毎年冬になると流行のニュースを聞くインフルエンザ。かかってしまうと高熱や頭痛など辛い症状が続きます。また熱が下がって治ったと思ってすぐに仕事に向かうと、ウイルスを周りにうつしてしまう危険もあります。インフルエンザウイルスは感染力が強くあっという間に広まってしまうので、学校では学級閉鎖のニュースも聞かれるところです。しかし仕事はそう簡単に大勢が休むわけにはいきません。蔓延する前の予防が大事ですが、症状が風邪に似ているため自身では見分けが難しく、少し寝れば大丈夫だろうと油断しがちでもあります。ではどんなことに気を付けるべきでしょうか。インフルエンザの怖さを知り「かからない」「うつさない」ための対策方法を改めて考えてみましょう。

 

インフルエンザとは? 種類や症状を確認しよう

まずはインフルエンザとはなにか。基本的なところから改めて知っていきましょう。

 

流行時期

インフルエンザとは、インフルエンザウイルスによる急性ウイルス性疾患です。毎年約1000万人が感染すると言われており、秋(11月頃)から増えはじめ、1月頃が流行のピークとなり春(4月頃)には収束します。なぜ冬が流行のピークとなりやすいかといえば空気が乾燥していることが最大の理由です。湿度が低い乾いた空気中であればウイルスは長く生存していられるのです。また乾燥した冷たい空気によって喉や鼻の粘膜が弱る時期のため、ウイルスに感染しやすいのも原因のひとつです。

種類

インフルエンザには種類があります。ニュースなどでも「何型のウイルスが流行する」とか、「何型のワクチン」といった言葉を聞いたことがあると思います。インフルエンザには大きく分けて3種類あり、A型・B型・C型と呼ばれています。

よく流行し名前を聞くのはA型です。感染力がとても強く症状も激しく出る型で、高熱などを出すのはこの型です。現在は「A(H1N1)亜型」(平成21年に流行した型)、「A(H3N2)亜型」(いわゆる香港A型)という2種類が主に流行しています。しかしA型は感染した体内でウイルスの形を変異させていくため、新型のウイルスに進化してしまうことがあります。すると今までの免疫やワクチンが効かず、全世界的なインフルエンザの流行を引き起こすことがあります。爆発的流行を「パンデミック」と言い、全世界的に注意喚起されています。近年話題になった「鳥インフルエンザ」もA型インフルエンザの種類です。

B型は以前は数年おきに流行していましたが、近年は毎年流行しています。A型ほど大きな流行を起こすことはないと考えられていますが、B型も感染力は強いため注意が必要です。症状としては下痢や腹痛が多いのが特徴です。C型はあまり流行することはなく、感染しても症状も鼻水くらいだったりと軽症のことが多い型です。

症状

インフルエンザに感染すると約1~3日という短い潜伏期間のあとに症状を発症します。インフルエンザと風邪はよく似た症状があらわれますが、発症の仕方や期間などが違います。

図表:第一三共「インフルエンザの症状~症状、かぜとの違い~|インフル・ニュース」より編集部で作成。

風邪の場合、発症すると喉の痛み、くしゃみや咳が長く続き発熱してもさほど高くはならず、ゆるやかに進行ことがほとんどです。対してインフルエンザの場合は急激に発症することが多いです。38℃以上の高熱が出て、悪寒や頭痛、関節痛など全身に症状があらわれます。その後に喉の痛みやくしゃみなどが出たり人によっては嘔吐や腹痛などの症状があります。

症状が似ていてもインフルエンザは風邪薬では治りません。急激に高熱が出たり全身に倦怠感が出た場合はインフルエンザを疑い、すぐに病院を受診しましょう。

 

「インフルエンザ」3つの感染経緯

ではどのようにインフルエンザに感染してしまうのでしょうか。インフルエンザの感染には3つの経路が考えられます。

 

1)飛沫

インフルエンザウイルスに感染しているひとのくしゃみや咳により、つばなどの飛沫と一緒にウイルスが周囲に飛び散ります。それを近くにいるひとが吸い込んでしまうことにより感染するのが飛沫感染です。

1回の咳で10万個、1回のくしゃみで200万個ものウイルスが放出されると言われており、だいたい半径1.5m以内の距離にいるひとは感染してしまう可能性があります。満員電車やオフィス、飲食店など多くのひとが集まる場所で起こる感染経路です。

2)接触

感染しているひとがくしゃみや咳を手で押さえたとき、そのウイルスが手につきます。その手で周りの物に触れることでその物にウイルスが付き、別のひとがその物を触ってウイルスが付いてしまいます。その手で物を食べたり目や鼻に触れることで、粘膜から感染してしまうことを接触感染といいます。

ウイルスは当然目に見えませんので何気なく触ることで感染してしまいます。多くのひとが共有するもの、例えばオフィスのドアノブや電気のスイッチ、電車やバスのつり革などを経由して感染することが多い経路です。

3)空気

そして、割合は多くはありませんがインフルエンザも空気感染することがあります。感染しているひとと同じ室内に長時間いる場合に起こる経路で、飛沫感染などのように直接分泌物を吸い込まなくても空気中のウイルスにより感染してしまうのです。

空気が乾燥した閉めきった部屋で換気をしないままいると、ウイルスが長時間感染力を保ちやすいと言われています。感染者と長時間一緒の空間にいる際は近付かなくても感染する可能性があると覚えておきましょう。

インフルエンザにかかってしまったら

インフルエンザと思える症状が出た場合、早めに病院を受診しましょう。病院には診断キットがあり10~30分程度でインフルエンザかどうかわかります。症状が出てから48時間以内に服用することで効く薬もあるので発症後なるべく早く受診することが大事です。受診後も安静にして睡眠を充分にとりましょう。

また熱が下がったからといって体内のウイルスがいなくなったわけではありません。すぐに活動すると周りに感染を広げてしまうおそれがあります。一般的に発症してから3~7日間はウイルスを排出していると言われています。個人差はありますが、熱が下がってから最低でも2日は外出を控え、自宅でゆっくり休養しましょう。

 

インフルエンザ対策のためにやるべきこと

それではインフルエンザの予防としてやるべきことはどんなことがあるでしょうか。日頃の生活のなかで実践できることをみていきましょう。

 

手洗い・うがい

基本的なのは手洗いとうがいです。子どもっぽいと思われるでしょうか?しかしインフルエンザ予防にはとても有効な方法なのです。インフルエンザの感染経路のひとつ、接触感染は手についたウイルスが粘膜につくことで感染しますが、手洗いはこの感染経路を防ぐことができます。帰宅の際や食事の前などこまめに手を洗いましょう。ウイルスは石鹸に弱いためきちんと使用するとより効果的です。うがいも喉の粘膜についたウイルスを洗い流すことができるので、同時に行いましょう。

マスクの装着

かかってしまったあとは、周りへの飛沫感染を防ぐためにもマスクを装着しましょう。マスクを持っていない場合に咳やくしゃみをするときは、他のひとから顔をそむけて手やティッシュなどで押さえてするようにしましょう。また感染していないときもマスクをつけると喉の乾燥防止になるので、これも予防効果があると言えます。

部屋の換気・加湿

空気が乾燥するとインフルエンザウイルスが長く生存できる環境になってしまいます。特に大勢が出入りするオフィスでは、加湿器をつけたりして適切な湿度に保ちましょう。また同居している家族が感染した場合も、看病していたり同じ空間にいることで感染してしまうことがありますので、こまめに換気を心がけましょう。

予防接種

そしてなんといってもインフルエンザ予防に確実に効果があるのは、ワクチンの接種です。ワクチンを打つことで体内に免疫を作り感染しにくい体を作ります。ワクチンを打っていてもインフルエンザになることはありますが、発症をある程度抑えたり合併症の予防になります。毎年流行の型を予測してワクチンが作られているので、毎年の冬前には接種するとよいでしょう。

接種回数は原則1回。企業では予防接種を推奨するところが多く、接種代も企業が負担してくれることがあるので積極的に利用しましょう。

 

まとめ

インフルエンザにかからないようにするには予防ももちろんですが、なにより体力や免疫力をつけるのが一番。栄養バランスのよい食事、充分な睡眠時間をとり体調をととのえることが大切です。インフルエンザの恐ろしさは急激な発症の他に、強い感染力もあります。もし体調が悪くなったら「風邪かな?」と自己判断せずに早めに病院を受診し治療しましょう。自身が「かからない」予防と周りへ「うつさない」予防、どちらもできることから行うよう心がけましょう。

 

<参考URL>

厚生労働省「平成30年度 今冬のインフルエンザ総合対策について」

政府広報オンライン「インフルエンザの感染を防ぐポイント」

明治 インフルエンザNav「【A型・B型・C型】インフルエンザの種類とそれぞれの症状について」

第一三共「インフルエンザの症状~症状、かぜとの違い~|インフル・ニュース」