で使えるマネジメントとは

現場を管理する立場になったとき、組織が機能するためのマネジメントとして最初に何から着手すればいいのかを考えてみましょう。

 

目標を設定する

組織の全員に向けて目標を設定します。そこからまた、それを実現させるためにはどうしたらいいのか? を考え、もう少し具体的な目標を作ります。その目標は一つとは限りません。複数になることもあれば、長期のもの、短期ですぐに結果が出るものなど色々です。目標はあくまでミッションをクリアするための手段です。そこを忘れると、組織が進むべきゴールを見失うこともあるので気をつけましょう。

 

・コミュニケーションを密にする

目標を決めたなら、それを組織で共有します。ゴールを再確認し、それを実現させるために、現場では足りないものは何なのか? 現場をどう改善すればその目標は実現できるのか? などをヒアリングしていくことが大切な作業になります。

 

・問題が発生したら解決をする

組織のどこかで問題やトラブルが発生したら、そのままにしておくのは管理者として一番やってはいけないことです。その問題を分析し、そこにかかわっている人たちから丁寧にヒアリングし、問題の解決に乗り出します。そのあと、二度と同じようなことが起こらないよう、根底にある問題の本質の改善に尽力を注ぐことが求められます。

 

間違ったマネジメントは、組織の機能を失う

マネージャーは組織で大きな力を持つため、マネジメントを間違うと組織は機能を失うだけでなく、最悪企業の倒産まで追い込む事態を招きます。そんなことにならないよう、ここでは間違ったマネジメントの手法を紹介します。

 

・独裁者にはならない

マネージャーから下へ命令するしかない一方通行の仕組みは労働者から拒否され破綻がきます。成果を急ぐあまり無理な生産量の数字を打ち出し、それが出来なかったら首などというマネジメントを行うと、組織は機能しません。近頃ではパワーハラスメントとして訴えられるケースもあります。

 

・部下とのほどよい距離を保つ

マネージャーは多くの部下を持っています。その部下は家来ではありません。あくまで目標を実現させるために一緒に頑張る仲間です。その部下のモチベーションをあげることもマネージャーの腕の見せ所です。部下の声にしっかりと耳を傾け、部下が仕事を通じて得たい自己実現は何なのかを知っておくこともマネジメントを成功させるためには必要なことです。

 

・真摯な態度を忘れずに

ただし部下の声を聞くことは大切ですが、それがすべてになってしまうとマネジメントは失敗です。あくまでマネージャーは部下の成果に対してのみ評価をする。そこまでのプロセスがどんなに困難だったとしても、そこを加味して評価すると、判断基準が崩れてしまいます。マネージャーはいつも真摯な態度に徹する。そして目の前にある結果だけをみて評価することが使命です。

 

・リーダーシップとマネジメントは違う

部下に慕われ頼りがいのあるボスは、統率力がある優れたリーダーとして評価されます。しかしマネージャーにその要素は必要ありません。いつも冷静に組織をみて、客観的な立場に立ち、瞬時に適切な判断をするのが有能なマネージャーです。マネージャーとリーダーは違うように、リーダーシップとマネジメントは別の物です。

 

まとめ

目標に向かい、組織をいかに効率よく動かしていくかを考えるのがマネジメントです。それを提唱したドラッカーの『マネジメント』。その理論は、現場が抱える問題の解決へのヒントが詰まっています。正しいマネジメントを理解しその手法を用いれば、今よりも大きな成果が期待できます。

 

参考文献URL

LEADERSHI 識学式リーダーシップ塾『ドラッカーのマネジメント論!必要な能力5つ』

BIZ HINT『マネジメント』

組織づくりベース『マネジメントとは?定義と役割・今後求められる3つのポイントを徹底解説』

ドラッカー研究『マネジメントの3つの役割』

エクゼクティブ『なぜ経営現場でドラッカーを実践できないのか――ドラッカーの哲学』