紙の資料が多いと整理が大変で、どれがどれだかわからないこともあります。印刷のコストやセキュリティの難しさなども紙の資料にはつきものです。紙の資料を減らすことができれば、実は企業にとってもたくさんのメリットがあります。今回はペーパーレス化についてご紹介しましょう。

 

ペーパーレス化とは?

ペーパーレス化とは、会議などで使う資料に紙媒体を使わず、電子化・データ化しデジタルファイルとしてネットワーク上で活用する取り組みのことを言います。企画書や報告書、見積もりや契約書に請求書、図面、領収書等々。私たちは日々たくさんの書類を利用しています。しかし、仕事のデジタル化につれ紙のほかにパソコンやスマートフォン、タブレットなどのIT機器も同時にビジネスに欠かせないものとなってきています。紙の資料をPDFなどのデジタルファイルにしてネットワークで共有し、各々のパソコンなどで閲覧することがペーパーレス化です。もっと身近な例で言えば、新聞や雑誌のネット配信もペーパーレス化ですし、切符を使わずICカードを利用する電車などもそのひとつでしょう。

また国としてもペーパーレス化を推進しています。企業の文書は電子帳簿保存法やe-文書法などの法律によって運用方法が決められています。e-文書法は2005年に施行され、多くの文書がスキャンやデータ保存が可能となりました。また2017年には決算書類、契約書や領収書といった書類もスマートフォンによる電子化が可能になるなど文書データ化のハードルはどんどん下がっています。

ペーパーレス化は「働き方改革」にも繋がっていきます。残業削減や時短勤務の多用など、企業には短い時間で生産性向上を求められることが増えています。それには従来の働き方では間に合いません。そこで注目されるのがペーパーレス化です。紙による情報をデータとして保存することで、管理や共有が簡単になり、コスト削減や生産性向上につながるのです。

 

ペーパーレス化のメリットとデメリット

・メリット1:コストの削減

ペーパーレス化することで得られる大きなメリットとして、紙代や印刷代のコスト削減があります。印刷には紙のほかにインク代も必要です。またオフィスのプリンター複合機にはメンテナンス代、さらには電気代もかかりますが、ペーパーレス化すればそれらのコストは一気に不要になります。これらは環境にも優しく企業イメージアップにもつながります。大量に印刷する際はそれにかかる時間もありましたが、データであれば一瞬で情報共有可能なので時間の短縮にもなります。

さらに契約書はPDFでのやりとりが認められているので、データで対応することで収入印紙を貼る必要がなく、たとえば不動産取引など高額な契約書を多数扱う業種では直接大幅なコスト削減にもつながります。

 

・メリット2:保管、管理が楽

紙は保管するのにもコストがかかります。書類を保管するファイルや棚、倉庫も必要になります。たとえば領収書の保管期間は7年なのでその期間ずっとスペースが埋まっていることになってしまいます。また紙は劣化するので乱雑に保管すると消失してしまう可能性もあります。どこになんの資料があるか、過去になればなるほどその検索も難しく探すのに時間も手間もかかります。ペーパーレス化することによって、保管は手軽になり劣化もありません。資料の検索もネットワーク上でできますから、外出先からスマートフォンで見ることも可能です。スペースも空くためオフィスがきれいになりますし、無駄に倉庫を借りる必要もなくなります。

 

・メリット3:セキュリティ対策が可能

上でも示した通り紙の書類は物理的な紛失や盗難、火災による焼失など、なくなってしまうリスクがあるものです。そして一度失ってしまうと復元することはなかなか容易ではありません。ペーパーレス化することによってデータ化し、クラウド上で保存しておけば、パソコンが故障しても別のところから復元が可能です。厳重にバックアップをとれるため、災害時の被害を最小限におさえることが可能なのです。さらに閲覧には制限を設けたり、パスワード設定することで部外者が見られない仕組みを作ることができますし、ログを管理することでだれがいつどんな資料を閲覧したのか記録に残ります。

 

・デメリット:ネットワークの影響を受ける

ペーパーレス化するとすべての情報がネット上にあるため、一度インターネット回線やシステムに障害が起きるとデータの閲覧ができなくなる恐れがあります。またシステムが復旧されなければ、ネット上にあるすべての資料や情報を失ってしまうリスクもあります。さらにハッキングやクラッキングによりデータの流出や改ざん、消失もあり得ます。

また、電子化できない書類もあります。たとえば宅建業法の重要事項説明書や賃貸契約書などは法律上で「書面を交付」とされているため、ペーパーレス化は認められません。このように、自身がよく使う書類がペーパーレス化が可能かどうか、ひとつずつ確認する必要があります。

 

ペーパーレス化推進におけるよくある課題と導入方法

・課題1:導入コスト

ペーパーレス化をためらう要因のひとつとして導入コストの高さがあります。社員全員にパソコンやタブレット端末を支給するため、社員数が多ければ多いほど揃える費用は高くなります。さらにセキュリティソフトの準備やアップデートに備えたランニングコストも考慮に入れなければなりません。

一見導入コストが高く見えてしまいますが、実際はペーパーレス化することで印刷代や人件費、時間コストの削減に繋がるためペーパーレス化が成功すれば、長期的に見るとコストは下がります。

 

・課題2:ITリテラシー

デジタルネイティブ世代が多くなってきているとはいえ、特に高い年齢層にはまだまだIT機器に関して苦手意識があったり操作がおぼつかないひともいます。特定の作業だけでなくすべての資料、情報をデジタルで管理するとなると逆に作業効率が落ちてしまうひともいるかもしれません。また紙の方が持ち運びに便利で視認性も高く、すぐにメモを書き込めるなどの利点もあり、好んで紙を使うひとも多いのが現状です。これまで慣れ親しんだ方法と大きく変わるため、ストレスや不安を感じるひとが出ないよう、デバイスやソフトウェアの使い方を指導、共有することが大切ですが、時間的コストはかかります。

さらに利用が慣れてからもセキュリティについて研修やセミナーを行う必要があります。たとえば外出先のカフェなどでフリーWi-Fiを不用意に利用すると、他者にデータを盗まれてしまう可能性があります。こういった、いままでとは違った情報の扱いに、ひとつずつ慣れていかなければなりません。

 

・導入方法:できるところから積極的に

導入にはコストがかかり、全員が馴染むには時間と根気がいりそうだ…と諦めかけているかもしれません。しかしペーパーレス化は業務の見直しや、生産性向上に繋がるとなれば無視できるものではありません。どうすれば無理なく導入していくことができるでしょうか。

一度にすべてをデータ化し、ペーパーレス化をはかることはなかなか難しいかもしれません。まずはできるところから少しずつ、積極的に導入していきましょう。社内で紙を使っている業務は会議だけではないはずです。たとえば、決まった形式の申請書類や作業報告書などは紙にせず、データにしてみましょう。出退勤がタイムカード方式であれば、出退勤システムを導入してみるのもいいでしょう。

また、多く紙の資料を使う会議をペーパーレス化するには、まず経営陣など上層部が積極的にタブレットやweb会議を利用することも取り組み方のひとつです。企業の上層部自らペーパーレス化すれば、従業員たちも方法を学び、やり方を揃えるきっかけになるでしょう。それに合わせて研修やセミナーも増やし、社員のITリテラシーを高めていくことも重要です。

また契約書など他社が関わってくる資料に関しては、取引先の事情などもありなかなかペーパーレス化は難しい可能性もあります。そういったときも焦らず、長期戦でのぞむことが大切です。ペーパーレス化に取り組むことは、業務改善に取り組むことと同じです。業務上で不要な紙のやりとりを見つけたら削減していく、その地道なひとつずつの作業がペーパーレス化、ひいては生産性向上に繋がっていきます。

 

まとめ

デジタル端末の高度化や、ITサービスの普及などこれからのビジネスにおいてペーパーレス化の流れは進むでしょう。いきなり全部を変えようとせず、じっくり取り組んで実現させていきましょう。うまくペーパーレス化を成功させれば、業務効率もあがり生産性も向上しているはずです。

 

<参考>

Work×IT『ペーパーレスとは?メリットとデメリット、導入のポイントを解説』

.Too『なぜペーパーレス化が必要なのか?成功事例から学ぶメリット』

まもりの種『ペーパーレス化はなぜ進まない?その3つの理由とペーパーレス化推進のヒントを紹介』

店舗のミライを考えるメディア『ペーパーレス化のメリット・デメリットを徹底解説』

スマートワーク総研『特集:ペーパーレス最前線 2020 総論 ペーパーレス化、3つのメリットと課題』