会社が活動する際には様々な事にコスト(経費)が発生します。従業員へ支払う人件費、オフィススペースの賃料や電気代、通信費や機材費などの様々なコストを支払い、会社は事業を発展させ、物やサービスから売上を得ていきます。コストというマイナスから売上というプラスを生み出し、差し引きした部分が利益となります。

会社がコスト削減を達成できると、削減できた経費はそのまま純利益となります。ですが、環境を無視したコスト削減の取り組みは会社の信頼性を失わせ、成長性に疑いを持たれる結果になる事もあります。逆に、環境に配慮した形での取り組みは、社会の一員としての自覚をアピールする事に繋がり、会社の信頼性を必ず高めてくれます。

では、実際に環境に配慮しつつコスト削減をしていくためにはどのような取り組みを進めていけば良いのでしょうか。まず必要な事は、現場のコストや、コストに関わる情報について「見える化」し、キチンと把握する事です。

なぜ「コストの見える化」が大事なのか

見える化を導入するメリットは、大別すると3つあります。

1. 無駄の削減意識が高まり、継続的な活動になる

見える化を行うと、コストについて常に目に入るようになるため、各従業員のコストに対する意識が高まります。コストを見つめる目が増えることによって、今まで見つけられていなかった無駄の発見が期待できます。一つ一つの対策による効果は小さいものかもしれませんが、たくさんの無駄をみつけて対策する事ができれば、チリも積もって大きな効果となります。無駄を見つけ、対策を実施し、その結果が目に見える数字として現れると従業員の間で達成感もあり、削減意識が更に高まっていきます。無駄を見つけることを奨励し、常にコストが見える状態にする事で継続的にコスト意識を植え付ける事ができます。

2. 最も消費コストが高い部分に注目し、対策が打てる

各コストの時間別・設備別の数値を整理する事により、コストがかかっている時間帯や設備について注目する事が可能になります。

例えば工場では、各生産ラインでの系統別・設備別の使用電力量を細かく測定することで設備の稼働状況を把握することができます。電力消費量の高い設備に着目し、その設備を狙い撃ちする形で効果的な対策ができると大きなコスト削減効果が見込めます。例えば、アイドリング運転の時間が長いようであれば、無駄な電力消費となってしまうアイドリング期間を短縮するような運用に変えていけると良いでしょう。生産性に影響を与えない形で消費電力を削減できるように工夫していきましょう。

3. 労働環境を犠牲にせず、効果的な対策が打てる

コストを削減できましたが不便になりました、では良いコスト削減とは言えません。利便性や労働環境を犠牲にせずにコストを削減する際にも見える化が役に立ちます。

例えば、空調設備の消費電力を削減したいという時に、空調の設定温度を上げるというだけでは労働環境の悪化につながってしまい、効果的な対策とは言えません。工場などの現場では暑さ対策は大きな課題です。このような場合、温度計や湿度計を各所に導入して温度や湿度を見える化すると、人によって感じ方に差のある温度や湿度についての情報が目に見えるようになり、室温や湿度がどのくらいの時に快適なのかについて情報を集めることができます。労働環境に配慮した対策を検討する際は、こういった情報も見える化が有効になります。

 

コストがどれくらいかかっているのかわからない状態でコスト削減を進めるのは、見えない敵と戦うようなものです。必要な情報の見える化を進めていき、具体的な無駄が見えてくる事で効果的な削減対策を行うことができるようになります。

どのように見える化すればいいのか

コスト削減の為に見える化しやすいもので、どの現場でも使うものと言えば、やはり電力です。電力消費の見える化については既に様々な設備やシステムがあり、電源に接続するだけの簡易的なものからビルや工場全体を覆うエネルギー管理システムまで様々なものがあります。

  • 簡易型電力量計

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簡易型電力量計は機器のプラグとコンセントの間に接続し、その機器がどれだけの電気を消費しているのかを表示してくれるものです。消費電力だけでなく、電気料金やCO2排出量などを表示できるものもあります。 ご自宅のパソコンなどの電力消費を図るのにも便利です。

スマートメーターとは、従来のアナログな電力メーターとは異なり、デジタルで電力の消費量を測定しデータを遠隔地に送ることができる電力メーターです。スマートメーターの設置作業をするのは、お住まいの地域の大手電力会社です。2024年度にスマートメーターの普及率100%を目指すプロジェクトが進んでいるため、既にご自宅やオフィスの電力メーターがスマートメーターに変わっている場合もあるかもしれません。このスマートメーターが導入済みであれば、省エネナビと連動させて、電気の使用量や家庭内の電化製品の電力消費量などを見える化することも可能です。

省エネナビは、電力消費データを計測しモニターで利用者に見える化してくれます。スマートメーターで計測した電力の使用量をデータで受け取り集計して、利用者に見えるように表示するような装置です。利用イメージとしては、キッチンやリビングなどにモニターを設置して電力の使用量をチェックでき、パソコンにデータを取り込んでデータを二次利用することも可能です。生活や仕事を振り返って、何を使っているタイミングで電力が消費されているかなどについて後から分析し、焦点をしぼった対策を施すことが可能となりますね。

HEMSのHはホーム、つまり家庭用のエネルギーマネジメントシステムのことです。内容としては省エネナビと似たもので、電力消費量などを計測しモニターに表示してくれます。省エネナビとの違いとしては、省エネナビが電力消費の計測に特化したサービスであるのに対して、HEMSは太陽光発電システムを利用している場合の創電データ計測サービスや、温水設備やガス設備と連動したサービス、エネルギー使用状況から省エネアドバイスをくれるサービスなど、電力計測から派生した様々なサービスの発展を見せています。

BEMSのBはビルを意味しています。具体的にはオフィスや商業施設などを対象としたエネルギー管理システムです。省エネルギーの観点から建物内の機器をコントロールする機能を持っています。

FEMSのFはファクトリー(工場)を表しています。機能としてはBEMSとほぼ同じですが、工場はビルと比較して建物(天井)の面積が非常に広く、各エネルギー消費や太陽光発電などの創エネルギーも大きな規模となります。水やガスなど、電力以外のエネルギーについてのコントロールも組み込まれているケースが多いようです。

BEMSとFEMSは対象となる建造物や設備の規模が大きいため、多くの計測器を設置しなければならず各種工事が必要になります。専門家による分析が必要な場合もあり、初期投資コスト・ランニングコスト共にかかりますが、各設備を最適に制御することが実現できれば大きなコスト削減と省エネルギーが可能となります。

診断でコスト削減とCO2削減を実現する

各種見える化ツールをご紹介させていただきましたが、現場の規模からどのようなツールを導入すればいいのか迷ってしまいます。そんな時は、様々な団体や自治体が無料で行っている省エネ支援サービスを利用しましょう。まずは無料の省エネ支援サービスで状況を相談し、診断して貰った後に、最適だと思えるツールを見つけて省エネルギーや見える化を進めていきましょう。

省エネ・節電ポータルサイト shindan-net.jp

 

まとめ

省エネルギーを実現することができると、それがそのままコスト削減と環境対策になるケースは少なくありません。自社の無駄について見つめ直し、無駄を削ぎ落とすことで利益を拡大しつつ、更には環境にも配慮する事で社会への貢献をアピールする事にもなります。初期費用と労力は確かにかかりますが、差し引いても大きなプラスがあると思えたならば、一度省エネルギー設備の導入をご検討されてはいかがでしょうか。

 

参照元

経済産業省資源エネルギー庁「家庭のエネルギー消費の見える化」

OKI「電力削減だけじゃない-工場の電力見える化で抑えておきたいポイント」

アーキブック「エネルギーマネジメントシステムのHEMS、BEMSとは(3)〜企業向けのBEMSとFEMS〜」