労災保険の加入ができない個人事業主や一人親方。しかし立場は違っても、現場で働く以上、事故やケガのリスクはつきものです。そんな人たちのために作られた労災保険の特別加入制度。加入条件をクリアすれば、万が一のときは、補償も受けられます。
労災保険の特別加入制度とは
労災保険に加入できない中小企業主、その家族、そして一人親方のなかには、現場に出て労働者と同じように働く人たちも大勢います。当然、その人たちにもケガや事故などのリスクは同じようにあります。そんな労災保険、対象外の労働者を保護するために作られた制度が、労災保険の特別加入制度です。一定の条件を満たせば、一般の労災とほぼ同等の補償が受けられます。
特別加入制度に加入できる主な4つの職種
中小事業主等 | 一人親方 | 特定作業従事者 | 海外派遣者 | ||
加入 条件 |
・社員300人以下(金融、保険、不動産、小売業は50人以下。卸売、サービス業は100人以下)の事業主。 | ・社員を雇わず事業を行っている人。 ・一定の職種に限る |
・特定農作業従事者 ・特定農業機械作業従事者 ・職場適応訓練従事者 ・事業主団体等委託訓練従事者 ・危険優雅愛作業の家内労働者 ・労働組合等の常勤役員 ・介護作業従事者 |
・日本国内の会社から海外支店、工場、現地法人、提携先企業などに派遣されて働く人 ・建設事業は対象外 |
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参考
サイト |
特別加入制度のしおり (中小事業主用) |
特別加入制度のしおり(一人親方その他の 自営業者用) |
特別加入制度のしおり(特定作業従事者用) | 特別加入制度のしおり(海外派遣者用) |
特別加入するための条件
・中小事業主
- 雇用する労働者がすでに労災保険に加入していること
- 労働保険の事務処理を、労働保険事務組合に委託していること
この2つを満たし、さらに所轄の都道府県労働局長の承認を受けていることが必要です。また事業主と家族従事者など、労働者以外でも業務に従事している人は、全員の特別加入の申請が必要となります。
・一人親方
- 一定の職種に限る
- 一人親方の団体の構成になることが必要
- 1年間に100日を満たない、労働者を使用している
この3つを満たすことが要件です。そして一人親方の特別加入の手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行います。
・海外派遣者
派遣元の団体や事業主が、日本の国内で労災保険に加入していることが必要です。
申請するための手順
・中小事業主
<初めて特別加入を申請する事業者>
『特別加入申請書(中小事業主等)』を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出します。申請書には特別加入の業務の具体的な内容、業務歴および希望する基礎日額などを記入します。
<すでに特別加入を承認されている事業者>
『特別加入に関する変更届(中小事業主及び一人親方等)』を労働保険事務組合経由で、労働局長に提出する必要があります。変更届には承認されている人の氏名、新たに事業に従事する人などの名前など、変更になった項目等を記入します。
そして従事する業務によっては、健康診断を受けなければいけない場合もあります。
・一人親方
<新たに特別加入団体を作って申請する場合>
様々な要件をクリアすると、『特別申請書(一人親方等)』の書類を所轄の労働基準監督署長を経由して、労働局長に提出できます。
<すでに特別加入を承認されている団体を通じて加入する場合>
『特別加入に関する変更届(中小事業主及び一人親方等)』の書類を、特別加入団体を経由して、労働局長に提出します。
そしてやはりこちらも、従事する業務によっては健康診断を受けなければいけない場合があります。
保険料、補償内容、その他の注意事項
・保険料
保険料は『給付基礎日額』によってかわってきます。『給付基礎日額』は保険料、給付補償などを査定するための基礎となる金額です。特別加入を希望する人は、『給付基礎日額』を自分で申告できます。そしてこの金額を高く設定すると、補償額も高額になりますが、それに応じて保険料も上がります。
・補償内容について
特別加入制度も、基本的には『業務災害』と『通勤災害』の補償が受けられます。ただし『業務災害』に関しては、職種等によっていろいろと制限があり、一般の労働者と異なることもあります。『通勤災害』に関しては、一般労働者とほぼ同等の条件で補償が受けられます。
・その他の注意事項
特別加入者は保険料を滞納した期間に発生した事故やケガについては、補償金の支払制限がかけられます。特別加入者も、一般加入者と同じように事故やケガによる治療費は全額補償され、休業が必要な場合は、休業(補償)給付と、特別支援金の給付が受けられます。
まとめ
現場で働く中小事業主や一人親方の保護を目的とした労災保険の特別加入制度。加入条件も多く、申請書の記載事項も細かいですが、入っていればイザというとき、しっかり補償をしてくれるので、ぜひ労災保険に入れない人は、加入を検討してみてください。
<参照先>
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