現場仕事は危険と隣りあわせ。安全に作業を進めることが第一です。そんなこといわれずとももちろんわかっている、と思われるでしょうがそれでも事故は起こってしまいます。なぜ事故が起こるのか。それには様々な原因がありますが、ひとつに、危険とは目に見えるものではない、ということがあるのではないでしょうか。どうすれば安全でなにが危険か、明確にわかるようになれば事故のリスクは大幅に下がるはずです。今回はどうすれば安全を「見える化」できるようになるのか、その方法を紹介します。

 

現場にはどんな危険があるのかを再確認しよう

「見える化」とは、最近いろいろな場で聞く言葉ですが、主に会社や仕事において使われています。問題を明確にして常に見える状態で共有する。そうすることで実際に問題が発生してもすぐに解決できる環境を作っておくことをいいます。安全活動も「見える化」することで、危険を見えるようにしておき、さらに気づかなかったり見えづらかったりする危険な行動やポイントを直していくことができるのです。

 

・安全帯

高所では安全帯をつける、といっても「高所」の定義がひとによって曖昧では大変です。2mからつけるひともいれば5mからと思っているひともいるかもしれません。また現場ごとに足場などの状況が異なり一概に高さだけでは決められないこともあるでしょう。そのため、現場ごとに「ここからは必ず安全帯をつけなくてはならない」ときちんと表示することが大事です。安全帯の使用範囲を明確化し作業するひとたちに使用を徹底することができます。またフックに色づけなどをすることで、周囲の人間からも安全帯をしていることを見やすくなり、万一つけ忘れた場合もすぐに指摘できるようになります。

 

・安全通路

現場の地面は平坦とは限りません。穴があったり機材があったりと足をとられてしまうことがあります。特に暗い場所での作業などでは足元が見えにくいためさらに危険です。安全な通路を確保し、通行部分は緑色などのマットを敷き作業通路を明確化しましょう。逆に通ると危険な場所にはカラーコーンやバーなどで区別することが大事です。

 

・立入禁止

関係者や作業員以外が間違って入ることがないよう、立ち入り禁止区間についても明確に分けることが求められます。看板で大きく表示したりテープなどで区切ったりすることが大事です。立ち入り禁止理由も明示することで、どういった作業が行われているかをわかりやすくし、危険を伝えることができます。また作業の最中に一時的に立入禁止エリアが発生することもあります。たとえばクレーンなどの下や、重機の旋回範囲などです。クレーンの下にも立ち入り禁止の表示をしたり、重機の回りには近づかないよう周知が必要です。

 

・段差

移動時に段差で転倒、転落の危険があります。階段や段差が発生しているところには注意喚起の表示や段差箇所に蛍光テープなどを張りわかりやすくすることが大事です。また見落としがちな箇所は段差付近で音声などを鳴らし注意を促すことも有効です。暗い箇所には人感センサーをつけ足元を明るくするなども効果が期待できます。

 

・現場作業状況

現場は広く、同時進行で様々な作業が行われています。一度に把握するのは難しいですが、どこでなにが行われているかを確認しておかないと、別の作業に影響が出ることや危険が伴う可能性が生じます。現場管理者はモニターなどで、見えづらい作業場の状況や進行をリアルタイムで確認し適宜指示を出すことが求められます。危険な作業を発見した際すぐに声を掛け安全に行われるように注意を促しましょう。また作業員に色分けされたヘルメットや腕章をつけてもらい、有資格者と新規入場者などを一目でわかるようにしておくことも安全管理には重要です。

 

【見えにくい、潜在的な危険も忘れずに】

危険とは現場だけでなく、ひとりずつそれぞれにも潜んでいる可能性があります。個人の体調管理や声掛け運動などで、見落としがちな危険にも注意を払いましょう。

 

・熱中症

暑い時期の作業では、熱中症の危険と隣りあわせです。作業場の近くに休憩所を設け、場所がわかりやすいよう色つきのテントやネットで区分しましょう。日陰やエアコンのきく休憩所を確保し、水分塩分補給をこまめに行えるようにしておくことが大事です。休憩も1時間に1回などきちんとルールづけしてからだを休めやすくすることが必要です。管理者は暑さ指数計を使い熱中症の危険度も把握することも大事です。

 

・ストレス

環境への適応力はひとによって様々です。慣れない作業や人間関係などストレスの原因は一概にはいえません。日々の業務のなかで誰かが少しでも様子がおかしいと思ったら、すぐに声を掛け可能な限り不安やストレスを軽減するよう改善や相談に乗ることも大事です。作業している全員が快適な環境作りを整えましょう。

 

・不安全行動

『労働災害原因要素の分析(平成22年・厚生労働省)』によると、全体の97.6%が不安全行動に起因する労働災害となっています。せっかく安全対策を施しても、面倒くさがって省略したり、いつもやっているからと過信して安全行動をしなかったりすることを不安全行動といいます。安全教育をきちんと行い、声掛け運動を強化して作業員の意識を変えることや管理の徹底が求められます。

 

その他、現場の不安全行動とその対策について知りたい方は、こちらの記事『【労災対策】机上の理論は危険を招く!? 安全の為やるべき本当の対策』も参考にしてください。

【労災対策】机上の理論は危険を招く!? 安全の為やるべき本当の対策

 

どうすれば危険が「見える」ようになるのか?

ひとつひとつの危険を「見える化」したあとに重要なのは、その見える化した危険を周知することです。段差にテープを貼って満足するのではなく、あの柱の陰には段差があるので通行には気をつけるようにということを先に情報として周知しておくことで、不意の事故を防ぎます。

また掲示物に情報をすべて載せておいても忙しい作業中にすべてを読むことは難しいものです。重要なことをわかりやすく明示することが大事でしょう。看板などの掲示はよりわかりやすく、目立つところに置き、印象づけることが大切になります。

そして安全行動を浸透させるには習慣づけがなにより大事です。高所では安全帯をつける、指差しで安全確認を行う、作業開始前に声掛けして安全を確認するなど、ひとつひとつの行動が習慣になることでいつでも安全に作業を行うことができ事故のリスクが減っていきます。

いくら安全対策をしていても、その内容を作業員が理解していなければ意味がありません。きちんと周知を徹底し、習慣づけを行うことでより安全な現場になっていきます。

 

対策も「見える化」する

危険を「見える化」するために気をつけることのひとつに、管理者と労働者の間の、安全への意識の差があります。管理者としては小さなリスクも排除したいですから、安全へ細かな対策をして労働者へ伝えますが、労働者側が「それはリスクと考えない」ならば理解を得られたとはいえません。また危険を理解していたとしても、守らないケースもあります。それは作業員として実際に作業する際、ひとつひとつの安全行動が作業効率を悪くしわずらわしく感じられるときに多いといえます。指さし確認や掛け声など、やるべきと思っていても納期に追われて少しでも時間を短縮したいと省略してしまったりするのです。またどの作業にも安全行動が多すぎると作業のたびに手が止まってしまうなど、円滑な作業が行えないこともあります。その安全行動は本当に必要なのか、と不満も出るでしょう。

安全行動をなんでも行えばいいというものではありません。なぜその行動が必要なのか、をきちんと周知し理解してもらうように努めなくてはいけません。そのためには、行動の具体化ということが大事になります。

たとえば熱中症対策で、「こまめに休憩と水分補給を」と指示をするだけでは、「こまめ」の解釈がひとにより違う可能性があります。また水分補給ものどが乾いてから、と考えていては補給が間にあわず脱水症になってしまうかもしれません。

そういった解釈の曖昧さを取り除くことが対策の見える化です。40分ごとに5分休憩し、コップ1杯以上の水分と塩飴をひとつ摂取するように、とルール化することで全員が同じように補給することができます。またルール化することで実行していない場合もすぐにわかるようになり、注意もすることができます。

また安全対策の際に、事故の原因として共有するべきことに「ヒヤリハットの見える化」があります。ヒヤリハットの経験や事例を共有し、その危険の本質や影響について話しあったり、対策を実施し掲示や目に見える形で周知したりすることで、同じ事故を防ぐことが狙いです。重要なのはヒヤリハットを防ぐことができれば、事故や災害を防ぐことに繋がるということ。現場でヒヤリハット体験をした場合はすぐに報告し、注意喚起することで危険を「見える化」し、自分ごととして作業することを促しましよう。

こちらの記事『現場の安全「ヒヤリ・ハット」報告を習慣に! 意識づけで事故を防ぐ』では、ヒヤリハット防止について詳しく解説しています。

現場の安全「ヒヤリ・ハット」報告を習慣に! 意識づけで事故を防ぐ

 

まとめ

管理者側がどんなに安全対策を作っても、実際に作業する労働者ひとりひとりに安全を意識して行動してもらうことには変わりません。そのためには、日々の作業のなかの危険を「見える化」し、安全への意識づけを行うことが大事です。また「見える化」することで作業体制を見直し、より安心な作業方法を考えることもできるでしょう。「見える化」は難しいものではなく、誰でも参加することができるものです。より良い作業現場にしていくためにもひとつひとつの作業に「見える化」できることがないか確認していくことが大事です。

 

<参考>

安全を見える化する 今日も無事にただいま

建設業「安全の見える化」推進重要期間 神奈川労働局

重大な事故を防げ!ヒヤリハットの見える化の重要性 – ライブドアニュース