建設現場や工事現場で「現場代理人」という肩書きを目にすることがあります。よく聞く「現場監督」とはどう違うのか、知っていますか。現場には様々な役職のひとがおり、どの肩書きがどういう立場の人なのかいまいちわかりづらいかもしれません。また現場監督はどの現場にもいますが現場代理人はいない現場もあります。どんなときに必要なのでしょうか。改めて「現場代理人」はどういった業務の役職か見ていきましょう。

 

現場代理人はどんな仕事?

現場代理人は、工事の元請け業者(受注者)を代表する人のことです。代理人の名の通り、受注会社の代理でありその工事の責任者となる立場です。現場によっては「現場所長」と呼ばれることもあります。

主な仕事内容は施工上の運営、安全管理や行程管理を行います。現場代理人が実際に施工を行うことはありませんが、作業内容について指示を出したり、安全の注意や改善策を提案したりします。そのため現場の作業員たちにも直接指示を出す立場にあります。現場の事務所でデスクワークをするのではありません。現場の作業内容と発注者との希望を擦りあわせたり、作業員になにか聞かれたらすぐに対処することが必要になります。そのため円滑な現場にするためにコミュニケーション能力のスキルも求められ、作業員にも常に目を配る注意力も必要です。

 

実は現場代理人は法律では設置が義務づけられていません。建設業法上はいなくても法律違反ではないのです。しかし現場代理人がいた方が連携や業務がスムーズに進行することが多いため通常は選任されることが大半です。また公共工事においては配置が必須となっています。

現場代理人になるためには特別な資格がなくてはならない、ということはありません。極端にいえば誰でもなることができるのです。けれども請負人の代理でなければならないため経営者に近い存在の人が望ましく、請負人と直接的で恒常的な雇用関係があることが必須とされていることがほとんどです。直接的とは、つまり正社員で、「恒常的な雇用関係」とは雇用から3ヶ月以上であることとされています。また現場で直接指揮を取るため、作業内容についてよく理解している必要があります。

また現場代理人は大きな権限を持つことができるため、選任した際は氏名を発注者に書面で通知が必要となります。現場代理人に選任されるということはその現場すべての取り仕切りや施工など一切のことを処理することができるということです。けれども実際には重要な契約内容の変更や契約の解除など予期せぬトラブルの際、代理人が処理するには適切でないこともあります。そのため、選任後はどのような権限がかるのか、なにか起きたときにはどのように意見を伝えるかなどの内容を書面に明記し、発注者に通知します。請負人の代理となる人物で権限も持っていますが、経営に関するすべての権限を持つわけではなく、内容は制限されています。権限の内容が明記されることで現場代理人はなにをすればいいのか、なにを任されているかが明確になり業務内容や責任の所在もはっきりするのです。

 

現場代理人と現場監督・主任技術者との違い

では、よく似ていると思われている現場監督との違いはなんでしょうか。ここからは業務内容の違いやその役割についてみていきます。

 

まず大きな違いは資格の有無です。いわゆる現場監督は監理技術者や主任技術者の資格を保有した人が選任されますが、現場代理人には資格は不要です。

しかし業務内容は似ている部分があります。現場監督も現場代理人も施工計画や安全管理、指導監督などに携わるので、どちらも現場に対しての知識が必要になります。ただし現場代理人には現場監督には任されていない仕事があります。それは「工事現場の取り締まり」や「請負代金額の変更、請求、受領」などです。取り締まりは現場監督よりも厳しい業務内容になり、お金に関する業務も扱うことができる立場になるのです。

現場代理人と現場監督の違いを簡単にまとめると、以下のようになります。

 

現場代理人 → 元請け業者を代表する人で現場の最高責任者。請負人の代理で、資格は不要だが請負人との間に恒常的な雇用関係が必要。

現場監督  → 現場を管理する責任者。現場の作業にも携わる。国家資格が必要になる。

 

似ているようで少し違いますね。現場代理人はその現場を代表する人物で、現場監督は現場の施工や業務管理を行う人を意味しています。

 

現場代理人の兼務と常駐について

現場代理人はその工事現場の代表ですから、現場に常駐していなければなりません。これは契約約款において義務づけられています。常駐とは工事期間中、特別な理由がある場合以外は常時継続的に現場に滞在していることを意味します。発注者との連絡や現場の連携に支障をきたさない状態を保たなければなりません。

ひとつの現場に常駐しているわけですから、発注者が認めた特別な場合を除き、他の工事と重複して現場代理人になることはできません。ひとつの工事に対しひとりの現場代理人が責任者となります。しかし工事期間中であっても途中で人を変更することは可能です。

また同じ現場内であれば、現場代理人と現場監督は同じ人物が兼務することができます。発注者が兼務しても支障がないと認め、発注者との連絡体制が整っていれば問題なく兼務できるのです。上で示したように現場監督と現場代理人の仕事は厳密には異なりますが、業務内容が重なる部分も多いため、経験のある現場監督であればだいたいの人が現場代理人を兼任することができます。そのため現場代理人がいない現場も決して珍しいことではありません。

 

兼務についてまとめた表が以下のようになります。

高知市「現場代理人、技術者等に関する留意事項」

 

まとめ

現場代理人に任命された人は現場の責任者としてその工事に関わります。現場スタッフ全員の上に立つ人間として責任ある振る舞いが求められます。資格は必要ない役職ですが、経験や知識、コミュニケーション能力など幅広い能力がなくてはいけません。逆にいえば任命されたということは、「この人になら任せられる」という信頼の証拠でもあるでしょう。

 

 

<参考>

現場代理人とは?1分でわかる意味、現場監督、現場所長との違い、主任技術者、監理技術者 建築学生が学ぶ構造力学

現場代理人とは? 工事現場で頼りにされるために必要なこと 工場タイムズ

現場監督と現場代理人の違いとは?仕事内容を詳しく解説 俺の夢

現場代理人を命ず!って資格持ってませんけど ロスタイム