労災保険、その詳細を知っていますか? 「なんとなくわかっているから大丈夫……」なんていう認識では、いざ事故が起きた時に、迅速な手続きが行えません。安心、安全の現場環境を整えるために、まずは労災保険の基礎をしっかりとおさえておきましょう。

 

労災保険とはなんでしょう?

  • 労災保険とは、どんな保険?

労災保険とは業務を遂行している最中に、病気やケガ、または死亡した場合に、補償される保険です。業務とは大きくわけて2つあり、一つが仕事をしているときにケガをしたり、その業務が起因となって病気になったりする場合には『業務災害』。通勤中に事故にあった場合は『通勤災害』と呼ばれます。どちらも要件を満たしていれば労災保険の対象となります。

  • 労災保険が加入できる人は? そして保険料は誰が負担するの?

労災保険は正社員だけでなく、パート、アルバイト、派遣社員、日雇などの雇用形態には関係なく、労働して賃金をもらっている人、すべてが加入対象です。その際、週何時間以上の労働に就いた人など、雇用保険のような制約はありません。また保険料は雇用主が全額負担するため、労働者は保険料を支払うことはありません。そして加入する際の申し込みについても、事業所がまとめて行うため、労働者は届け出をする必要がありません。

 

業務災害について

  • 業務災害の対象になるものは?

業務が原因でケガや、疾病または死亡した場合は、業務災害の対象となります。ただし業務中にわざと事故を起こした場合や、台風や地震などによる天災は労災保険の対象とはならず、補償が受けられません。また昼休みや就業時間の前後。そして休憩時間に起きた災害も業務に従事していない間のため、労災と認められません。ただしトイレに行ったときは、通常の状態で起きたケガや事故ならば業務災害となり、労災が認定されることがあります。

  • 業務上の疾病とは?

業務が原因で病気になった場合は労災が認められます。これは業務中に起きなくても、あきらかに仕事をしたから発症した病気だとわかれば労災の対象になります。しかし就寝中に脳出血を発症した場合は、業務との因果関係が証明されない限りは、労災として認定されません。

業務上の疾病が認められる要件とは、以下の3です。一つでも該当すれば業務災害による疾病として認められる可能性があります。

 

  1. 業務中に化学物質や、体に過度な負担のかかる作業などをすることによって発生した疾病。
  2. 有害な物質をどのくらいの量、どれくらいの期間、体に受けたかが証明され、それが原因で健康障害が起きたと認められる。
  3. 有害物質を労働中、接触することによって発症した病気は。もしそれが、すぐに病気にならなくても、潜伏期間等々を医学的に鑑みて発症したとわかった疾病。

 

  • 通勤災害について

家から職場まで行く間にケガや事故にあった場合は、通勤災害として認められます。ただし通勤中、寄り道をしたり、大きく遠回りしたりした場合は、労災が認められないので注意が必要です。また出向や、出張などに向かう途中でケガや事故にあった場合も通勤災害です。

 

労災の加入手続き

  •  労災の申告は雇用主がまとめて行う

労災は雇用主がまとめて加入します。労働者の入社時、退職時に手続きをするわけではなく、年に1回、対象期間中に雇用主が事業所全体の賃金の総額と、平均人数を申告することによって加入の手続きを行います。では詳しい加入方法をみてみましょう。

  • 労災保険の手続きは管轄の労働基準監督署で行う

労災保険は、会社成立時、10日以内に手続きをすることが義務付けられています。管轄の労働基準監督署に行き、労働関係設立届、労働保険概算保険料申告書、発行日から3カ月以内の登記簿謄本の事項全部証明書(写)1通が必要です。個人の場合は営業許可証や、賃貸契約書など事業形態の確認でできる書類を提出します。

  • 労災保険の更新手続き

労災の保険料を毎年4月1日から3月31日までの1年間に支払われる従業員等の給料の総額に、事業ごとの保険料率を乗じて計算します。そしてその更新手続きは6月1日から7月10日までに行わなければなりません。

  • 労災保険の保険料の算定方法

労災保険料は以下のように算定されます。

 

給料の総額×労災保険率

 

労災保険率は業種によって異なります。過去、事故などが多かった現場などは、保険料も高くなります。詳しくは労災保険率表、こちらを参考にして下さい。

 

  • 個人事業主など、一人親方制度の加入

従業員がいない一人親方は基本的に労災保険の加入は対象外ですが、しかし以下の要件を満たし、さらに対象職種に従事している場合は一人親方でも特別加入できる制度があります。

  1. 従業員等を雇わず、一人で労働している場合
  2. 会社に所属しているが、請負で仕事をしている場合
  3. グループで仕事をしているが雇用関係はない場合
  4. 見習いだが、雇用関係がない場合

<加入対象業務>

建設現場での解体作業 大工 電気工事 配管工事 造園工事 内装工事 内装仕上工事 ガス工事 とび 足場作りなど

 

労災保険は、ケガや病気をしたときに補償してくれる保険ということはわかっていても、実は内容をよく知らない人も多いのではないでしょうか。今さら人には聞けないけれど、概要をしっかり抑えておかないと緊急時の対応が迅速にできません。ぜひこの機会に、しっかり労災保険の概要を理解し、万が一のときに慌てないようにしましょう。

 

労災保険の給付を申請するには

労災保険を申請するまでの手順を、順番にみてみましょう。

  • 指定病院で診察を受ける

労災保険を申請するためには、ケガや病気になった労働者が指定の病院で診療を受けます。指定の病院で受診をすると、診療費は無料です。もし近くに、指定の病院がないときは受診した病院の診察代を立て替える必要があります。

  •  請求書類に必要な事項を記入し病院に提出

指定病院の場合は、請求書類に必要なこと記入し、病院に提出します。そのとき会社の証明が必要になります。病院はその書類を労働署に出し、そこから審査が始まります。審査が通過ると、治療費は指定の病院に払われます。指定の病院で受診していない場合は、請求書類を直接、労働基準監督署に提出します。審査が通ると、立て替えていた診察代が支払われます。

請求書は厚生労働省のホームページからダウンロードができます。

厚生労働省|労災保険給付関係請求書等ダウンロード

 

まとめ

労災保険は、業務災害、疾病だけでなく通勤途中のケガでも補償してくれます。また一人親方などの特殊な形態も、条件を満たせば労災に加入することもできます。労災保険の内容、そして受給する方法などをしっかり理解して、万が一のときに慌てないようにしましょう。

 

参照URL

労災保険・雇用保険の特徴

建設業の一人親方労災保険組合

労災保険制度

労災保険対象の範囲

労災保険給付の概要