日々の疲れがうまく取れないとき、栄養ドリンクに頼ることも多いかと思います。しかしながら、いつも飲んでいるその栄養ドリンクは本当に疲れを取ってくれているのでしょうか? パッケージに成分が色々と書いてあるのを見ると、なんとなく効きそうな感じがしますが、その成分の実際の効き目は証明されているのでしょうか。今回は栄養ドリンクとその効用について考えてみましょう。

 

栄養ドリンク(ドリンク剤)の種類

栄養ドリンク、と一言にいってもその種類は様々です。まずは種類別に栄養ドリンクをみていきましょう。

 

・医薬品

医薬品に分類される栄養ドリンクは、医薬品の中では一般用医薬品に分類されています。そのため、医師の処方箋を必要とする「医療用医薬品」とは違い「処方箋を必要とせずに購入できる薬」というような扱いになります。効能・効果・副作用などの臨床データを国が承認しているものになりますので、配合されている成分の「滋養強壮」や「肉体疲労時の栄養補給」などの効用について表示することができます。国の保証付きということもあり効用の信頼性は高いといえます。

 

・医薬部外品

医薬部外品に分類されている栄養ドリンク剤は、国の規制緩和の一環として「医薬品と化粧品の中間的なもの」としてコンビニなどの小売店でも販売することを許可されているものです。医薬品に分類されるドリンク剤と同様に効能・効果を表示することができます。効果は医薬品よりも緩やかで安全性が高いと考えられています。ロイヤルゼリーなどの貴重な成分を多く配合したものも販売されており、高価な場合も多いです。

 

・清涼飲料水

清涼飲料水とは、アルコール分1%未満で味や香りがある飲料水のことです。清涼飲料水に分類されている栄養ドリンクは、臨床データによる裏付けがないため、効能を表示することを許可されていません。様々な成分が含まれていることで効能がありそうに感じますが、実際のところは効果を裏付けるデータがないことを覚えておきましょう。『エナジードリンク』とパッケージ等に表記されているものが多数ありますが、成分などに明確な定義は無いようです。ガラナなどの植物成分エキス・炭酸・香料などを加えることで爽やかな飲み心地を演出しています。

 

・特定保健用食品

臨床データに基づいて審査を受け、効能効果を表示することを認可された食品が「特定保健用食品」です。「トクホ」と呼ばれ、健康を気にする人にとっては信頼できる飲料として馴染み深いでしょう。いくつかの炭酸飲料やお茶などが「トクホ」に認定されており、脂肪の吸収を抑えるような効果が認められているものが多いです。

 

・乳酸菌飲料

乳酸菌飲料も、広義では体の調子を整える栄養ドリンクの一種といえるでしょう。乳酸菌とは、炭水化物などの糖を消費して乳酸をつくる細菌の総称です。腸内に住む細菌のバランスを乳酸菌が整えてくれることにより、整腸作用はもちろん、免疫機能の向上や中性脂肪・血中コレステロール値の低下といった働きもあるようです。

 

ドリンクの効果と副作用について

さて、様々なタイプの栄養ドリンクが世に流通していますが、含まれている成分の効果や副作用などについてはどうでしょうか。

まず、気をつけなければいけないのは「薬も過ぎれば毒となる」という言葉のとおり、いかに有効成分といえども摂取しすぎると体に害を及ぼすことがあるということです。栄養ドリンクも用法用量についてはくれぐれも気をつけるようにしましょう。

 

・疲労回復

純粋な疲労回復には、「ビタミンB群」を摂取すると効果があるようです。ビタミンB群は、糖質や脂質、タンパク質をエネルギーへと変換してくれる元気の源です。また、多くの栄養ドリンクに含まれている成分として「タウリン」があります。タウリンはアミノ酸の一種で、肝臓機能を活性化させたり体調を安定させる効果を持っており、コレステロールや中性脂肪の抑制、血圧正常化などの多くの効果が見込めます。ビタミンB群と併せて摂取するとより疲労回復効果が見込めるでしょう。タウリンは基本的に副作用はありませんが、あまりにも過剰摂取すると胃や肝臓にに負担がかかる場合がありますので注意しましょう。

その他にも、血流を活性化して免疫機能を強化する「アルギニン」、滋養強壮で古くから親しまれている「高麗人参」を配合したドリンクも多く出回っています。

 

・栄養補給

大抵の栄養ドリンクは甘い味付けがされています。栄養ドリンクには大量の糖分が含まれており、これは糖分を補給して体を元気にさせる目的があります。とはいえ、栄養ドリンクに含まれている糖分は、ものによっては20㎎~50㎎もの量になります。これはスティックシュガーにたとえると7本~17本分。かなり過剰な摂取量だといえますし、肥満の原因にもなります。糖分オフの栄養ドリンクも多数存在していますので、気になる方は糖分オフを選ぶようにしましょう。

 

・眠気防止

コーヒーにたくさん含まれていることでお馴染みの「カフェイン」は、大半の栄養ドリンクにも含まれています。カフェインには一時的な覚醒作用・興奮作用、集中力を高める効果などがあります。カフェインは眠気を吹き飛ばし、疲労感を感じにくくしてくれますが、疲労そのものを取り除く効果は薄いようです。カフェインによって疲れを感じなくなったとしても、それは一時的な錯覚であるため、カフェインの効果が切れたときにドッと疲れが出てしまうことを覚悟しておいた方が良いでしょう。

栄養ドリンクにおけるカフェインは、物によっては一本のドリンクにコーヒー数杯分のカフェインが入っていることもありますので、過剰摂取するとカフェイン中毒を起こす可能性も十分に考えられます。カフェインの摂取量は一日に300mg程度を限度とし、摂取量には十分気をつけるようにしましょう。

その他、覚醒効果のある「ガラナエキス」や、カフェインと同様に興奮作用のある「アルコール」が含まれているものも多いです。

 

・肥満防止

栄養ドリンクには、「カルニチン」や「イノシトール」といった体脂肪の燃焼を助ける成分を含んでいるものがあります。これらはビタミンB群と同じように、体内の糖分をエネルギーに変える際に活発に働きます。過剰摂取してしまうと嘔吐や下痢などの症状が起きる場合がありますが、相当な量を摂取しない限りは問題ないといわれています。

 

・胃腸回復

トクホ飲料に含まれている「ケルセチン配糖体」「ウーロン茶重合ポリフェノール」「難消化性デキストリン(食物繊維)」などの成分は、それぞれ脂肪分解や脂肪吸収抑制、整腸効果が認められています。基本的に植物由来の物が多く副作用などは激しくありませんが、摂取しすぎるとお腹がゆるくなることなどがあるようです。

 

・眼精疲労

眼精疲労に効く成分としては「クコシ(枸杞子)エキス」や、ブルーベリーに多く含まれれる「アントシアニン」が有名です。

クコシ、というのはいわゆるクコの実のことです。古くから漢方の生薬として親しまれており眼精疲労に効果があるほか、滋養強壮や血圧正常化、美肌効果など様々な効能があるといいます。スーパーフードとしても知られるクコの実ですが、過剰摂取すると血流が活発になりすぎて、鼻血が出やすくなったり発熱したりすることがあるので注意が必要です。

アントシアニンはブルーベリーに含まれる色素成分で、目の網膜の再合成を促進して視力を回復させる効果があるといわれています。その他にも活性酸素を除去する抗酸化作用があるため、ガンや脳卒中の予防効果もあるとされています。副作用はあまり強くなく、長期にわたって過剰摂取すると胃が荒れたり肌荒れの原因になったりする程度です。

 

・リラックス

カフェインのような覚醒・興奮作用とは逆で、リラックス作用がある成分もあります。「テアニン」や、チョコレートで有名になった「GABA」などがその代表格です。「テアニン」は日本茶の玉露から発見された成分で、ストレス緩和、集中力アップ、リラックス作用があるとされています。「GABA」はイライラを抑制し疲労回復を促す作用があるとされています。どちらもアミノ酸系の穏やかな効き目の成分で、過剰摂取しても副作用で不便するようなことはほぼないようです。

 

ドリンクの活用法と注意点

栄養ドリンクは様々な効能を持っていますが、用法用量を守らねば健康を害することもあります。栄養ドリンクを使う上で知っておきたい活用法や注意点を最後にまとめておきたいと思います。

 

1 常用せず、ピンポイントで!

栄養ドリンクには大抵カフェインなどの興奮作用がある成分が含まれており、この成分によって目が冴え、疲労感を感じにくくしてくれます。しかしこれはあくまでも一時的な効果であり、疲労は着実に体に蓄積されています。どうしても頑張らなくてはならないときにピンポイントで頼る分には非常に助かるのですが、栄養ドリンクで疲労を先送りすることが日常化したり、一日に何本も飲んだりするのは危険です。常用していると体調不良が栄養ドリンクの効果で覆い隠されて、病気の発見が遅れて取り返しのつかないことになるかもしれません。栄養ドリンクに頼った後は、連続使用を控えてしっかりと休息を取るようにしましょう。

 

2 飲むタイミングに気をつけよう!

大抵の栄養ドリンクには大量の糖分が含まれており甘い味がします。大量の糖分を摂取すると、血糖値が急激に上昇しますが、ドリンクの効力が切れると血糖値が一気に低下して、眠くなったりだるくなったりします。栄養ドリンクの効果は短期的なもの。2~3時間の間は疲れが吹き飛ぶように感じますが、その後は揺り戻しが必ずやってきます。たとえば、徹夜で作業をするというときに早めに飲んでしまうと、一番頑張らなくてはいけない時間に眠気が襲ってくる可能性もあるということです。眠気を実感してきた頃合いで飲むようにしないと、せっかくの効果を無駄遣いしてしまうかもしれません。

 

3 薬との飲み合わせに注意!

栄養ドリンクにはカフェインの他にアルコールが含まれていることがあります。アルコールはカフェインと同様に興奮作用があるため、疲労感の解消と眠気の防止などの効果がありますが、分解の際に肝臓に負担がかかります。風邪薬など、様々な薬はアルコールと同様に肝臓に負担をかけますし、 薬によっては命の危険を招くような副作用を及ぼす可能性も。アルコール入りの栄養ドリンクと薬の併用は絶対に避けるようにしましょう。

 

まとめ

日々の疲れを押しのけてどうしても頑張らなくてはならないとき、栄養ドリンクは強い味方となってくれます。ですが、栄養ドリンクで得られる効果はあくまで「疲労の先送り」であり「元気の前借り」であることを知らないと、将来的に大きなリスクを抱えることになってしまうかもしれません。勝負所でのピンポイント使用を心がけ、栄養ドリンクに頼りすぎないことを強くおすすめ致します!

 

 

参考

ダイアモンド・オンライン『「栄養ドリンク」を飲み続けると疲労は逆に蓄積する』

料理家の先生がつづる料理ブログ「栄養ドリンクの注意点」吉田由子

松沢病院通信『栄養ドリンクって身体にいいの?』

俺の夢『栄養ドリンクが疲労を吹き飛ばす仕組み!実は効果にタイムリミットがあった』