女性活躍推進法が制定され、女性を雇用する機会が多くなりますが、自分の会社は女性にとって働きやすい環境でしょうか。トラブルが増える可能性は? 女性も気持ちよくやりがいを持って働いてもらうためにはどんなことに気を付ければ良いかみていきましょう。

 

女性活躍推進法の概要とポイント

女性活躍推進法とは、正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といい、平成27年8月に成立しました。女性活躍を促すために企業が行うべき事業の行動計画の策定や方針、支援内容などを定めるものです(300人以下の企業は努力義務)。この法律の施行により企業に義務付けられているのは大きく分けて3つです。

 

  1. 自社の女性活躍状況の把握と改善点の分析
  2. 行動計画の策定、社内周知し外部への公表
  3. 行動計画を策定したことの労働局へ届け出

 

届け出は女性の活躍推進企業データベース(http://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/)にて誰でも閲覧できるようになります。これらを実施しなかった場合の具体的な罰則規定については特に設けられていませんが、ここで掲載されていない企業は女性の活躍推進に取り組んでいないと判断され企業イメージを損なうリスクがありますので注意が必要です。

現在の日本社会は急速な少子高齢化や人工減少に伴う労働力不足が深刻化してきています。人材の確保をするためにはいままで以上に女性にも働いてもらおうというのが政府の成長戦略の一つとしての「女性活躍推進法」です。さらに、女性の就労面の改善が不十分であったことも理由のひとつです。育児休業の取得率、管理職の男女比や賃金格差など、女性にとって働きやすく、また働き甲斐のある仕事や環境を十分に用意できていないという考えから、この法律の施工により改善しようというのです。

「女性活躍」とは「女性が仕事や働く場面で活躍する」ということを指します。政府は以下の原則に基づいて同法を定めました。

 

  • 女性の採用、昇進の機会の積極的な提供および活用
  • 性別で固定的役割分担などが是正されること
  • 仕事と家庭の両立を実現する環境を整え、円滑かつ継続的に実施されること
  • 上記の両立に関し本人の意思が尊重されること

 

そして女性活躍推進に関する取り組み状況が良好である企業には、厚生労働相から「えるぼし」認定を受けることができます。この認定を受けると国が行う公共調達の際に加点評価されるなどのメリットがあるのです。さらに女性の活躍推進を認められた企業として、大きなイメージアップにもつながります。

女性が活躍する職場にすることでのメリットももちろん多くあります。

優秀な人材確保はもちろん、いままで気づかなかった業務の改善点も女性特有の感性や視点からの指摘により生まれることが期待できます。

また女性活躍には不可欠なワークライフバランス支援を行うことで職場環境向上につながり、生産性も上昇することが考えられます。

 

「女性だから」のトラブルはなぜ起きるのか

いままで男性主体だった職場に女性が入ることで真っ先に考え付くトラブルといえばセクハラ。またパワハラや女性差別によるニュースも相次いでいます。なぜこのような問題が起き、なぜなくならないのでしょうか。

 

・相手との距離感を勘違いしている

同じ職場で働く仲間として対等の立場である、というのを勘違いしている場合に起こりやすいことがあります。相手が自分に好意を寄せていると思い込んで接触し、相手はとても嫌だったが我慢していたなどということはこういった思い込みから起こります。特に男女の感覚の差や、上司と部下間の信頼感の差など、お互いがそう思っているか確認せずに先走った行動をすることにより起きてしまいます。

 

・職場の慣行

男性が多い職場で特に起こりがちなのは、事務職など女性が補助的な仕事をするという認識が横行しがちです。飲み会でお酌を強要したり、女性の仕事を小間遣いのように言ったり横柄な態度を取ることがあります。もちろん女性の事務の仕事もなければなりたたない立派な仕事であり、上司の小間遣いではありません。

 

これはひとつは「個人の意識」の問題、もうひとつは「日本における組織」の問題といえるでしょう。

個人の意識を変えることが、相手を下に見たりすることなく真の対等な仲間となることへの一歩です。対等な相手なのだから、何をしてもいいのではありません。「相手は仕事のパートナー」である、「あくまでビジネス上の付き合い」であるということを認識しましょう。相手といくら信頼関係を築いていると思っていても、例えば飲みの席で外見や恋愛関係を茶化されたら、それが愛情表現だと思えるでしょうか?悪気がないことがわかったとしても、いい気分にはならないはずです。それは上司と部下の関係でこれ見よがしに「こいつは俺がいないとどうしようもない役立たずだ」などと言われるなども同じです。「ネタにする」「からかう」という言動は相手を本質的に誉めたり認めたりすることとは違います。またそういった言動は「軽い冗談だからいいだろう」という油断からきていると思われますが、受けとる側はもっと深刻に感じていると考えましょう。

もうひとつの問題は、男性中心の社会であり、終身雇用による年功序列の経営方針、という日本における組織そのものにあります。今の時代、必ずしも男性が補助的な役割の職についたり、女性が前に出ることもたくさんありますが、それでも上から圧力には声をあげにくい社会、ということはなかなか変わりません。ハラスメントはセクハラもパワハラも当事者たちだけでなく、その周囲も含めた職場環境を害する行為と言えます。ハラスメントが起こることでその職場全員のパフォーマンスや生産性が低下してしまいます。職場全体で、能力以外のところで仕事内容に男女格差が出ていないか、暗黙の了解で女性のやる仕事、新入社員の仕事、など決まっていることなどはないか再度見直してみましょう。

 

女性がやりがいを持って働ける快適な職場をつくるポイント

それでは女性が働きやすい職場とはどういった環境でしょうか。

 

・女性がキャリアをきちんと考えられる取り組みがある

管理職の男女比に格差があるというのは言われていることですが、実は女性に行ったアンケートで管理職になりたくない、興味がないひとが82%もいるという調査結果があります。当然様々な事情がありますが、やはり女性は自分が昇進するイメージが少ないことが分かります。このことから、女性の活躍推進にはまず女性自身がキャリアアップすることを前向きにとらえることが必要です。そのためにセミナーを開いたり、管理職の仕事を紹介したりと興味を持ってもらえるきっかけを作っていくことが大事になります。

 

・女性社員の理解し能力を伸ばす取り組みがある

女性社員を部下に持つ上司、管理職の意識改革も非常に重要です。例え事務でもそれは補助的な仕事ではなく自分達になくてはならない存在であることをあらためて認識し、さらに彼女たちの能力を伸ばすために挑戦させたりステップアップの仕方を教える、ということです。

 

・出産、育児のサポート

女性が離職する大きな理由のひとつとして妊娠、出産や育児との両立が難しい点があります。女性が活躍し続けるには企業側のサポートや制度がかかせません。育児休暇や時短勤務制度の充実、保育支援手当て、ベビーシッターや託児所の利用補助などなど。いったん仕事を離れて戻ってきてからも同じように受け入れてもらえる環境が大事です。

2017年に東洋経済が行ったランキング「女性新入社員に優しいホワイト企業500社」で上位にランクインした企業はどこも、育児休暇や正社員への復職もしやすいことが根付いていることはもちろん、保育支援補助制度なども充実しています。さらに男女関わらず社員研修やOJTに力をいれるなど、丁寧に育てキャリアアップを積極的に支援する体制が備わっています。またフレックスタイムや時短勤務など柔軟な働き方が認められていたり、有給休暇や育児休暇など休みのとりやすい環境であることも共通しています。

働きやすさややりがいは、そのひとによって様々です。しかしワークライフバランスの高い企業は、働きやすくやりがいもあると評価が高いことは間違いありません。それは女性に限らず男性にとっても働きやすい環境になっています。

 

まとめ

女性が活躍する社会、とは老若男女みながプライベートも大事にしつつ自分らしく仕事をすることができる社会です。やみくもに女性社員の採用数だけを増やしても意味がありません。男性も女性も適材適所、お互いを尊重しあってよりよい職場環境を作っていきましょう。

 

 

<参考>

LightworksBLOG『「女性活躍推進法」が企業にもたらす4つのメリット 恩恵は男性にも』

SmartHR Mag.『女性活躍推進法の概要と施行された目的とは?』

BOWGL『7分で理解する女性活躍推進法の施行で変わった女性の雇用制度』

厚生労働省『女性活躍推進法特集ページ』

DIAMONDonline『セクハラ・パワハラが日本企業から消えない原因は「おっさん支配」』

ハラスメント対策サポートセンター『ハラスメントはなぜ起こる? – セクハラ研修・パワハラ研修』

DIAMONDonline『「彼氏いるの?」女性社員へのセクハラがなくならない理由』

Woman type『なぜ「女性へのハラスメント」は日本からなくならないのか』

Square『女性が働きやすい職場づくりとは』

働き方改革ラボ『女性が働きやすい会社ってなんだろう?~ランキング項目から考える』

論座『女性が感じる職場の悩みと働きやすい環境とは? – 勝部元気』

ハナジョブ『女性がやりがいを感じられる職場って?』

女の転職type『「働きやすい環境」と「やりがい」は両立する? ライフステージが変わっても』