2018年に省エネ法が改正され、より省エネを意識して業務に取り組むべき時代の流れになってきています。しかし、必要だと思っていてもうまく取り組めていなかったり、そもそも法律の内容も難しく理解できていなかったりすることが多いのも実際のところ。今回は、企業における省エネへの取り組み内容を詳しく見ていきつつ、省エネに取り組むべき理由を確認していきたいと思います。

 

中小事業者における省エネの現状

世界的な温室効果ガスの排出量増加を背景に、事業者に対し国に排出量を報告することを義務付けたのが、「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)」と「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」の2つの法律です。

省エネ法は、オイルショックをきっかけに省エネ対策を強化、促進するために1979年に制定された法律です。当初は工場と非住宅建造物が対象でしたが、時代の変化にあわせ規制対象が拡大され、現在は工場、輸送、建築物、機械器具、電気事業の5分野になりました。それぞれの分野で、効率的なエネルギー利用と節電に関する義務が決められており、違反者には指導や命令、罰金などの罰則がもうけられています。

対象となる事業者は、本社や工場、支店営業所などあわせた企業全体の年間エネルギー使用量が1500kLの特定事業者です。義務内容は原油換算エネルギー使用量、判断基準の厳守状況などを定期報告書として作成し、提出すること。中長期計画書やエネルギー管理統括者の専任届等も提出しなくてはなりません。

温対法は、京都議定書で策定された地球温暖化対策を推進する目的で1998年に施行されました。 省エネ法と同様、年間の原油換算エネルギー使用量合計が1500kL以上の温室効果ガスを排出する特定事業者はガスの排出量を算定し国に報告することを義務付けられています。国はデータを集計し公表します。

エネルギー期限CO2のほか、5.5ガスとして温室効果ガスが指定されており、メタンや一酸化二窒素などのこれらもCO2換算し3000t以上であれば報告する義務があります。

これらの法律はどちらも制定から20年以上経ちますが、中小企業ではこの法律を知らない人が多いのも現状です。理由のひとつとして、対象が1500kL以上という大規模事業者が中心であるという点です。中小企業では年間を通しても排出量が100kLに至らないところが多く、エネルギー使用状況の報告義務もありません。そのためこの法律は関係ないと無視されていることも多いようです。

ただ一社あたりのエネルギー使用量としては少なくとも、中小企業としては日本各地に存在しているため事業者数としては圧倒的な数で、それらの合計として見たときのエネルギー使用量はけして無視できるものではありません。さらに、省エネはコスト削減に直結しています。そのため熱心に省エネに取り組んでいる中小事業者もおり、コストとエネルギー削減を実現しているところもあります。

しかし、全般的には技術や管理面での知識が不足していたり、省エネ設備の運用までなかなか至らなかったりするケースが多いのが現状です。また、一件あたりのエネルギー使用量が少ないためビジネス的に省エネ診断やソリューション提案などは成り立たず、提案や促進を促すには国や自治体の支援も必要となっています。省エネルギーセンターによる報告書『省エネルギーの現状と課題』においても、「省エネという雑巾は決して乾いていない状況であり、まだまだ改善の余地がある」と指摘しています。さらにしっかりと取り組めばエネルギー使用量も押さえられるだけでなく各事業所のコストダウンにもつながります。

 

現場によって違う省エネのポイントを知る方法

省エネに取り組むためには、まず自分の事業所がどれだけのエネルギーを使っているのかを知らなければなりません。その上で、どのような省エネ方法が必要か検討することが大事です。設備の入れ換えなどが必要な場合、コストもかかりますがどの設備が高効率かは事業所ごとに違うからです。

まず省エネに必要な確認項目を洗いだし、エネルギーが使用されている工程や場所を確認します。次に確認項目に関する使用量や料金単価やマニュアルなどのデータを集め、現場調査を行います。設備の運転状況を確認しエネルギー使用量を「見える化」するのです。

収集したデータからエネルギーの漏れや過剰使用部分を発見し、最適な省エネ対策を検討します。どのエネルギーをどのような方法で抑えるのかを検討するのです。運用の改善で行えることか、設備投資が必要かなどをメリットデメリット、費用対効果などを考慮し決定します。

しかし、これだけのことを自分たちで行おうとすると詳しく知らないことを行うことになりますし、それこそコストも時間もかかり大変です。

 

方法1:専門家に聞く

そんな悩みをまず聞いてくれるところが「省エネセンター」です。エネルギー需要が高まったことを背景に、省エネ体制をバックアップするために設立された団体です。正式名称は「一般財団法人 省エネルギーセンター」といって営利目的の団体ではないため、設備のセールスもありません。中立的な観点でノウハウを提供してもらうことができます。

省エネセンターのサービスの中でも便利なのが、「省エネ診断」です。

省エネ・節電ポータル

専門家を現地に派遣してもらえ、施設で使用しているエネルギーについて診断をしてくれるサービスです。診断内容は報告書にまとめられ、アドバイスも受けることができます。

 

方法2:自分で調べる

自分で調べるのにも意外と簡単な方法があります。省エネ分析支援ソフトを利用することです。

例えばオムロンが提供するソフトウェア「Dr.ECO」は計測データをパソコンに取り込み必要な設定を行うだけでグラフとして表示され簡単にエネルギーの無駄を見つけることが可能となります。

利用しているなかで変化するエネルギーと固定エネルギーをみつけ、それぞれに無駄がないか探すことが可能です。他の設備のエネルギーと比較して、どこか突出してエネルギーを使っているなどがないか探して無駄をみつけることもできます。やっていることは原価計算の方法と同じようなことですね。

 

省エネで得られるメリット

では省エネをすると具体的にどのようなメリットが得られるでしょうか。

 

・コスト削減

省エネを実施するには設備導入など初期投資がかかるので一見コスト増になり負担にも思えますが、省エネ性能に優れた最新設備を導入することでエネルギー消費量が削減されるため、ランニングコストが低下します。長く企業活動を続けていくためにはランニングコストを抑えることがなにより重要です。また運用を見直すことで、設備の長寿命化にも繋がります。

 

・最新設備の導入

最新の設備に入れ替えることで、より効率よく業務が進められます。稼働時間がいままでより短縮されたり、作業工程が楽になったり、これまでより多く生産が可能になるなど、スムーズに業務が進みます。

 

・補助金

経済産業省や地方自治体など、省エネを実施する企業向けに様々な補助金や助成金の支援制度があります。補助金を利用して省エネ投資を行えば、初期投資が軽減され、設備導入がしやすくなるだけではなく投資回収年数の短縮にも繋がります。

 

・ブランディング

国が進めている省エネに参加する、ということは企業のイメージアップにも繋がります。社会に貢献することで株主や付き合いのある企業からもプラスの評価を得られるでしょう。また省エネ対策の無理な事業計画もなくなるため新しい事業へと目を向けることができます。

 

まとめ

省エネと言われてもどこから手をつけていいかわからないという事業者は少なくないと思います。省エネをうまく取り込むことができればエネルギー効率が良いだけでなく、コストや運用面の負担も削減できます。まずは自分たちがどのくらいエネルギーを使用しているか把握し、どこかに無駄がないか探すところから始めてみましょう。

 

<参考>

省エネ工場「エネルギーの換算方法」

省エネルギーセンター「省エネルギーの現状と課題」

省エネ工場「省エネの流れ」

コストダウンナビ「工場をもっと簡単に省エネ!すぐできる生産性アップのご提案」

オムロン株式会社『「省エネ分析支援ソフト Dr.ECO(ドクターエコ)」の発売について』

省エネ工場「省エネのメリット」