暑い季節になると熱中症対策が重要です。一方で屋内では熱中症にならないと思い込んでいるひとも少なくないのではないでしょうか。実は屋内でも油断ならないのが熱中症です。今回は屋内での熱中症の危険性や予防法を確認して夏に備えましょう。

 

熱中症は屋内でも起きている!

梅雨の季節を過ぎ、高温多湿の日が多くなってきました。毎年梅雨明け後は熱中症の患者が急増する時期です。東京消防庁管内によると平成25年から29年までの5年間の6月から9月に熱中症で救急搬送した人数は、20,593人としています。月別では気温の高い7、8月の発生が多いですが、梅雨で湿気の高くなる6月や、残暑の厳しい9月にも熱中症は少なくない人数で発生し救急搬送されています。

また熱中症の発生場所の約4割が住宅内でした。特に高齢者の方が多く、エアコンを体に悪いと我慢してしまったり、水分補給をせずにいたのが原因ということがとても多いという報告があります。

もちろん熱中症はお年寄りばかり発生するものではありません。からだの丈夫な若者も多く発生しています。熱中症で搬送された4,040人のうち発生に至る行動等が明らかに判明したものが1,298人で、このうち一番多いのが583人、工事や作業に起因するものでした。約45%と約半数近くを占めています。

時間帯としては日中の10時台から17時台は300人以上と多く、最も多いのは13時台で460人。12時台と15時台も400人を越えていました。

 

参考:東京消防庁 熱中症に注意!

 

*仮に熱中症にかからなければ良いのかというと、そうではありません。暑さそのものが仕事の効率を下げるというデータも出ていますのであわせてご確認ください。

快適に勤務するために 工場・倉庫内など屋内での熱中症予防対策

*また、同じ屋内でも事務仕事なので「自分には関係ない」と考えてしまうのも危険です。そんな方は、屋内での作業で気をつけておきたいことをまとめていますので、ご確認ください。

熱中症患者の半数は室内で発症? 油断禁物、室内での熱中症対策

 

屋内で熱中症になってしまう理由

では屋内のどういう場所やどういうときに熱中症になりやすいのでしょうか。

職場での熱中症で建設業や製造業が多く発生する理由は、第一に一般の環境より高温多湿の場所で作業を行うことがあげられます。

屋内で熱中症が起こりやすい場所としては工事現場や倉庫、体育館、家庭の風呂場などがよく例に出されます。オフィスでも気密性の高いビルにあり、パソコンや複合機など熱を発するものの近くや窓からの日光を浴びる場所に長時間いる場合は注意が必要です。窓が開いていたり半屋外の場でも、無風状態である場合、30分以上いれば屋内でも熱中症になることがあります。

熱中症は、気温が高くなくとも湿度が高いと発生のリスクが上がります。高温多湿で風が弱く、熱を発生するものがある環境では汗が蒸発せずからだに熱がこもってしまい、その熱を発散することができず熱中症が発生しやすくなるのです。特に室温が30℃以上で湿度60%を越えると熱中症の発生リスクが急激に高まると言われています。しかし工事現場や倉庫などは空調機器がないケースや、あっても敷地が広いため空調がききづらいことが原因にあげられます。

また、働くひとの体調に合わせて個人で休憩をとりにくいことや、運動ほどではないものの長時間身体を動かすことも原因のひとつです。さらに安全のため長袖で通気性の悪い衣服や防護服を着用しての作業になり衣服での調節がしづらい場合は、熱中症になるリスクはさらに高まるので、より注意が必要です。

熱中症になりやすい典型的な作業例としては、作業開始の初日に休憩をとらず長時間にわたり連続して行う作業です。まだ慣れていない作業は身体への負荷が大きく汗をかきやすいですが、通気性のない制服での作業では汗が蒸発せず体温を下げることができず、熱中症にかかりやすくなります。

 

屋内作業で行うべき熱中症対策

ではどうすれば熱中症を防ぐことができるでしょうか。

ひとつは職場環境の改善です。空調の整備や、長時間での作業の見直しなどを行いましょう。解体作業や毎回現場が違う建築業など、簡単に改善が難しい職場もあります。その場合はこまめに水分補給や休憩がとれるようにしましょう。

また熱中症リスクの指数をあらわす「WBGT(暑さ指数)」の測定を行うことが大事です。WBGTとはアメリカで開発された温度、湿度、輻射熱の3要素を計測し熱中症になりやすい危険域を計算した指標です。値は「℃」の単位で示され、WBGTで28℃以上になると熱中症のリスクが高まると言われています。計測器が危険域を示したら無理に作業を継続せず休憩をとったり、水分補給をより気を付けましょう。状況によって危険域は若干変化しますが、環境庁の「熱中症予防情報サイト」から予測値を入手することが可能です。またWBGT計測器は一般でも販売されており、状況に応じて危険域のアラームを鳴らしてくれるものなどもあるので、作業に取り入れることが可能です。

また個々人の日頃の体調管理も大事です。健康診断は必ず受診し、しっかり睡眠時間を取って休養することが大事です。汗が大量に出る場合はしっかり汗を拭き、休憩ごとに定期的に水分と塩分を摂取し熱中症対策を行いましょう。

 

上記は基本的な対策ですが、業務上どうしても長時間高温多湿の場所での作業が発生することもあります。その際に利用するとよいとされるのが、身体を冷やすアイテムです。

冷却シートを額や首筋など太い血管の流れている部分に張ると、体温を冷やす効果があります。同じように冷却スカーフや冷感タオルなど、水に濡らして軽く絞って振るとひんやりと冷たくなるものを首もとに巻いて作業するなどもよいでしょう。

着るものとして、アンダーウェアで冷感素材を使ったものや、シャツの上からスプレーすると着ている間の涼感や消臭効果のある冷却スプレーなどもあります。さらに作業中に着るのにおすすめなのは、空調服。ファンがついているアウターウェアを着ることで、服と身体の間に風を送り込み身体を冷ますというものです。この空調服は、まさに長時間の作業を行う現場を想定し開発されたので、屋内の熱中症対策には一番の効果を発揮するでしょう。

 

まとめ

熱中症は屋外でおこるもの、という認識が強いですが、屋内でも熱中症になるリスクをきちんと理解しておくことが大切です。また基本的な体調管理や水分補給などは屋内、屋外の作業問わず行うべきものです。屋内だからといって油断せず、熱中症対策をしっかりととりましょう。

 

<参考>

BuzzFeed「全国で猛暑に 熱中症、屋内にいても安心してはいけません」

東京都医師会「熱中症関連」

マイナビニュース「室内でも熱中症になるって本当!? 熱中症と水分補給の基礎知識」

熱中症ゼロへ「熱中症の予防・対策 | 熱中症について学ぼう」

熱中症予防・対策にひと涼み「働いている時の注意」

ソニー損保「屋内にいても要注意!熱中症の予防方法と対策」