濡れたタオルを首に巻く。冷却シートをおでこに貼る。真夏日続きの毎日を、各々の“涼み方”でしのいでいると思いますが、身体の働きや特徴を知ることで、より効果的に身体を冷やすことができます。このトピックでは暑さしのぎから、熱中症で身体の熱を下げるシーンにまで効果的な“冷やすべき部位”について説明します。また、後半では、身体の特性を活かして“涼”を得る、暑い季節に摂取したい食材や栄養素もご紹介します。

身体を効果的に冷やすなら、リンパが集まる「首」「腋」「脚の付け根」

暑さ対策のほか、熱冷ましや集中力を保つことを目的に、おでこに冷却シートなどを貼って、体温を下げようと試みる方は少なくないでしょう。実際に貼ってみるとヒンヤリとして心地良いのですが、実は体温を下げるという点においてはそれほど効果を得られていないのをご存知でしたでしょうか?

それでは体温を効果的に下げたい場合は、いったい身体のどの部位を冷やせば良いのでしょうか。

答えは「首」「腋(の下)」「脚の付け根(鼠蹊部)」の3か所。この3か所が効果的な理由は、これらの付近を太い静脈が流れているからです。大量の血液が流れる“通過点”を冷やすことで、身体を流れる血液が冷やされ身体全体を効率的に冷やせるというわけです。またこれら3か所は単純な暑さ対策のみならず、熱中症にかかった際に冷やす部位でもありますので、ぜひ覚えておいてください。

まずは「腋」や「脚の付け根」について説明いたします。「腋」や「脚の付け根」を冷やすには、場所柄、冷却シートや、アスリートがアイシング用に使う冷却バンテージなどを利用すると良いでしょう。あるいは「腋」や「脚の付け根」の通気性を確保できる衣服を選ぶという方法もあるかもしれません。もし、保冷剤や氷などを活用する際は、直接当てると身体が冷えすぎてしまう恐れがあるため、必ずタオルなどを巻いて、“間接的”に冷やすようにしましょう。

さて、効果的な3部位が判明しましたが、冒頭に挙げましたおでこは効果がないのでしょうか?

もちろん、冷却シートを貼ることで集中できるのであれば、それを止める術はありません。しかし、効果的に体温を下げる部位としては先に挙げた太い静脈を冷やせる場所ではないため、期待できません。


前? 後ろ? 気をつけたい「首」の冷やし方のコツ

前段で身体を効果的に冷やす部位として「腋(の下)」「脚の付け根」を挙げましたので、続きまして「首」の冷やし方について説明したいと思います。

実は3部位のなかでも身体を冷やすのに最もおすすめなのは「首」なのです。その理由は2つあります。まずひとつめはほかの2部位のように“当てたり”“貼る”に加えて、“巻く”こともできる「首」は、冷やす方法、利用できるツールが多いからです。もうひとつが、「首」を冷やすことで他の部位以上に体温を下げられるからで、この点については以下にもう少し詳しく説明しましょう。

「首」を走る血管は全身にある血管のなかでも特に太く、また皮膚の表面側に位置しています。そのため前側の首の付け根、鎖骨の上あたりを指などで触れると脈を打っているのがわかると思います。これは、それだけ首元を流れる血量が多く、表面にあるということを表しています。つまり、この部分を冷やすことで、効果的に身体全体の熱を冷まして、体温を下げられるというわけです。

なお、冷やすという点において特に効果的なのは「首」の後ろ側。この部位は脳に向かって走る血管が多いため、一度に多くの血液を冷やすことができ、冷える速度も速いという理屈です。しかし、ご注意いただきたい点もございます。

注意点1 長時間冷やすと血管が収縮する

血管が収縮することにより脳への血流が滞ってしまうと、めまいや立ちくらみが発生する可能性があります。

注意点2 冷やしすぎてしまうと発汗が正常に行われない

首の後ろにあるリンパ管が冷えることにより、身体が冷えたと頭が誤認識してしまい、汗が止まってしまう可能性があります。すると、うまく放熱されなくなってしまう恐れがあります。

このような理由からも、「首」を冷やすことは効果的です。また、「腋」や「脚の付け根」についても首と同様に保冷剤や氷を直接、当てることは避け、タオルなどを巻いて間接的に短時間冷やすことをおすすめします。

 

<おまけ>

食卓から涼をとる。身体を冷やす食材と栄養素

これまで、炎天下など過酷な状況下に置かれた際に、身体を冷やすために効果的な部位について説明いたしました。最後に、猛暑から帰宅した後、あるいは昼食時などに摂取したい“身体を冷やす”効果を期待できる食材や栄養素について触れてみたいと思います。

身体を冷やしてくれる食材
野菜:レタス/きゅうり/ナス/キャベツ/トマト
果物:梨/スイカ/オレンジ/柿/バナナ
魚介類:あさり/しじみ/タコ/蟹
豆類:豆腐
いも類:こんにゃく  など

上記で挙げた食材がなぜ、身体を冷やすのでしょうか。まずは食べ物を摂取する際の身体の仕組みについて、軽く説明したいと思います。

私たちは食べ物を摂取すると、その栄養分をエネルギーに換え、その工程でエネルギーの約75%以上は熱へと変換され、体温を一定の温度に維持するという役割を果たしています。なお、胃や腸で食べ物を消化する時には、一度胃腸に入ったものを温める過程があり、その際にも体内の熱が消費されています。

上記に挙げた食材は、胃や腸に取りこまれた際により多くの熱を必要とするため、身体から多くの熱が奪われ、気化熱によって冷やされるというわけです。

また、きゅうりやナスに含まれる「カリウム」は、強い利尿作用を持っているとも言われるため、尿とともに熱を放出できるという効果が期待できます。なお、カリウムが多く含まれるものとしてアボカドやモロヘイヤ、納豆なども挙げられます。

関連記事

熱中症予防・対策で知っておきたい栄養素と食材とは?

残暑対策は食事で改善 夏バテ予防、夏バテ回復に効果的な料理

 

汗をかいて身体を冷やす

例えばカレーほか香辛料の入ったエスニック料理などで夏の暑さをしのぐ方もいるでしょう。これは一理ある方法です。打ち水と同じ原理で、大量の汗をかくことで気化熱を奪ってくれるので、身体を冷やすことに一役買ってくれるのです。

関連記事

体温調節に不可欠、でも油断は禁物!? 知っておきたい『汗』の基礎知識

 

酢の物で血圧を下げて体温を下げる

暑い夏場になると食卓に並ぶ酢の物。良く言われる食欲増進、疲労回復のほか、酢の物には血圧を下げる働きが期待できることをご存知でしたか。血圧を下げるということは体温の上昇を下げることにつながるため、結果、身体を冷やす効果も期待できるわけです。

 

いかがでしたでしょうか。今回は身体を効果的に冷やせる部位から、体温を下げるのに期待できる食材や栄養素までをご紹介しました。いずれも身体の仕組みを理解することで効果を発揮するということで共通しています。ここで書かれていることを実践してみて、暑い季節を乗り切ってください。なお、身体を冷やす適切な方法や部位などについては「ひんやりタオルはどのくらい熱中症予防に効くのか?」などでも記載していますのであわせてご覧ください。

万が一夏バテしてしまったという方は「残暑対策は食事で改善 夏バテ予防、夏バテ回復に効果的な料理」 を読んで夏バテ回復に役立ててみてください。

*本内容は記述時点で入手している情報をもとに執筆された原稿であるため、その内容の実現や確約、正当性をお約束する趣旨のものではありません。あらかじめご了承ください。


参照、引用元