寒い冬を乗り切るために、暖房器具は欠かせないアイテムです。ストーブやヒーターは手軽に利用でき早く暖まるため、エアコンよりも好んで使われる方もいます。しかし例年、暖房の誤使用や不注意によって火事や死亡に至る事故が発生しています。どんなことに気をつけるべきかみていきましょう。

 

暖房器具が原因の事故はこんなにある

NITE(製品評価技術基盤機構)によると、2018年3月までの5年間のうち暖房器具が原因の事故は1064件にのぼります。そのうち死亡事故は96件で107人が亡くなっています。亡くなった方の71%は70歳以上の高齢者です。

どんな状況で事故発生しているのか。たとえば電気ストーブから出火したケースでは、発熱する前面部分に服や布団の一部が触れ、燃え広がりました。また、ストーブの近くで暖まっているときに炎が衣類に移ってしまい、服が燃え広がって死に至るケースも報告されています。

石油ストーブでは、給油時のミスなどが原因になるケースが多く報告されています。給油したタンクのふたをしっかり締め切らずゆるんでいたため、灯油が漏れてしまい引火してしまうということが起きています。誤ってガソリンを給油してしまい、異常燃焼を起こしてしまうケースもあります。ガソリンは火の勢いが強く、あっという間に燃え広がるため住宅を全焼させてしまうこともあります。

また、湯たんぽでも注意が必要です。就寝時に使用し、長時間接触していた箇所に低温火傷を負ってしまうことがあるのです。

暖房器具による事故は毎年10月頃から増加し、年末から年始にかけピークを迎えます。毎年注意喚起もされていますが、なかなかなくならないのが実情です。それはなぜか。うっかりミスなどちょっとした誤使用や不注意が原因のことがほとんどであることは理由のひとつでしょう。

 

事故がおこりやすいケースとは

では、どんなときに暖房器具による事故が起こりやすいのでしょうか。ここでは、その代表的な例を確認していきたいと思います。

 

・電気ストーブ…可燃物の接触

ストーブ火災の7割以上を占めるのが、実は電気ストーブ。石油式やガスのストーブのほうが出火のイメージがありますが、実際は違います。東京都消防庁によれば2013年までの過去5年間に発生したストーブ火災674件中491件が電気ストーブを原因としたものでした。カーボンやハロゲンのヒーター、温風機などは火を使っていないという安心感があり、給油などの手間もないため油断しがちなのだと考えられています。

出火する原因では、布団などの寝具が4割を占めており、就寝中に寝返りのときに接触したなどが考えられます。その他にも電気ストーブの上で干していた洗濯物が落ちたりカーテンと接触したりと、服や布などが触れることで出火することが多いのです。

 

・石油ストーブ…ちょっとした不注意や誤使用

石油ストーブから出火した火災の原因は、カートリッジタンクのふたの閉め忘れや締め付けがゆるいことなどがほとんどです。給油の際についタンクのふたを締め忘れてしまったり、ゆるんでしまっていることに気づかずに使用してしまったりして、漏れた燃料に引火するケースです。またタンクの取り付け方が悪かったり、手入れ不足でほこりがついたまま使用したりすることで不完全燃焼を引き起こしてしまうこともあります。

 

・石油ファンヒーター…誤給油

石油用なのに、誤ってガソリンを入れてしまったということが原因の出火も多くあります。ガソリンを給油してしまうとあっという間に燃えてしまいます。炎が勢いよく機器の外に飛び出し、周囲にある可燃物に引火して全焼してしまうことが多い危険な事故です。

 

事故防止のために注意するべきポイント

・就寝時は火を消す

暖かく寝ていたいためについつい火がついたまま使用していませんか。布団や枕などが動いてストーブに接触し出火するケースが後をたちません。寝ているときに出火するとなかなか気づかず大事故に繋がりかねません。外出時や寝るときは必ず火を元から完全に消しましょう。

 

・洗濯物や燃えやすいものを近くに置かない

冬の時期はなかなか洗濯物が乾かないため、ストーブの近くに干しておくことがあるかもしれません。しかし洗濯物は乾くと水分が蒸発し軽くなり、ストーブによって暖められた空気の対流により落下しやすくなります。新聞や雑誌なども風によりストーブに接触して火が出るおそれがあります。燃えやすいものは近くに置かないように気をつけましょう。

 

・タンクのキャップはきちんと締め、給油するときはスイッチオフに

タンクをセットしようとする際、キャップが外れたりゆるんでいるとそこから灯油が漏れ、出火の原因になることがあります。またその際ついスイッチを切らずに火のついたままにしていると、万一灯油が漏れた際、すぐに火が燃え広がってしまう可能性があります。給油時は火を必ず消し、キャップが締まっているか確認しましょう。

 

・灯油とガソリンを間違えない

ガソリンを間違って給油すると大変危険なのは上記のとおりです。燃料を間違えないように注意が必要です。専用の容器に入れ灯油用などと記載するようにしましょう。

 

・スプレー缶をストーブの上に置かない

スプレーの中のガスがストーブによって暖められて爆発する恐れがあります。またストーブの近くでスプレーを使用すると、スプレーのガスに引火してしまう可能性があります。スプレーを使用する際はストーブから離れて使いましょう。

 

・部屋の換気をする

冬の部屋は密閉しており空気がこもります。そのなかでストーブを使い続けると不完全燃焼がおき、一酸化炭素が発生することがあります。1時間に1回程度、定期的に換気を心がけましょう。また頭痛やめまい、吐き気などの症状が起きたら一酸化炭素中毒を起こしている可能性があります。すぐにストーブを消し、部屋の換気を行いましょう。もし症状が改善しない場合は病院へ行くようにしてください。

 

・故障中のものを使わない

長年使用して不具合が出てきた場合、むりやり利用するのはやめましょう。また異臭や異音がしたらすぐに利用はやめてください。そのまま使い続けると出火や一酸化炭素が発生してしまう可能性があります。メーカーに問い合わせたり、新しいものを買い換えるなどの対応を考えるようにしましょう。

 

まとめ

冬の空気は乾燥しており、出火すると燃え広がるのも早くあっという間に大火事になる可能性があります。いつも使っているから大丈夫と油断せずにいま一度、使用方法を見直しましょう。ストーブの近くで洗濯物を干してはいませんか。寒い冬を安全に乗り越えるためにも、ストーブを利用するときは、使用方法を守って事故に気をつけて使いましょう。

 

<参考>

NITE「暖房器具の事故により5年間で107名死亡~誤使用・不注意による火災を防ぎましょう」

時事ドットコム「暖房器具、5年で107人死亡=火災・CO中毒後絶たず-製品機構」

千葉市「ストーブによる火災に注意しましょう!!」

ALSOK「ストーブ火災の7割を占める「電気ストーブ」にご用心!」