女性活躍推進法が施行され、女性の社会進出が注目を浴びている昨今。女性が活躍する現場では、女性だからこその能力が生産性を高めることが知られるようになり大きな注目を集めています。けれども建設や土木などの現場ではまだまだ女性の雇用が行き届いていないのが現状です。令和時代のスタンダードに対応した、女性が活躍できる現場とはどのようなところか。雇用制度や環境づくりなど、改めて考えていきましょう。

 

女性が現場にいるメリットを再確認しよう

男性メインの建設業界には女性が入るのは難しいなどと考えているひともいるかもしれません。けれども女性がいることで現場にはたくさんのメリットがうまれます。いくつかご紹介しましょう。

 

・現場の活性化

女性がいることで場に明るさや潤いがうまれます。女性はコミュニケーションを取ることも上手なので会話も活発になります。現場の雰囲気はなごやかになり、作業もより密にすすめることができます。またこれまでの男性中心の現場にはなかった女性ならではの意見なども出てくることにより、作業効率の改善や顧客への対応もよりこまやかに対応することが可能になります。

 

・規律が高まる

細かくて気づきづらいことにも女性特有のこまやかさが行き届くようになります。物の管理や整理整頓、掃除がきちんと行われるようになり、清潔感ある現場となります。男性も女性の目を意識し身だしなみに気を遣うようになります。また女性が入ることで安全への意識が高まり、より作業を安全に行うようになります。

 

・補助金が受けられる

女性が活躍することは国が推進していること。女性雇用に積極的であれば、補助金を受け取ることもできます。女性支援の補助金にはいくつか種類があり、それぞれ条件に該当すれば受けとることができます。有名なのは「女性活躍加速化助成金」などがあり、企業内での女性活躍を数値化し、目標を達成できれば補助金を受け取ることができます。

 

一般的に行われている施策

女性が働く上でネックになるのはやはり出産と育児ではないでしょうか。産休で休んだあと復職できるか、育休制度はあるかなどが、女性が職場を選ぶ上で気にすることです。そのためその会社がどのような支援制度を取り入れているかはとても重要です。

 

・育児休暇

育休は法律でも定められており基本的な制度としてどの企業でも行われています。けれども取得期間や期間中の賃金についてなどは企業ごとに様々です。法律では期間は1歳に達する日、賃金については定めなしとなっていますが、満2歳までや1歳6ヶ月まで、また事情がある場合は3歳までなど家庭の状況により長期間取得が可能な企業も多くあります。賃金も無給であるところも多いですが社会保険料の支払免除の対象となることが多いです。

復職のジョブリターン制度がある企業も多く安心して出産、育児をすることができる環境づくりが重要です。

けれども男性の育児休暇取得数はあまり芳しくなく、過去5年で5人、10人といったところも多いのが現状です。男性社員でも育児休暇を取得しやすい環境づくりも今後求められていくでしょう。

 

・育児中の就業

子供が大きくなってからも、送り迎えや学校行事などで仕事の時間が限られます。働く親のために短時間勤務やフレックス制度を整備している企業も多くみられます。勤務形態変更を含め、企業ごと様々な形で考えられており6時間勤務やコアタイムの有無、10分単位で1日2時間まで短縮可能など、働きやすい時間に働いてもらう制度を各社で考えています。子供が小学3年生終了までなど長期間の取得期限の企業も多くあります。また育児中の手当てとしてベビーシッター補助などを支給する企業もあります。

 

・介護

子育てがなくても、親の介護などでフルタイム働くことが難しいひともいます。介護休業制度の有無は長く働く上で大事な制度となります。休暇日数も企業ごとに異なりますが、対象家族につき通算180日から365日など長期で取得できる企業が多くあります。また介護期間も就業時間をフレックスタイム制や短時間勤務を利用できる制度を整えています。

 

こちらの記事『女性が働きやすい現場づくりのために知っておきたいこと』も、あわせて参照ください。

女性が働きやすい現場づくりのために知っておきたいこと

 

女性がもっと働きやすい環境をつくるためのポイント4つ

男性視点では気づきにくいですが女性には使いづらかったり不便を感じていたりすることが現場には多くあります。女性の目線になって環境を整えることが大事になってきます。それではどんなことに気をつけて設備や制度を整えればよいでしょうか。

 

1. 設備

まず、作業着に着替える際の更衣室が必要です。更衣室がなければ着替えの際に男性にも気を遣います。更衣室は、施錠できたり休憩室としても利用できたりするような広さがあるに越したことはありませんが、一定のスペースをカーテンなどで仕切るだけでも充分です。ただし、男性側のマナーの徹底が必要なことはいうまでもありません。

また、作業着なども女性の体のサイズに合ったものを利用できるようにしましょう。女性でも運搬に支障のない工具なども利用できるようにすると女性も現場で引け目を感じることなく作業が可能になります。

現場で女性が気にする設備といえばなんといってもトイレです。清潔で安心、快適なトイレがあることは女性の仕事に対するモチベーションにも関わります。作業現場にも女性専用の仮設トイレを設置することは第一条件です。男女共用ではなく女性専用トイレであることを明確に表示し、男性が無断で使用できないよう施錠や管理することは女性にとって安心に繋がります。なるべく人目につくところから離れたところに設置するなど配置にも気を遣いましょう。またサニタリーボックスなど必要なものも整備されることで快適に利用できます。

洗面所も重要です。男性は手洗い場だけでいいと思う方もいるかもしれませんが、女性も利用する場合には鏡を設置しましょう。身だしなみを確認できる場所は安心感を高めてくれます。できれば女性専用トイレとともに女性専用の洗面所が整備されれば女性は使いやすく感じます。

 

2. 職場環境

女性が建設現場で働く際、まだまだ理解を得られないこともあります。作業現場はもちろん、管理部門でも女性が現場で働くことの意義やメリットを周知することはとても重要です。女性が働きやすい環境向上のためのルールを策定したり、さらに実際に働いている女性から現場の改善点を聴取し検討することができればよりよいでしょう。

女性の技能向上のために、研修や技能実習を積極的に活用し、その費用なども補助制度が利用しやすい環境をつくることも大事です。女性の現場監督などリーダー的役割を任せていくことも必要です。能力があれば女性でも活躍できることが大変重要なのです。

また、広報やリクルート活動の際、現場で女性が活躍している職場であることを積極的に発信しましょう。女性の受け皿を広くし、さらに女性の意見を取り入れることでより長期的に働いてもらえる環境づくりに取り組みましょう。

そして現場でのセクシャルハラスメントの防止を強化することはとても重要です。啓発活動や書面、ポスターでの周知、どんな行為や発言がセクハラにあたるのか現場全体で学ぶ姿勢が大切です。

 

3. ワーク・ライフ・バランス

妊娠中でも働ける環境として休憩室を配備したり、急な容態変化にも対応できる緊急指定病院のリストを作成するなどもよいでしょう。また妊娠中、育児中の女性に求められる配慮を、現場全体で学ぶ仕組みを導入しましょう。また、育児や介護の悩みなどを相談できるよう、女性社員との面談の機会を増やしたり相談窓口を設置することも大切です。女性が我慢せず要望を伝えられるような仕組みをつくり、無理なく安心して働ける環境を整えることが大事なのです。

 

4. 会社の仕組み

産休や育休から復職しやすい制度や介護のための休暇などが取得しやすい制度の充実が求められます。上でも示したように短時間就業など勤務体制を工夫することで、そのひとに合った働き方を提案することができるようになります。その際、事務職に異動しやすくするなど会社側での制度整備も必要です。復職する際は、休んでいた間にすすんだ情報などを研修する機会を与え、技能実習などにも参加しやすいよう補助制度の活用や情報提供をすることが大事です。

 

こちらの記事『女性を雇用する上で管理者が必ず知っておくべきこと』も、あわせて参照ください。

女性を雇用する上で管理者が必ず知っておくべきこと

 

まとめ

建築現場で女性が活躍する機会はまだまだ少ないかもしれません。しかし現場で働きたい女性も多くいます。彼女たちが活躍できる場を増やすには会社側で制度や設備を整えることが大切です。整備されていれば長期的に女性も活躍でき、働きたい女性もさらに増えていきます。この機に今一度女性視点で現場を見直してみてはいかがでしょうか。

 

<参考>

けんせつ小町『女性活躍推進に関わる日建連会員会社の制度関係の事例』

日建連『「けんせつ小町」が働きやすい現場環境整備マニュアル』

Lilycon『もっと女性が活躍できる建設業界へ』